#7:隙間に埋まる兄と、闇に埋まりに行く兄の差異について
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【前話のあらすじ】:「ついに始まった貴族会。アルトは、パターン化した挨拶を済ませ、いい感じの壁に埋まって睡眠時間を確保する。その壁を同じくブッキングしていたNPCが……」
隙間の外を、下卑たBGMが通り過ぎる。
「ヒヒッ……セレネちゃんはどこへ行っちまったんだぁ?」
「追いかけっこは楽しいけど、あんまり逃げられると、教育のしがいがないなぁ」
「セレネちゃん、セレネちゃん、セレネちゃん、最高!!デュフフゥ」
「にしても、第六王女を攫え、って、無茶な命令をしてくるよなぁ。ま、報酬は弾むからいいけどよぉ」
「ひとまず、戻りましょう。ここに身を隠すような場所はありませんから。お手洗いであれば、少なくとも我々の手には負えませんから、別の者を呼ぶしかありません」
外の気配が去っていく。
隣人が、小さく安堵の吐息を漏らしたのがわかった。
隣人の心臓の鼓動が、俺の胸にまで伝わってくる。
「……助かりました。見ず知らずの私を、匿ってくださって……」
「あなたのお名前をお聞きしても?」
「……ちっ、ワンチャン」
「ふふ、不思議な方。……ヴァン・チャン様、いつか、ちゃんとお礼をさせてくださいね」
彼女は隙間から抜け出し、足早に去っていった。
「くそっ、ダメだったか。クリアできると思ったんだが……もっかいだ!」
俺はもう一度、RTAを行うことを決めた。
50分後。
「……にいに! はっけんなのです!」 「かべに埋まる、アルト兄様……みっけぇ!」
夢の中で、二つの小さな手が俺の身体を左右から引っ張っていた。
「くっ、もう少しだ。左右左、後方跳んで、行くぜぇぇぇ……、ぐあっ……逝ったか……焦ってしまった」
「にいに!おきてです!」「アルト兄様、見つかってますわよぉ」
目を開けると、そこにはドヤ顔で覗き込んでくるルーナと、目を輝かせながら、嬉しそうに笑っているノアがいた。
「……ぬん、おはよう。お前たち、なぜいるのだ?貴族会には、7歳以上の貴族しか入れないはずだが?」
「父上がアルト兄様と同じてつをふまぬようにとまねいてくれたのです!」
「そ、そうか……で、いま、何時だ?」
「閉会の挨拶も終わって、帰るところでぇす」
どうやら、ラスボスの祝辞を聞き逃したらしい。
「そ、そうか、俺はもっかいRTAして帰るから、先に帰ってくれ」
「RTA?意味わからないこと言ってると、お兄様、殺しますよ?」
「パターン55、魔族の襲撃により、生き別れた妹に再開した兄……そ、その声は、フィ、フィオナなのか!」
「……ルーナ、ノア、手伝って」
「はぁい」「はいです!」
フィオナたちに強引に隙間から引き抜かれる。
俺は妹たちに抱えられ(物理的に運ばれ)、公爵家の馬車へと戻った。
馬車の前では、ガイウスたちが待っていた。 ガイウスの顔は、かつてないほど険しいものだった。
……あれ? 俺が壁で埋没&沈してたから怒ってるのか?
「父上、すみません。壁の吸い付きがあまりに良くて――」
「……アルト、黙っていろ。今はそれどころではない」
ガイウスの視線は、遠くでこちらを見てニヤついている一人の男に注がれていた。
カーヴィス伯爵家当主、ブリック・カーヴィス。
つい先ほど俺が「自慢話」を聞こうとして、聞けなかった男だ。
ブリックが下卑た笑いを浮かべ、わざとらしく会釈をしてくる。
「あ、どうも、先ほどは、大変、有意義なお時間をありがたく拝聴致しました。もし、貴殿がよろしければ、またどこかでテイク2にでもご参加いただいたうえで、なに、10年後で構いませんから、なので、ちょっと、本日はですねぇ……」
「いやぁ、エルガルド公爵。今夜は誠に楽しいひと時でしたなぁ。……」
ブリックは、月明かりの下で蛇のような目を光らせた。
(なんだと!?俺をお呼びでないと!?こっちも呼んでないわ。ん?貴殿は、パターン76にて討伐済みの、盗賊と結託して民を攫って、奴隷として売りさばいてそうな悪徳B級おじCはなぁ!だいたい、俺は主人公ポジの……)
ブリックは無礼にも、またも俺の話を遮った。
「しかし、今夜は一段と冷え込みますなぁ。エルガルド家の屋敷は広いですからな。……火の元には、重々お気をつけあそばせ。御自愛くださいねぇぇ、ヒヒッ……!」
ブリックはそう言い捨てて、自分たちの馬車に乗り込んだ。
「…………っ!カーヴィス家は裏切ったようだな」
ガイウスの周囲の空気が、一瞬で凍り付く。
(父上、申し訳ありません。俺が悪いんですよね?ちっ、俺としたことが……貴族会の挨拶のパターンを選び間違えたから……失敗した責任は取らなければ……)
ガイウスは、風魔法に最も長けたアリシアに告げる。
「アリシア!お前は馬車を使わず、速度重視の風魔法で今すぐ屋敷に戻れ! 奴らは……ルミナス公爵家の威光を借りたカーヴィス家の連中は、我々が家を空けたこの隙を狙っている!」
