#1:17年間のチュートリアルは、「コンビニのレジ袋」と「英雄の幕引き」を以て沈む
はじめまして。こんにちは。こんばんは。
「夢を現実に、現実を夢に」
~17年間の準備を終えた一人の男の、ズレながらも真剣な生き様に、最後までお付き合い下されば幸いです~
どうぞ、応援のほど、よろしくお願いいたします。
【本日は、複数話、投稿予定です!】
「夢」が「現実」だったらいいのに。
そう思う人は多いだろう。事実、俺もそう思い続けた。
「夢」を見続けて、六年。俺は、小学校に到達した。
六年という時間は長いようで短かった。
少なくとも「夢」を「現実」にするのには、まだ足りなかった。
修得したパターンは、たったの「2190」。
だから、小学校では苦労した。
一日経つごとに増えるとしても、所詮、小学生だ。
予測不能な動作や反応に、毎日、キョドっていた。
中学に上がった頃からだろうか?
少しずつ「社会」を学び、修得したパターンは「4380」になった。
ある時、俺は唐突に成長した。いや、きっと修得に費やした努力が実を結んだのだと思う。
授業中でも、ぐっすりと眠れるようになったのだ。
誰の声も、誰の目も気にしない、俺だけの空間。
時に王であり、戦士であり、武士であり、先生であり、探偵であり、……
だが、親は言った。
「寝てばかりいないで勉強しないと、追い出すわよ!」
まずいと思った。追い出されれば、寝床を探す時間は「夢」を見れない!
そこで、俺は閃いた。
勉強しながら、眠ればいい。
俺は相変わらず、授業中に寝続けた。模試は常に満点を取った。
寝ながらでも、すべての「情報」が頭に入ってくるし、パターン3528~3896の「がむしゃらに勉学に励む少年」として、既にすべての内容を攻略済みだった。
高校生になると、俺は色々なことに拘った。
「夢」というのは、当然、「質」が重要だった。
夢の中でのNPCは、現実の人間さながらの多様な応答を期待した。
建造物には、外観やファサード、感触を含め、自然な存在感を放つことを求めた。
夢想した俺にとって、現実での全ての会話は、もはや夢の延長となっていた。
小学校の頃のように、”キョドる”ことはなくなった。
高校の先生は、幾度となく、家を訪れ、親にチクった。
「あの、息子さんは、授業中に常に寝ているんですが、最近、移動中も寝るようになってしまって……」
「移動中……ですか?」
「ええ。その、立ちながら寝てますし、歩きながら寝てますし、走りながら寝てますし、答えながら寝てまして……ただ、学業成績は常に学年最優秀者ですし、スポーツの方も、目を閉じながらも、凄まじくて……不満はないんですが、ただ、少し心配で……」
「はぁ……」
そんな呆れ×2が微かに聞こえるだけで、俺の生活は常に、穏やかだった。
“オギャア”の頃は、眠るだけで、母は安堵のため息をもらしていたのに、”ガーガー”の今は、眠るだけで、不機嫌になってしまう。
昔は、寝顔を愛でて、あまつさえ写真まで撮ってくれたのに、今や、寝顔を引っ叩き、怒号を飛ばしてくる。
世知辛い人生だ。「俺」は「俺」なのに……
そうそう、現実は”同じこと”の繰り返しである。
たいていのことは、食べるか、寝るか、時間が経てば、なんとかなってしまう、多分。
そもそも、ずっと寝ていれば、不測の事態など起きないのだ。
今や、俺にとって、「夢」は「現実」になったと言っていいだろう。
二十時間、睡眠。四時間、食事・入浴。
無論、四時間は、「夢」のレベルを引き上げるための待機時間である。
栄養満点のバランスの摂れた最高の食事と、「夢」であくせくするための心身の癒し。
この四時間によって、「夢」の「質」が上がるのだ。悪夢なんてもっての外だ。
そんな生活を続けて、17年。
俺は、ついに、「夢」の限界を悟っていた。
様々なことを試した。
人体よりも高密度の液体の開発も試みたし、逆に”友達”になろうと努めた。
全て、徒労に終わった。
重力から逃れることはできなかった。
いつしか、パターンは、数えきれないほど増えていた。
色々な”もの”が、俺の「夢」の糧になった。
ここで最も重要なのは、「夢」に登場するのは、あくまで自身が会得した”もの”だけだということだ。
完璧に再現するには、その人物やモノの性格や特徴・特性、構造をすべて、論理的に”知識”として再現できなければならない。
そして、少なくとも、この世界で、俺が身につけられる”知識”は、もう残っていないように思えた。
「ぐきゅるる……」
母や父はちょうど仕事でいなかった。
俺は外に出た。
太陽が眩しく、俺の煌めきといい勝負だった。
