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不死鳥!-ふぇにっくす!-  作者: 起始部川 剛
第3章 カッパ×マーメイド
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第4泳 不死男と水中河童

意識がどんどん遠くなっていく。もう僕が何をしているのかすらわからなくなってきた。畜生。ここまでか――僕が命を諦めかけた時、僕の頭の中でウィンドが僕を怒鳴りつけた。

『死ぬでない! お主に死なれるわけにはいかん!』


そうだ――今、この命は僕だけのものじゃない。僕が死ねば、ウィンドも死ぬ。僕が勝手に諦めて、彼女(ウィンド)を道連れにする訳にもいかない。死ぬにしても、最後まで足搔いてやる。


無理やり体を動かして、意識を失いそうになるのを耐える。さすがは不死鳥、踏ん張りも聞く。


――殴っても、蹴ってもダメかと……なればコイツの手を燃やすしか逃げる方法はないか?


考えれば他にもあるのかもしれないが、ぼーっとしている僕の頭で考え付いたのはこれしかない。僕が左手で、敵意や悪意を持って相手を握れば、相手は炎上する。炎を飛ばしたりは出来ないけれど、左手で相手に向かって怒りや憎しみ、敵意や悪意などのマイナスの感情などをぶつければ、相手に引火させたりできる。

逆にプラスの感情で触れば、他人への治癒スキルが発動する。……らしい。厳密に言えば、感情に影響されて能力が発動しているわけではないらしいが、ウィンドは「間違いではないからよい」と、詳しく説明するのを面倒くさがって詳しくは教えてくれなかった。


しかし、この方法で河童を攻撃しようにも、ここ水中なんだよな……これじゃあ、火が点いてもすぐに消えてしまう。というか、火が点かないんじゃないか。

僕が脳みそをフル回転させて考えていると、ウィンドが語りかけてきた。僕も本格的に死にそうだ。向こうもそれを感じたのだろう。

『本当に愚かな頭だのう。……この前、死神娘に斬られた腕が消える時に発生した炎が、辺りに影響を与えんかったことを忘れたか?』


辺りに影響。影響を与えないということは、影響を受けない――?すなわち、水の中でも消えない。


思いついたと同時に僕は自分の足を掴んでいる緑色の手を掴んだ。

僕の予想は的中した。緑色の手は見事に燃え上がり、河童は眼にもとまらぬ速度でじたばたと泳ぎ回って火を消そうともがいている。 僕は酸素を求めて浮上した。呼吸って素晴らしい。

生きている喜びを感じる間もなく、僕は岸に向かって泳ぎ始めた。


水中では不利だ――ひとまず陸に上がろう。


少し岸に向かって泳ぐと、川底に足がついた。僕は川底に足をつけて、岸へ向かって走った。

まだ膝辺りまで水に浸かっている為、非常に歩きにくいが、僕は底上げされている脚力にものをいわせて無理やり走った。


脚のすねの辺りまで水に浸かっている――という位置まで来たとき、僕の背中を何かが引っ掻いた。犯人はわかっているが――河童が僕の背中を、鋭い爪で引っ掻いていた。


河童は僕の想像とは全く違い、四本足で素早く移動していた。四本足で僕の周りを獲物を狙うハンターのようにぐるぐると回った。そして隙を見ては、僕に攻撃を仕掛けてくる。攻撃自体は単純なのだが、動きが早い。


水に足をとられてうまく対応が出来ない。陸上戦でなければこちらが不利だ。水がある所では、浅瀬だろうと水に足をとられて思うように動けない。河童は水生の妖怪だから水中でなければ動きが鈍いという考えが甘かった。今どきの河童は水中じゃなくでもここまで早く動けるのか――

僕のずぶぬれのパーカーの肩の部分が破れ、肩から滴る水滴に血がにじむ。動きを目で捉えることが出来ても思うように行動できず、河童の攻撃をモロに食らってしまう。


何度も何度も僕の体を鋭い爪が切り裂いた。

ただ、河童は僕に大きなダメージを与えることが出来ていない。この体は、四肢の切断や筋肉、血管のダメージには強いのだが、内臓へのダメージはどうも苦手だ。肺がつぶされれば、回復するまで呼吸ができないし、四肢の切断に比べて内臓へのダメージは回復も遅い。頭部は例外で、四肢と同じく瞬く間に回復するのだが、頭部の回復には通常の数倍の回復力を使う。しかし、河童の攻撃は皮膚を切り裂いたり、肉を削ぎ落す程度で僕に致命傷を与えるほどの攻撃はしてこなかった。出来ないといったほうが正しいのだろうか。


肉を削ぎ落す鋭い爪は持っていても、僕の内臓に届くほど深く切り裂けるほどの爪は持っていない。


僕にとってそれは嬉しい事であった。

この程度の攻撃ならどんなに深い傷をおっても十秒あれば完全に治っている。しかし、このままでは「僕は、河童に倒されないが、僕も河童を倒せない」ということになる。まずは、こいつを陸に引きずり出すことを考えなくてはならない。



僕はわざと河童に背を向けた。どうやらこの河童、会話が出来るほどの知能は持っていないようだがそこそこの知能を持っているようで、僕の隙を見つけては反撃しにくい部位に攻撃を仕掛けてくる。

だから、あえて隙を見せた。そうすれば、河童は僕の隙だらけの背中に攻撃を仕掛けてくるだろう。いかに動きが速くても、こうすればある程度、河童の動きを予測できる。


僕は耳に神経を集中させて、河童の水をかき分ける音、河童がジャンプする音、水飛沫の音、辺りを縦横無尽に飛び回る河童の音を聞いて、僕に近付いてくるのをじっと待つ。


チャンスは一瞬で到来した。


来た――!


案の定、河童は僕の背中めがけて突進してきた。不死鳥の視力と、僕の直感を信じて、僕は河童の攻撃が当たる瞬間、素早く振り向いて河童の振り回していた右腕を左腕でからめとる。河童があいている左手で河童の右手を掴んでいる左手を攻撃をしようと振りかぶって左手を振り上げた時、僕はあいていた右手で、相手の左手首を掴んだ。

河童の両手首をつかんだまま、僕は河童を岸へと振り回すようにぶん投げた。


引きずり出してやった――河童はぐげっと声を出して川岸に叩きつけられた。


河童が攻撃に移る前に、僕は無理やり足を動かして岸へあがる。服が水に濡れていて、普段の何倍も動きづらいが、着替えている暇なんてない。

それに、川に浸かって闘うよりはやりやすい。


グアーグアーとアヒルとカエルを混ぜたような鳴き声で威嚇と思われる行動をとる河童。


見つめあう僕と河童。どうやって対応するか考える間もなく、河童は地面を蹴り、僕との距離を一瞬で縮める。でも、甘い。正面からなら、僕も対応できる。


タイミングを合わせて殴ろうと僕が拳をひいて、右足を踏み出したたとき、僕は自分のズボンを自分の脚で踏んでしまってバランスを崩してしまう。よろけたことによって横殴りな河童の攻撃をかわすことが出来たが河童がよろけめいている僕の脳天めがけて腕を振り下ろそうと腕を持ち上げているのがわかる。

避けれない――

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