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不死鳥!-ふぇにっくす!-  作者: 起始部川 剛
第4章 ヴァンパイア×イツカ
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第5歯 不死男と死神娘の攻撃

「ヴァンパイアは異性の血を好みますからね。変態以外の何者でもありません」

「へえ。知らなかった」

「無論、同性の血を好む変態もいますが」

「それはもっと知らなかったな」

 というか知りたくなかった。つまりそれは人間で言う所の同性愛者か。恐ろしい。美人の吸血鬼ならともかくガチムチな吸血鬼に血を吸われるのはごめんだな。


「まあ、不死鳥の血なんて飲まないでしょうからどっちにしても燈火さんには関係のない事です」

「ん……ああ。まあ、そうなのかな?」


 不死鳥状態の僕の血とか燃えるしな。血が消える時に出す炎は周りに影響を与えないから、別に吸った側に害があるわけではないと思うけど。まあ、お腹はふくれないし食事としては成り立たないだろう。


「ヴァンパイアねぇ……まあ、僕もあまり良いイメージはないけどな」

「そうですね。私としてもヴァンパイアは燈火さんよりもイメージ悪いです」

「……僕のイメージってそこまで悪いか?」

 ヴァンパイアと比べるってひどすぎる。お前の中の僕は何をしているんだ。

「それは燈火さんが伊津花さんが家に帰るのを拒むようになる程に辱めるから……」

「やってねぇよ」

 するかアホ。実の妹を辱めるほど僕は壊れていないぞ。不死鳥少女やら居候中学生は分からないけど。

「そうですか。まだ犯ってないと」

「今の発音ちょっとおかしくないか? なぜか犯罪の「犯」の字を使ってるように聞こえたのだけど」

「おやおや、耳まで変態になりましたか燈火さん」

「お前は僕に何の恨みがあるんだ!」

 考えてみればあるだろうな。僕が不死身だったせいで死神クビになったわけだし。


「オイ、燈火、今のは聞き捨てならんな。お前、伊津花に何をした?」

「食いつくな馬鹿姉貴! 何もしてない! お前等説教だ! そこに直れ!」

「ああ、耳まで燈火になられましたか変態さん」

「逆だ!僕と変態逆!」

 逆にしても間違っているけど。その言い方は僕<変態に聞こえる。

「あ、そうそう変態さん」


 ついに燈火登場しなくなりましたー。変態で人の事を呼ぶなよ死神!

「変態さんは不死身ですよね? ちょっと一回死にませんか?変態さん」

「文脈がおかしすぎて突っ込みが出来ないぞ」

「どこに何を突っ込むつもりですか」

 そう来たか。お前は須藤か。どうやってもお前は僕を変態にしたいらしいな。

「黙れ。ちくわ投げるぞこの野郎」

「ちくわを入れるおつもりですか。なかなかマニアックですね」

「いいかげんにしないと燃やすぞ!」


 僕はメイの耳に翻訳機を付けることを国会の最重要課題に指定したい。

 