(パターン20。太陽に照らされて、優雅に歩く主人公……)
少し顎を上げて、目を細くして、胸を張って、大きく一歩を踏み出す。
急激に視界が90度ずれる。
すれ違う人が足を止め、手を差し伸べてくる。
「大丈夫ですか?」 黒スーツに短く刈り上げた髪。
(これは、パターン9の再現だな。息を切らしながら、仲間を庇う実力者……)
「はぁ、はぁ、大丈夫だ、俺のことは心配するな、先に行ってくれ……」
俺は、額を軽く拭いながら告げた。
「……は、はぁ、そうですか……そ、その、お大事に……」
ここで断っておくが、俺は陰キャではない。
確かに、普段、陰の世界にいるが、陰キャではないのだ。
決して、人と喋れないから、パターンをあてはめているわけではない。
そう、「夢」を追い続けているのだ。
多くの人は、「夢」が「現実」になればいいと願うだけで、追い続けることをやめている。
その点、俺は、「夢」を「現実」にしているのだ。
羨ましいはずだ。
その証拠に、外に出てから、道行く人が、俺を一瞥してくる。
どうやら、内でも外でも、俺は主人公らしい。
立ち上がって、桃色ズボンのポケットに手を突っ込み、緑パジャマの胸ポケにサングラスを折りたたむ。
近くのコンビニでおにぎりを手に取る。
「いらっしゃいませ!レジ袋は御入用ですか?」
やわらかな声が耳に届く。
(ここは、パターン28が正解だろう。恋愛に発展するきっかけとなる出来事に遭遇した陰キャ……)
「環……環境のために……」
「……レジ袋は御入用でしょうか??」 少し、顔を背けて、身を乗り出している。
どうやら、次に進みたいようだ。
(パターン406でフィニッシュだ!軽い感じで、御飯に誘うイケてるBoy……)
「6時間後、ソロで行きますか?それとも、俺とパーティーを……」
「早くしてくれよぉ、あんちゃん!」
後ろからぶっきらぼうな声が飛ぶ。
(ちっ、このせっかち陰キャめ……パターン23に変更だ……物腰柔らかで相手に好印象を与える好青年……)
「あ、今回はノーバッグ縛りで行きます。ありがとうございます」
「……あ、はい……」
俺は、おにぎり1個を片手にコンビニを出る。
「……くそっ……しくじった……パターン406はボス戦仕様だった……生まれるのが早すぎたか……」
昼の信号待ちボッチ。太陽もボッチらしく、俺を熱烈サポート中。スポットライトが眩いぜ!
光量120%、影も濃いめ。な……青春スキル発動中だな!?眩しすぎて現実がぼやけてくるぜ!
「……そっか、ありがとな、my sun。ああ、わかってる。今度は失敗しない。NPCも0だからな。マンツーマンのみっちりサポート、そういうことだろ?」
パターン67のシチュ。
あそこの角まで、10秒ちょいで走ると、ポニテ女子とぶつかってイチャラブタイムに突入する、いわゆる確定演出!
任せろ、相棒!
(10秒ちょいで行くとなると、これだな!パターン33、一瞬で敵を置き去りにする快速ウイングの疾走……)
キィィィィィィィィィィィッ!
鼓膜を突き破るようなタイヤの摩擦音。 遅れてやってきた、暴力的な衝撃。
「なっ……イチャラブ確定イベが……ここにきて、難易度バグだと!?」
体が宙を舞う。 不思議と痛みはなかった。
ただ、全身のスイッチが強制的にオフにされるような、強烈な脱力感があった。
「パターン45になってしまったか……一発で敵の凶刃に倒れる鈍足ベンチ外の失踪……」
視界の端に、大型トラックのフロントグリルが見えた。
全身から謎の赤黒いレアエフェクトが発生し、アスファルトと同期される。
「回避行動、選択不可か……」
(…パターン51……世界に忠告する英雄で、幕だ……)
「……Stay Home……G.G……」
俺の意識は、目を静かに閉じた。
どれだけ準備したとしても……所詮、家の中のカスだったということか……リスポーン待ちだな……
こうして、レアドロップゼロの「夢負い人」の人生は、チュートリアルで沈したはずだった。
「……ッ!?」
強制ログアウトからの、即時再ログイン。 どうやら、無事リスポーンできたようだ。
が、特殊なリスポーンのようだ。
「バブゥ……(新世界かぁ……)」
重厚な石造りの梁、芸術的な装飾が施された天蓋。
そして何より、大気中の光の粒子。
それが「魔力」という未知のエネルギーだと理解するのに、10秒かかった。
魔力があれば、それすなわち……
シナリオがマンネリ化した現代のパターンを増やせる=隠しイベ(夢)を見れる
「……ホ、ホヘェ……バブバブゥ!(新、新パターン……諸々きたぁぁ!)」
諸々とは諸々だ。
・魔力全開!青春パワー+999、全スキル解放バブ!
