#6:煌びやかな王座に座るより、暗がりの先客でありたい
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【前話のあらすじ】:「第1ボタンに群がるムサイNPCを殲滅したアルト。次なる舞台は、貴族パーティー……」
「……なんだ。この、光り輝く『パターン78のシチュ、成金趣味の極致……』を集めたような空間は……」
フロディア王国の王都、フロディア王家の王宮。
その巨大な晩餐会場の扉が開いた瞬間、俺は暴力的なまでの煌びやかさに敗北した。
天井から吊るされた無数の魔石をあしらったシャンデリア。
磨き上げられた大理石の床。そして、香水と権力欲が煮凝ったような独特の空気。
隣に立つ父、ガイウスは、鉄仮面のような無表情で正面を見据えていた。
勿論、その背中からは「我が家の威信を見せつけてやる」という風格が立ち上っていた。
「アルト、行くぞ。遅れるな」
「了解です、父上。俺は現在『パターン71:空気と同化する従順な息子』を起動中です。誰の視界にも入りませんのでご安心を」
「……アルト、少し黙れ」
「はい!空気になりきります!」
仲のいい親子は会場の中央へと進んだ。
そこには、この国の支配構造を象徴する面々が揃い踏みしていた。
「ほう……。エルガルド公爵家、ようやくお出ましかな」
声をかけてきたのは、燃えるような赤髪を蓄えた屈強な男。
ヴァルディオ公爵家当主、ガゼル・ヴァルディオ(44)。
父曰く、脳筋……もとい、武闘派派閥の筆頭らしい。
その後ろには、冷徹な目つきをしたルミナス公爵家当主、イグナティウス・ルミナス(42)。
さらには、狸寝入りが得意そうなグランヴェル公爵家当主、ダリオン・グランヴェル(49)。 そして、書類の山と結婚してそうなノクスウェル公爵家当主、マルクス・ノクスウェル(45)。
うーん、やはり、五大公爵家などという、ボス級が揃うと、空間の密度が三倍くらいに跳ね上がるようだ。
さらにその頂点に立つラスボス、フロディア王家の主――アルテリウス王が檀上に現れた。
「皆、よく集まってくれた。今夜は祝杯だ。堅苦しい挨拶は抜きにしよう」
王の言葉と共に、貴族会がスタートする。
……さて、ここからが俺にとっての地獄である。
「アルト、こっちへ来い」
父が、自身の派閥の貴族たちを次々と俺の前に連れてくる。
これは、エルガルド家の「三男」が使い物になるかどうかを測る品評会でもある。
(父に恥をかかすわけにはいかない。俺だって、もう、立派な大人なんだ!やってやんよ!)
「アルト・エルガルドです。本日は、貴殿の『パターン302のシチュ、誇り高きおじさんBの自慢話の導入』を拝聴できるのを、心より楽しみにしておりました」
最初に挨拶したカーヴィス伯爵家当主ブリック(46)が、飲んでいたワインを噴き出した。
「……ん? 自慢話……?」
「へ?あ、、失礼。緊張のあまり、焦ってしまって。一つ前か。えっと、あ、そう、貴殿の『パターン301のシチュ、デブっちゃった狡猾なおじさまAの素晴らしい功績の共有』を拝聴できることを、心より嬉しく思います。既に、私の耳は今、最高級の耳栓を用意したいくらいに感銘を受けております!」
「……ま、まだ、喋っておりませぬが……」
絶句するブリック。
ガイウスが無言で俺の肩を掴む。割と強めに。
「父上、お任せを!うまくやりますから!」
次に連れてこられた有力家門の息女たち。
「まあ、アルト様……。噂では、かなりの方だと伺っておりましたが」
「なんと、それはお目が高い!少しお待ちを、Lady。私は現在『パターン81:自分をイケメンだと思い込んでいる残念なナルシスト』を演じるか、それとも『パターン91:一刻も早く帰って寝たいモブ』を貫くか、脳内で熾烈な会議を繰り広げている最中でして」
苦笑する者、ドン引きして去る者、逆に興味を持って食いついてくる者。
会場は、俺の「パターン挨拶」によって、異様に熱気を高めていた。
俺の肩に置かれているガイウスの手が重力以上に重く感じられた。
「父上、その、これ、僕、「痛いやつ」です。「イタイ奴」じゃなくて、「痛いやつ」です……!」
俺は懸命にボスにアピールした。けれど、ボスにアピールは届かなかった。
(俺、あんなに頑張ったのに……俺のアピールは失敗だったのか……)
ガイウスが俺に言葉をかける。
「アルト、耐えろ」
俺の肩にのしかかる重力が一段と強まるのがわかった。
ミシミシ。モリモリ。
「うっ……父上……」
「なんだ?緩める気はないぞ。当然の結果だ。受け止めろ」
「耐えられません!腹が限界なのです。行かせてください。挨拶は終わったはずです!」
「はぁ……」ガイウスが大きなため息をつく。
「行ってこい。だが、大量はだめだ。品がないからな。いいな?」
「わかっています……」
俺は小さい声で、ガイウスに囁く。
「ですが、限界です。『大きいの』に行ってきます」
「……少量ずつにしろ。みっともないぞ!」
父上の小さな返答を聞き流し、俺は会場を脱出した。
TPで緊張を解した後、俺は会場の大広間に戻ろうとする。
華やかな音楽と共に、賑やかな声がそこかしこから聞こえてくる。
