first story
久しぶりの投稿で短編小説をしようと息巻いておりましたが、4000文字を軽く超えてしまったので、一回区切ろうと思い、中途半端ではありますが、前編後編という形で切らせていただきます。
【エピローグ】
《少年が目を覚めるとそこには今までと違う状態があった》
《まず今はベッドの上で寝ていたはずの彼が横たわっている場所は、草原の上である》
《いつも起きたら見えるものは天井ではなく青紫色の空で、その上にはワイバーンが群れを成して飛んでいる》
少年の夢の具現化のファンタジーの世界。藤井 アキヒロもそんな世界を夢見る中学2年である。
唯ひとつ常人と少し違うところは四六時中そんなことを考えているというところだ。
そんな、俗に言うイタイことを本気で考えているアキヒロが、『うましか』というか『お馬鹿』筆頭の青年なのである。
しかし、この物語はファンタジーではないので、彼が目を覚ますとそこには当たり前のように見慣れた天井があった。
そして彼にとっては不本意ないつも通りの朝のやり取りが始まる。
しかし彼は常人とは少し違うので、まだ異世界に行くなどということを諦めていない。
彼の「ウマシカ」さを証明するかのように三日前にはとんでもない事をして顰蹙を買った。
え?どんなことをしたかって?しょうがないそれでは説明しよう……「迷探偵アキヒロ」を。
【1】
アキヒロが教室に入るといつもどうりみんなが呑気に日常会話を繰り広げている。
(ふん。馬鹿共がいつまでもこんな日常が続くと思うなよ。世界は常に回り続け変動していくのだから)
とアキヒロはよく分からないことを思いながら、席に着くのであった。
教室では、このクラスの委員長であるフジモトの席があるクラスの中心に位置する席に集まっている。
このクラスの嫌われ者シマダでさえ、集まってきている。
しかも、図々しく他人の席に座っている。
その席は朝練でいつもチャイムぎりぎりに来る、ミズタの席だった。
シマダは良く分かりもしないくせに、会話に入ろうとするが全員に論破されてあきらめたのか教室から出る。おそらく自分と同じ中学だったこの学校の番長専用パシリとして有名な「古賀 揚水」のいる隣の教室にでも入ったのだろう。
しばらくするとシマダはチャイムが鳴るぎりぎりの戻ってきた。
するといつも通りのイベントの発生であるチャイムが鳴るとのと同時に、ッダッタッタッタダダダダダ!というドリルのような音が聞こえる。
保険の先生が最初の授業を教えるために教室に入ってくる。
それと同時だった。
あいつが教室に入って、「セーフ!」歌舞伎役者のポーズをとって叫ぶ。
その瞬間保険の先生が「ミズタ。アウト!」そう怒鳴る。自分の持ってきた保険の教科書でミズタの頭を叩く。
「そ、そんなぁ先生が来る前に入ればチャイムが鳴ってもぎりぎりセーフなはずじゃあ……」
「先生が来る前に着席しとったらの話な。それはな。でもお前アレやから。それに廊下は走ったらアカンネン」
そんな馬鹿な会話を二人は繰り広げている。
ミズタは野球部で、保険担当のこの先生は野球部の顧問である。
身内だからこそ妥協できないところもあるのだろう。
教室ではみんなが笑い転げている。
両隣の教室から各クラスの教科担当の先生が来る。
ミズダは校則どうり遅刻届を取りに行く。その間先生が生徒の騒ぎを鎮める。
(馬鹿らしいなんてこいつらは呑気なんだ。世界が明日滅びるかもしれないのに)
アキヒロはそんな馬鹿なことを考えながら一時間目をすごした。
しかしこんな呑気な学校でも事件は起こるのである。
【2】
事件の発端は次の授業が英語の3時間目休み時間。ミズタの「あれ?電子辞書が盗まれた」という言葉からだった。
そこにイベント好きのアキヒロがしゃしゃり出てくる。
「誰や!犯人は?」立ち上がり本日のクラスみんなにとってのアキヒロの第一声が発される。
「そうすると一番怪しいのはミズタの席に座っていた、シマダやな」クラスメイトの誰かが言う。
因みにアキヒロはクラスの誰かが喋ってもそれが誰か分からない。
「誰が言ったかは知らんが確かに俺もシマダがミズタの席に座っているのを見た」アキヒロは頷きながら言う。
「さっき言ったのは世紀末の把握愛主義者の僕だ!しかも僕は一年のときもあんたと同じクラスだったんですよ。いい加減覚えてくださいよぉ」セイヤが言う。
「おい、ミズタ。いつまで電子辞書はあったんだ?」
クラスの一人が聞く。
「確か今日の朝にはあったと思う。朝に鞄に入れてたから」思い出すようにミズタは言う。
「ようするに学校に行く前にはあったってことだな」
別のクラスメート……というかシマダはまとめる。
「何でお前がまとめんねん!」
そうミズタがツッコミを入れた瞬間にあるスイッチが入った。何を隠そうアキヒロの『妄想スイッチ』だ。彼の頭の中では『キュイーン』という音が鳴っている。
「今日辞書を持ってくるのを忘れたお前は、教室にいないミズタの席に何食わぬ顔でいつも通り居座って机の中にでも入っていた辞書を取ったのだろう」っふっふっふ私に分からない謎があるとでも?などとアキヒロはぬかす。
「じゃあこいつの机を見れば分かるってのか?」ミズタはシマダを指差しながらアキヒロに詰め寄る。