「燈火さんの炎は、確か「対象物のみ」を燃やす炎でしたよね?なるほど。貴方にかかれば服だけを燃やすなど朝飯前ですか」

「よしわかった喧嘩をしよう。お前の体に僕の恐ろしさを叩き込んでやる!」


「『お前の体に僕の恐ろしさを叩き込んでやる?』」

「変態じゃねぇか!」

「今回はそのまま使えたので復唱しただけですから、燈火さんは最初から変態ですよ」

「僕の負けだ!」

 試合終了ー。僕の負けです勝てません。

「いえいえ、負けを認めるのは早いですよ。まだ1億28万対0ですから」

「僕負けすぎだろ!」


 1億28万敗0勝の僕。もう無理だろ。


「大丈夫ですよ次の勝負はラストですから、1勝するだけで2億勝利分ポイントが入ります」

「前の1億28万試合意味がねーっ!」

 ラストに勝った方が勝ちじゃないか。

「種目はしりとりです。『りんご』」

「『ゴリラ』」

「『ライオンと性行為をする燈火』」

「『カラス』」

「『スチュワーデスと性行……」

「僕の負けだ!」

 いやメイの反則負けだとは思うけど精神的にこれはダメ。

 普通に性行為とか女の子が言うなよ。わかったよ僕は変態です。メイさんの頭の匂い嗅いですいませんでした。3億28万敗0勝の男。ギネス記録クラス。

「あー、そうそう」

羽津花が何かを思い出したように手を叩いた。

 僕とメイは雑談をやめて羽津花姉に向き直る。

「ヴァンパイアって言えば、以津花も出かける前にそんなこと言ってたような気が……」

 羽津花姉が、口に含んでいたハンペンを飲み込んで言った。


ヴァンパイア。吸血鬼。少し前に、井口とそんな話をした覚えがある。


――――――――――――――――――――――――

「ねえ、鬼冴三君、吸血鬼の噂って知ってる?」

「吸血鬼……ドラキュラみたいな奴だろ? 話くらいは聞いたことあるけど」

「うん。なんかね、私たちの街に吸血鬼が出たらしいよ」

――――――――――――――――――――――――

 吸血鬼が出たって話ねぇ……別に僕は吸血鬼捜索ツアーに行くわけでもないから大丈夫。以津花みたいな好奇心旺盛な男じゃないんだよ僕は。兄とは違い、以津花は随分と好奇心旺盛なわけだけども――嫌な予感がする。廃墟の時とはまた違う、嫌な感じ。直感とでもいうのだろうか。とにかく、僕は直感だけで、以津花にヤバい事が起きていると感じた。理屈ではなく、根拠もないのだが。何故かわからないけれども、そうだと言い切れる自信がある。それゆえに、僕はイスから跳ねるように立ち上がった。


「どうした? 燈火?」

「トイレですか? 燈火さん」

 羽津花姉とメイが僕をジト目で見つめてくる。僕は二人の言葉に返事をすることなく、靴を履いて家を飛び出した。

 数歩走って僕の中にいる少女に話しかける。



――ウィンド!

『うるさいのう。ほれ』

 僕の左腕が化け物のものと変化していく。

 自分の腕が異形の者となったことを確認し、僕は地面を蹴った。僕は以津花を探してひたすら街を走った。公園、路地、あのビジネスホテルまで。


しかし、どこを探してもいない。耳を澄ませても、目を凝らしても、以津花は見つからない。

 廃墟となったビジネスホテルの中まで探したが、いない。今はもう、幽霊なんて怖がっている暇もなかった。逆に、僕の不死鳥の力に反応して幽霊たちが僕に怯えているようだった。僕は、血だらけの女がたたずむ屋上から、飛び降りた。階段を下りるよりも、ここから地上まで飛び降りたほうが早い。


ズンッと音を立てて、地面に着地する。


考えろ――嫌な予感が収まらない。ビジネスホテルの幽霊たちに対してではない。吸血鬼――その言葉に今、僕は、とてつもなく危険な予感がする。

吸血鬼――本当にそれを探しに行っているのだとしたら、井口の言っていたあの教会か?別に中学生の間でも噂が流行っている可能性もあるわけだし―――無事だといいけど。


 一番重要なところを見落としていた。あの教会。古びた教会に吸血鬼がいると僕は聞いた。以津花が本当に吸血鬼を捜索しているのならば間違いなくそこから向かうだろう。

この位置からあの教会まで、約2キロ。普通なら5分ほどかかるだろうが、今の僕なら1分もかからない。


僕が走ろうとしたその時――

『上だ』


ウィンドに言われるままに僕は上を向いた。喰われるほど丸くてきれいな満月だった。ふと、月に黒点が見えた。どんどん黒点が大きくなるにつれ、それは人だということが認識できた。人が、こっちに向かっておりてくる。

ずんと大きな音を立てて、それは僕の前に着地した。見慣れた、人間だった。


「な……おまっ……」


でも、それは人の形をした化け物なのだろう。

鋭い八重歯、鋭い爪、紅い眼――多分、吸血鬼。見慣れた、吸血鬼だった。

僕は、その吸血鬼が人であった時の名前を呼んだ。


「以津花――――」

キシャアアと、蛇が威嚇するように、以津花はうなった。

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