「うん、少し眠ろか」 逃避したいわけではなく、ただ眠くなってしまったのだ。
やはり、睡眠には忠実であるべきだと思う。
王宮のTから大広間へと続く長い廊下を、気配を消して進む。
少し早いが、運命の出会いが訪れた。
「おお……これは……『パターン882のシチュ:エッチな隠し通路を見つけた時に二度見する暗殺者』……!」
廊下の曲がり角。
装飾柱と分厚い壁の間にできた、わずか三十センチほどの「隙間」。
普通の人なら見向きもしない暗がり。だが、今の俺には、そこが王座よりも輝いて見えた。
「シュッシュッ」 俺は、首を素早く前後左右に振る。
「ふっ、尾行は撒いたな……なっ!こ、この穴は!」
「チラッチラッ」 俺は、首を素早く90度往復させることを2回繰り返す。
「とう!」
俺は迷わず、その隙間に身体を滑り込ませた。
背中と胸、両脇に感じる、ひんやりとした壁の感触。 ……完璧だ。
この圧迫感こそが、俺の求めていた安らぎ。 俺は壁と一体化し、目をつむった。
――数分後。 コツ、コツ、と、慌ただしい足音が聞こえてきた。
「はぁ、はぁ……っ……どこかに……」
か細い声。ドレスの擦れる音。
その足音は、俺がハマっている「壁の隙間」のすぐ前で止まった。
「あ……」
気配でわかる。誰かが、この隙間に逃げ込もうとしている。
だが、そこには既に先客(俺)がいるのだ。
俺は目を開けず、眠りの淵から這い上がることもなく、ただパターン通りの低い声で告げた。
「……邪魔しないなら、入ってもいいぞ」
「ひゃっ!?」
短い悲鳴。だが、すぐに殺気がないことを察したのか、相手はか細い声で言った。
「……ありがとうございます。……えっと、すみません、お隣、失礼します……」
狭い隙間に、柔らかな温かみが滑り込んでくる。 ふわりと、花の香りがした。
俺の右隣に、誰かが密着する形で入り込んでくる。
俺と誰かのダブルブッキング。
この超至近距離でのTP。
普通ならパニックになるところだが、俺の意識は「パターン9081:オークジェネラル1万体討伐のRTAに挑む男(目標時間は60分)」に刈り取られている。
ゆえに、爆睡。問題はないはずだ。決して、人と喋れないわけではないのだ!
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アルト-no-AIM:
・パターン882の秘密:隙間を見つけた時の「シュッシュッ」という首の動きは、単なる確認ではなく、網膜に隙間の寸法を焼き付け、自身の体積と摩擦係数を瞬時に計算する暗殺者ならではの「入室儀式」である。
・パターン9081の代償:脳内RTAを開始すると、現実の肉体は完全に「オートセーブモード」に入るため、隣に誰が来ようが隕石が落ちようが肉体的には起きない。唯一の解除条件は「目標達成」か「膀胱の限界」のみ。
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、ついに家門に……!!
~高評価やブックマーク、感想・リアクション等いただけるとありがたいです!~
E.N-de-core:「次話、ついに「隙間の住人」との対話(あるいは一方的な睡眠)が始まります。評価とブックマークをいただけると、アルトの脳内RTAのタイムが縮まり、早く目が覚めるかもしれません。よろしくお願いします!……引き続き、応援のほど、よろしくお願いいたします。」
――――――――【他作品も全力執筆中!】
更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!
・『【武の極致】と【フェンリル】の力を以て、三つの世界で覇者となった俺』
「動かないだけの者に何がわかる。動けば変わる。今はそう信じろ。」
【戦×無双×成長】 →天下を争う軍記モノです!※後々、魔法や異世界系に変わっていきます!
・『生涯、病室だった俺、異世界で自由な体を手に入れたので、天下を獲ることにした』
「窓の外を眺めるだけの日々は終わった。今度は俺が、世界に眺められる番だ。」
不自由を極めた過去を、最強の自由で塗り潰す!
【戦×無双×成り上がり×領地経営】 ――病室を抜け出した俺の、天下取りが今始まる。
・ロード・オブ・ザ・キャット ~「人生」取り戻したいだけの猫(元人間)が、無自覚に神獣へ進化した結果、人類最強が首輪を持って泣きついてくる件。これって営業妨害ですか?
「可愛いからって舐めないで。僕の敏捷、150はあるから。」
圧倒的な「猫の可愛さ」×「人類の勘違い」×「チート無双」! 僕を人間に戻せる(評価をくれる)のは、読者の貴方だけです。
・『生涯二十時間睡眠だった俺、夢で組んだ必勝パターンで異世界を攻略する ~無能と蔑まれた公爵家三男の、理想再演・無双譚~』
「夢を追う。non。夢を負うんだ。夢が現実だったらいいのに。non。現実を夢にするんだ。TOPを狙う。non.non.non。そんなの後からついてくる。狙うべきはTOPだろ??」
夢と共に最強に!
圧倒的な「勘違い(相互)」×「成り上がり」×「無双&夢想」×「最強」!!
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