・新魔法覚醒!放課後デートフィールド、ボーナスEXPバブ!
・魔力ブースト!学園で告白&イキり主人公討伐バブ!
・隠しエリア出現!転校生NPCと友情レベルMAXバブ!
・魔改造エンド!最強隠(欠く)して無双(夢想)Bestバブ!
赤ん坊という「初期設定」らしいが、この際、そんなことはどうでもいい。
俺は今世を、「on the bed」で、夢に捧げると誓った。
なるべく外にはでない。
そう誓った矢先に、外出の危機が訪れる。
下腹部に走る、我慢の限界を超えた熱い違和感。
(ま、まずい……。この脆弱なハードウェア、俺のbodyから外出してしまう……コントローラーが未実装なのか……)
俺は、断腸の思いで、最初期に修得した「禁断のパターン」を呼び出した。
「……俺にこのパターンを使わせるとは、貴様、何者だ……くっ、パターン1……己の本能に従って、素直に伝えるbaby……」
全身の力を振り絞り、肺活量を最大まで活用して、外の世界のNPCへと信号を送る。
「ホ……ホ……ホギャァァァ……!(も……も……漏れるぅぅぅ!)」
直後、バタバタと騒がしい足音が聞こえ、若い女が俺を抱き上げた。
こやつ、ヒロイン候補になりそうなほどの、容姿にスタイル。
これは、始まってしまうな……
「あらあら、アルト様。おむつですね。今替えてあげますからねー」
くっ、屈辱だ。
だが、これも「安眠環境」を維持するための必要なデバッグ作業。
異世界のチュートリアルにしては、なかなかにハードな洗礼だが、美女に世話を焼かれるのも悪くない。
ドゥヒドゥヒ……そなたも「夢」に招いてやろう……
俺は再び目を閉じる。 今世での「夢」は、まだ始まったばかりだ。
「……さて。おやすみなさい、新世界」
こうして俺は、二度目の人生の「眠り」に就いた。
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アルト-no-AIM:
・パターン406の真実:実は「6時間後、俺とパーティーを……」の後に、ウィンクをしながら指を鳴らすまでが1セットだった。後ろの客が割り込まなければ、コンビニ店員は恋に落ちるどころか、通報していた可能性が80%を超えている。
・パターン67の真実:アルトが走った「ポニテ女子」との遭遇ルート。実は10秒前に全力疾走を開始すると、女子ではなく、近所の大型犬と正面衝突するバグが30%の確率で発生する。トラックはそれを上回る致命的なバグだった。
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、ついに追〇??です。
~高評価やブックマーク、感想・リアクション等いただけるとありがたいです!~
E.N-de-core:「「E.N-de-core」というタイトルを考えるのに、4時間くらいかかりました(笑)。encore、core、&、end、de(フランス語の「の」)等々、色々なものを組み合わせた造語です。全体的な意味としては、encoreでもありますし、円(全体)のコア(基礎)みたいな意味でもあります……長々、語ってしまいましたが、どうぞ応援のほど、よろしくお願いいたします。」
――――――――【他作品も全力執筆中!】
更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!
・『【武の極致】と【フェンリル】の力を以て、三つの世界で覇者となった俺』
「動かないだけの者に何がわかる。動けば変わる。今はそう信じろ。」
【戦×無双×成長】 →天下を争う軍記モノです!※後々、魔法や異世界系に変わっていきます!
・『生涯、病室だった俺、異世界で自由な体を手に入れたので、天下を獲ることにした』
「窓の外を眺めるだけの日々は終わった。今度は俺が、世界に眺められる番だ。」
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・『生涯二十時間睡眠だった俺、夢で組んだ必勝パターンで異世界を攻略する ~無能と蔑まれた公爵家三男の、理想再演・無双譚~』
「夢を追う。non。夢を負うんだ。夢が現実だったらいいのに。non。現実を夢にするんだ。TOPを狙う。non.non.non。そんなの後からついてくる。狙うべきはTOPだろ??」
夢と共に最強に!
圧倒的な「勘違い(相互)」×「成り上がり」×「無双&夢想」×「最強」!!
⇧※本作です。これからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします!




