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悪の組織は正義の味方 〜 それは怪人製造ガチャポンから始まった 〜  作者: Marry
プロローグ

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第7話 託された未来

 ここ最近、ヒーロー戦隊が魔族の村を襲撃したという話を耳にしない。


 前回の戦いで奴らもかなりの痛手を負ったのだろう。


 スカンク怪人ガッスンが味方で本当によかったよ……


 いや……


 味方でもヤバいんだけどね(笑)


 なんにしても、人間族がやって来ないってことで、ゆっくりだけど、村の復旧作業は進めることができている。


「ライトや、すまんのう。

 お前たちにばかり力仕事をさせて。

 それに、どこかから調達してきてくれた米のお陰で我々はなんとか生きながらえることができておる。

 感謝するぞ」


「なにを言ってるんですか、カインド村長。

 ここは俺が生まれ育った場所。

 それに……

 死んだ母さんだって、一刻も早い村の復興を願っているはずさ」


「うむ、うむ。

 ほんとにお前は優しい子じゃのう」


 カインド村長は目を細めて、ポンポンと俺の頭を叩いた。


 少し照れくさい……


 俺は、はにかんだ笑顔をカインド村長に向けた。


「それにしても、あのウヒョヒョ言いながら瓦礫の撤去作業をしてくれておる全身黒タイツの方々は暑くないのかのう?」


 カインド村長は腕組みしながら首を傾げる。


 確かにそうだよなあ……


 それに彼らの覆面の下はどうなってんのかな?


 のっぺら坊だったりして……


 ……まさかね。


 俺はそれ以上は少し怖くなったので、適当に答えておく。


「ああ、彼らは日差しに弱いんですよ。

 だから、ああやって全身を直射日光から守っているんですよ」


「なるほどのう……」


 俺が質問に軽く答えていると、軽トラに乗る父がこちらを向いて、何かを叫んでいた。


「ライト〜ッ!

 こっちに来てくれないか〜!」


「あっ、父さんが呼んでるみたいなんで、ちょっと行ってきますね」


 俺はカインド村長にペコリとお辞儀をして、その場を離れることにした。


 軽トラに近づくと、どうやらエンジンがかからないようであった。


 カチッ


 キュルルル キュルルル


 カチッ


 キュルルル キュルルル


 父さんが何度もキーを捻るが、軽トラはてこでも動きそうにない。


 俺はパネルにある燃料計を覗き込んだ。


「父さん……

 燃料計がエンプティを指してるよ」

 

「ほんとだ。

 といっても、軽トラの燃料は魔族の村じゃあほとんど手に入らないしなあ……」


 俺と父さんは腕組みしながら考える。


 ポクッ ポクッ ポクッ ポクッ


 チーンッ!


「もう一度アレするしかないなあ……」


「アレするしかないだろうねえ……」


 俺たちは目を合わせニヤリと笑った。


 ……というわけで、俺たちは今、前回と同じ小高い丘の岩場に身を潜めている。


 例によって、時刻も同じ丑三つ時……


 流石に今回は、相手も警戒しているだろうと、少数精鋭でやってきた。


 ポッポの情報によるとガソリンスタンドには軽トラが二台置いてあるらしい。


 何人かの怪人たちも運転は教えてあるのだが、念のためにと今回の作戦には父さんも参加している。


 もちろん、鳥目のポッポと騒がしいシュークは置いてきた。


 言わずもがな、トンネル担当のモグラ怪人モグモグくんと、侵入担当のリスザル怪人サスケはスタメン入りしている。


 あとはモモンガ怪人モモちゃんとハムスター怪人のハムっちを連れてきた。


 それからもうひとり……


 あまり気は進まなかったけれど、いざというときの飛び道具として、スカンク怪人のガッスンも同行させることにした。


 彼には重々言って聞かせたのだけれども……


 勝手な放屁だけは慎んでくれることを、切に願う。


「さあ、ライト。

 今日も指揮は君に任せたからね」


 父さんの言葉に俺はコクリと頷いた。


「夜明け前には、かたをつけて村へ戻ろう!

 さあ、出発だ!」


 俺の合図でモグモグくんはガソリンスタンドへ続くトンネルを掘り始める。


 俺たちも、モグモグくんに続き、街のガソリンスタンドを目指す。


「モグモグモグー!」


 モグモグくんの勢いは止まらない。


 前回よりも気持ちに余裕があるのかな?


 なんだか体も軽い気がするよ。


(ちょっとあんた!

 調子に乗るんじゃないわよ!

 リラックスと油断は別なんだからね!

 しっかりと気を引き締めなさいよ!)