「盗賊共を差し向けたのも、間違いなくルミナス家を盾にしたカーヴィス家の仕業だ!」
アリシアが風を纏い、夜の闇へと消えていく。
その緊迫した空気の中、次女ミレイナがフィオナたちに尋ねた。
「ところで、アルトはどうしたのかしら!? いつの間にかいなくなってるわ……!どこにいるのかしら?」
ノアが、無邪気に答える。
「あ、にいにね、『好きな事しに行く』って言って、闇に紛れて、消えていきました!なんでも、夜伽?のためだそうです!」
「……え?は?」
ミレイナの動きが止まった。 彼女の脳内で、何かが音を立てて千切れる音がした。
「好きな子??しに逝く??夜伽???……私一筋のアルトが、壁に埋まった後は、胸に埋まりに行くのね?ノア、間違いないわね?」
「はい!間違いありません、ねえねに嘘はつきません!」
空気が震える。ミレイナの肩が小刻みに揺れていた。ミレイナの鼻息が段々と荒くなっている。
「……どこの女よぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 殺してやる! その泥棒猫もろとも、物理的に消去してあげるわぁぁぁ!!」
「ミレイナ姉さま、落ち着いてくださぁい! それ、勘違いですぅ! アルト兄様が好きなのは『惰眠』と『ルーナ』だけだからぁ!」
ルーナの冷静なツッコミとイタイ勘違いも虚しく、エルガルド公爵家は、外敵の襲撃とミレイナの暴走という、二つの地獄へと同時に突入したのだった。
一方、アルトは闇をひたすら、駆け抜けていた。
勿論、「パターン33、一瞬で敵を置き去りにする快速ウイングの疾走」と烈風歩をダブルキャストしてである。
「カーヴィス家か……他はどうなってもいいが、アイリスとノエル、シルヴィだけは譲れん……エドガーまでは許すが、それ以上は禁じ手だ。」
その頃、エルガルド公爵家の屋敷。
「まったく、お前も悪い奴だよなぁ!!ヒヒッ」
「その汚い口をいい加減閉じてください」
「ヒヒッ!いいじゃねぇかよぉ!」
「ちょ、ちょっとシルヴィ!どういうことなの?」
「ノエル、やめなさい。なにか理由があるはずよ」
「ギヒヒッ!こいつら、頭、お花畑だぜぇ!もともと、シルヴィは、俺らの仲間なんだよ!かわいそうになぁ、ま、運命ってやつじゃね?なあ、シルヴィちゃん?」
「ええ、そうですね。私は元々、裏側の人間ですから」
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アルト-no-AIM:
・パターン76のロジック: 討伐対象を「悪徳B級おじC」と定義することで、アルトの脳内では「倒して当然の雑魚キャラ」へとデバフ(弱体化)がかかる。なお、このパターンを適用すると、相手のセリフが自動的に「ヒヒッ」というSEに置換されて聞こえる。
・パターンの競合: もしパターン55とパターン76が同時に視界に入った場合、アルトは「妹を助けるために悪徳おじさんに立ち向かうテンプレ」に強制移行し、MPを全消費してでもイベントを完遂しようとする。
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、アルト覚醒!
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E.N-de-core:「好きな事しに行く(聖域とSSR級NPCを護る)、夜伽をしにいく。アルトの言葉に嘘はないのに、なぜこんなに血の気が引く展開になるんでしょうか? 誰か教えて。……引き続き、応援のほど、よろしくお願いいたします。」
――――――――【他作品も全力執筆中!】
更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!
・『【武の極致】と【フェンリル】の力を以て、三つの世界で覇者となった俺』
「動かないだけの者に何がわかる。動けば変わる。今はそう信じろ。」
【戦×無双×成長】 →天下を争う軍記モノです!※後々、魔法や異世界系に変わっていきます!
・『生涯、病室だった俺、異世界で自由な体を手に入れたので、天下を獲ることにした』
「窓の外を眺めるだけの日々は終わった。今度は俺が、世界に眺められる番だ。」
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「夢を追う。non。夢を負うんだ。夢が現実だったらいいのに。non。現実を夢にするんだ。TOPを狙う。non.non.non。そんなの後からついてくる。狙うべきはTOPだろ??」
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圧倒的な「勘違い(相互)」×「成り上がり」×「無双&夢想」×「最強」!!
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