第9章 結論――神域物理学派(ストレージ学派)の意義
神域物理学派(ストレージ学派)は、仮想現実論をさらに多次元かつ再帰構造へと広げ、“創造主による巨大ストレージの情報投影”という大胆なイメージを提示する。そのキーアイデアは以下の通りである。
1.巨大多次元情報領域:
創造主が無限に近い情報を保持する“神域”をストレージと呼び、われわれの世界はその一部を投影したもの。
2.入れ子構造の無限連鎖:
パソコン画面が内部で自身を映すように、上位ストレージが下位世界を生成し、それがまた下位仮想世界を創り…という再帰が理論的に無限に続く。
3.ビッグバン=起動、ブラックホール=シャットダウン:
宇宙の始まりと終わりをIT的イベントに置き換え、物理学の謎を新しい視座で再解釈する。
4.“初めに光あれ”との親和性:
聖書など宗教の創造物語を、プログラム起動時のエネルギー解放とみなすことで、神学と科学を仮想現実論が橋渡しする。
この学派の意義は、現代物理学が説明しきれない領域(ビッグバンの特異点やブラックホール内部、量子ゆらぎなど)を、多次元情報ストレージの概念で包括的に捉え直す点にある。また、宗教的世界観(創世記や神の創造)を、現代情報理論やシミュレーションのメタファーで説明可能にする試みにもなる。
他方で、厳密な観測や実証が不可能なため、“仮説を超えたSF的・神秘的思索に留まる”との批判を免れない。無限後退や“創造主は誰が作ったのか”といった根本問題にも結論が出ず、神学と科学の溝を完全に埋めるわけでもない。しかし、哲学的探究として、世界が“情報領域の投影”にすぎない可能性を論じることは、人類の自己理解や世界観の拡張に寄与する。