「イヤ、アイツもそこまで馬鹿じゃないだろう」とアキヒロは眼鏡を上げるふり(眼鏡をかけていないのに……)をして「分かった」と締めくくる。
アキヒロは勿体付けるようにしばらく黙る。
実はアキヒロはだからどうなのか分からなくなってしまったのだった。
「もういい。シマダ本人に話を聞いたら良いんじゃないのか?」
セイヤが提案する。もう休み時間も残り少ない。
「で、どうなんだシマダ?」
詰め入るようにセイヤが聞く。
「え?いや、俺は宿題の……」
シマダはろくに返事が出来ていない。
シマダはこういう緊張するとろくに話せなくなるところが嫌われている。
「どういうことなんだ?え?」
博愛主義者のアキヒロが珍しく追い討ちを掛ける。
シマダはよろよろと後ずさる。どうやら本格的に疑われている事に気づいたようだ。
キンコーンカーコンたまに鳴らない時がある壊れかけたチャイムが鳴る。休み時間は終わった。
そして英語の授業が始まる。
この時間でシマダの無実が明かされ、シマダのやった別の問題がバレルのである。
【3】セイヤの独白
アキヒロは決して頭が悪いわけではない……と思う。しかしアイツには妙な癖がある。
あいつはあの妄想癖さえなかったらもう少し友達がいるだろうに。
まぁと言っても、アイツの友好関係なんて知らないんだが……。俺にとっては、ミズタがなぜアイツの話をまじめに聞いてるのかが分からない。
「っふ」と俺は誰にも気づかれないような小さな笑いを浮かべる。
今はこんなことを考えてるときではないな。つーかはっきり言って今考えるべきなのは勿論アイツのコンパスの話でもない(つーかそもそもあいつのコンパスとかどうでもいい本当にどうでもいい)。今頭を使うべきなのは次の中間テストに向けて授業を受けなくては。
「先日に出したこの数学の宿題やけども、俺が何べんも何べんも口が酸っぱくなるまで言った所を間違えたやつが居る」そう言った後数学担当の金剛先生という男は全員がちゅうもくするまでまつ。
まただ。またこいつは生徒のミスについてみんなの前でまるで見せしめにするかのように言う。俺はこいつの此処が一番嫌いだ。俺はいちよう口うるさい先生でも、俺たちのことを思っていると考えた以外の先生のことを嫌いになることは無いが、こいつだけはだめだ。
「誰が間違えたかは一々言わんがプリントを返してあるんやから、勿論間違えた奴は自分やと分かっとるやんなぁ。ええ?」嫌そうな顔を金剛はする。
「誰が間違えたんやろうなぁ?なぁ誰やと思うシマダ?」金剛はシマダに聞くがシマダはうつむいている。
「なぁミズタ?」金剛はミズタにも聞く。
俺はきっとシマダと同様にミズタもうつむくのかと思った。しかし、ミズタの対応は違った。
「?僕は今日宿題を出していませんよ?何かの間違いじゃないでしょうか?」ミズタは確かにそう言った。
暫く教室に沈黙の時間が出来る。といってもほんの2,3分程度であったのだが、兎に角俺にとっては2,3分ではなく2,30分位に思えたのだ。
「いやぁシマダがお前の奴と一緒に持ってきとったけど?」金剛は先ほどの怒りを完全に納めてよく分かっていない様子で聞く。
「貸してないんやけど?」ミズタはキョトンとした様子で短く言う。
「盗んだんか?」金剛は端的に聞く。もはや誰に聞いたかはいう必要は無いだろう。
『盗む』って……そんな直で聞かんでも。と、おれは思ったが最も端的に話の核をつく質問方法を考えると一番適切なのではないか、とも思えた。
あれ?なんだか金剛の奴いい発言するじゃねぇか。良いぞ良いぞもっとやれー最終的には泣かしてやれー。って普通の奴は思うだろうけど俺は博愛主義者だからたとえそんなことを思っていてもそんなことは言わない。
「先生!そんな言い方では、あ、まりにもシマダがかわいそうです」俺は博愛主義者らしくそういった。
「じゃあこの場会いどのような聞き方をすればいいんだ?」アキヒロが聞く。
いい質問だ俺はそう思った。本当は金剛に聞いてもらうつもりだったがまぁいい。
「つまりな、こう聞けばいいんだ『おいシマダ。窃盗は立派な犯罪だぞ』って優しく教えてあげればいいんですよ。まぁ立派な犯罪って何なんだ?ってきもするんですけどね」
俺は決め顔でそう言った。
そう。
誰もが俺が博愛主義者だと分かるように。
っふっふっふである。
そうこうしている内に本日の英語の授業は終わりのチャイムを迎える。
その後金剛は、ミズタとシマダを連れて教室から出て行く。
勿論俺は一々彼らについてい言ったりして貴重な時間を無駄にするようなことはしない。
しかし、アキヒロは違った。
でしゃばりで、こういうのが好きなアキヒロは金剛を旨く言いくるめて、一緒に行く。
やっぱりアイツは物好きな奴だ。俺はそう思いながら次の数学の予習をしようとした。
しようとした。ということはつまり、できなかった。ということだ。
「おい。何をしているんだセイヤお前も来るんだよ」当たり前のことを言っているかのようにアキヒロは俺に言う。
しかし、もう俺の席を忘れてしまったようで俺が座っている位置とは全く違う方向を向いて言っていたのだが…。
まぁいい俺も電子辞書の謎は解けた。
シマダが今現在持っている、電子辞書に「古賀 揚水」と書いてあれば俺の推理は確固たる物となる。
いかがでしたでしょうか?
学校でしなければいけないことも終わったので、続編は早めに投稿します。