「危ない、危ない。

 全くその通りだよ。

 またシュークに怒られちゃうよなあ」


 俺が自省していると、モグモグくんの動きがピタリと止まった。


 トンネルの中は腐葉土の匂いに混じり、微かに油の独特の重たい匂いも漂っている。


 どうやらガソリンスタンドの真下に到着したようである。


「それじゃあサスケ、頼んだよ」


「キュイキュイッ!」


 サスケはコクリと頷き、小さな穴からトンネルの外に出て行った。


 しばらくすると、サスケがトンネルに戻ってきた。


「軽トラは屋内です。

 内側からカギは開けてきました。

 店員などはいませんでしたので、ガソリンはお持ち帰りし放題ですよ!」


「よし、みんな行くぞ!」


 抜き足 差し足 忍び足……


 抜き足 差し足 忍び足……


 俺たちはゆっくりと事務所に忍び込む。


 キーボックスから軽トラのカギを奪うとすぐに併設している倉庫の扉を開け、ガソリンタンクと軽トラを表の給油機まで移動した。


 怪人たちは、急いでガソリンを注ぎ軽トラに積み込んでいく。


 小一時間も過ぎた頃、軽トラの荷台は満タンになった。


 俺と父さんは別々の軽トラに乗り込みキーを捻る。


キュルルル ブオン ブオン


 軽トラのエンジンが唸りを上げる。


「さあ、出発だ!」


 ヘッドライトに明かりが灯され、アクセルを踏み込もうとした瞬間……


 どこからともなく、聞き覚えのある、甲高い嫌な声が響いた。


「待て!

 逃がしはせんぞ!」


 久しぶりに見る顔だ。


 一人少ない気もするけれど……


「この世に悪が蔓延る限り、正義の炎が燃え盛る……

 レッドバード!」


「ささっと参上、ぱぱっと解決!

 ひと呼んでさすらいの翼……

 ブルーバード!」


「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!

 魔族を倒せと俺を呼ぶ……

 グリーンバード!」


「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり……

 沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす……

 イエローバード!」


「「「「我ら……

 ヒーロー戦隊……

 バードラー!」」」」


 バッゴーンッ!


 彼らの派手なポーズとともに夜空にはカラフルな花火が打ち上がる。


「ピンクへの怨みを……

 いや……

 ピンクの仇を討たせてもらう!」


 レッドが地面を蹴り、真紅の炎が靴底を走る。


「見つかったぞ!

 急ぐぞライト!

 強行突破だ!」


 俺と父さんが強引にヒーロー戦隊を躱そうとすると、その先に一台のトレーラーが現れ道を封鎖した。


「ハッハッハッ。

 あめえんだよっ!

 何回も同じ手を食うかってんだ!

 これで逃げ道はなくなっただろ!

 カッカッカッ……」


 レッドは高笑いする。


「大首領様、大幹部様!

 私にお任せください!」


 突然、荷台に乗っていたハムっちが飛び降り、トレーラーめがけて一直線に走り出した。


 その背中は大きくもあり、寂しくもあった……


「打て〜!」


 バーン バーン バーン


「グホッ……

 なんのこれしき!」


 弾丸を受けてもハムっちは走り続ける。


「どんどん打ち込め!」


 バーン


「クハッ」


 バーン


「ぬぬ……」


 フラフラになりながらも、ハムっちは走り続けた。


 やがてトレーラーまで辿り着いたハムっちは、赤く染まった自分自身の体に檄を飛ばし、ドアをこじ開けて運転手を力一杯引きずりおろした。


 運転席に飛び乗ったハムっちは、ゆっくりとアクセルを踏み込み、俺たちの逃げ道を確保した。


 トレーラーの窓を開け、こちらへ叫ぶハムっち。


「私がヒーローを食い止めます。

 どうか、お逃げください!」


「ハムっち〜っ!」


 俺は叫んだ。


「何を躊躇っておられるか!

 あなた方は生き延びねばなりません!

 モグモグ!

 ガッスン!

 早くお二人を!」


「「承知した!」」


「急ぎましょう、ライト様!」


「でも、ハムっちが……

 ハムっちが……」


「彼の気持ちを無駄にしないでください!」


 そう叫んだモグモグくんの目にも涙が溢れていた……


「ライト!

 モグモグくんの言う通りだ!

 せっかくハムっちが命を賭して道を開いてくれたんだ!」


「わかったよ!」


 俺は涙を拭いアクセルを踏み込んだ。


 ブロロロローンッ!


 俺と父さんの軽トラが急発進する。


「ハムっち、先に行ってるからね。  

 絶対にすぐ追いかけてきてよ!」


 トレーラーの横をすり抜けるとき、俺は見た。


 コクリと頷き微笑み返してはいたが口元は別れを告げていた……


「さ・よ・う・な・ら……」


 俺の視界はぼやけていた……


 でも、ここでスピードを緩めるわけにはいかない。


 俺たちが逃げ延びること……


 ハムっちはそれを望んでいるのだから……


「待て!

 逃がさんぞ!」


 慌ててバードラーたちはバイクで追いかけようとする。


「行かせるか!」


 ハムっちはトレーラーを反転させ、バードラーたちに突進する。


「やばいぜ!

 あいつ――自爆する気だ!」


 レッドが叫ぶとヒーロー戦隊は、散り散りにバイクを捨てて、左右に飛び退いた。


「大首領様……

 大幹部様……

 短い間ではございましたが、充実した日々でした。

 いつか生まれ変わったとしたら……

 酒というものを飲み交わし……

 楽しく語り合いましょうぞ!

 我がジャスティスに栄光あれえっ!」


 ボッカーンッ!


 ボカ ボカ ボッカーンッ!


 炎の柱が夜空を焦がし、ガソリンスタンド一帯が火の海と化す。


「ハムっち〜っ!」


 俺はバックミラー越しに彼の名前を叫んだ。

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