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悪の組織は正義の味方 〜 それは怪人製造ガチャポンから始まった 〜  作者: Marry
新生ジャスティス

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第13話 歪んだ憎悪

 魔族なんていなくなればいい。


 生きる価値なんてねえ。


 汚物は消毒だ!


 ヤツらは絶対にゆるせねえ……


 ***


 −− 俺のおやじは行商人をしていた。


 街から街へ……


 物心ついたときから、俺にとってはそれが当たり前のことであった……


 朝もやの残る入り江に、帆をたたんだ大きな貨物船がゆっくりと近づく。


 ドォンッ


 静けさの中に大きな音が響き渡り、海面から水しぶきが上がる。


 錨が投げ込まれたのだ。


 鎖の擦れた金属音がやむと、一度大きく揺れた船体は、何事もなかったかのようにピタリとその巨体を静止させた。


 縄梯子がおろされ、やがて船首のゲートがゆっくりと開かれる。


「野郎ども!

 荷揚げの準備だ!」


 船員の声が響き渡る。


 塩漬け肉、ワイン、油、香辛料……


 次々に運び出される荷物たち。


 早朝にもかかわらず、港は活気に溢れていた。


 やがて、俺たちの順番がやってきた。


「まぶしい!」


 先ほどまで、船底で待機していた俺の目に、突然、陽の光が飛び込んできた。


 俺は目を擦りながらおやじに顔を向ける。


「なあ、おやじ。

 今度行くところはどんな街?」


 御者台に座り、荷馬車を巧みに操るおやじの隣で俺は話しかけた。


「ネオンシティっていってなあ。

 このジャッポネ島にあるでっかい街だ。

 最近リゾート開発がすすめられててな。

 ちょっとしたビジネスチャンスなんだよ」


「今到着したこの島はジャッポネ島っていうんだね」


「ああ。

 ジャッポネ島には、魔族が先住民族として暮らしてるんだよ」


「魔族って?」


 俺は矢継ぎ早に質問を浴びせた。


「お前は魔族を見たことはなかったかな?

 見た目は人間とあまりかわらないよ。

 ツノが生えていたり、キバが生えていたりはするけどね。

 あとは、寿命が我々より少し長いってぐらいかな」


「へえ、そんな種族がいたんだね」


「人間族の貴族や金持ちの中には、魔族を奴隷として使役している者もたくさんいるんだよ」


「奴隷として使役?」


 俺は奴隷という言葉を知らなかったので、首を傾げ、おやじに尋ねた。


「簡単に言うと、魔族を人間族のために働かせるってことさ」


「ああ、なるほど」 


「ほら、次に降りる馬車を見てみな」


「あれ?

 後ろの荷台にはなにも積んでないよ。

 それになんだかへんな形だ?

 まるで檻みたい」


「あれは奴隷商人さ。

 きっとこの島で魔族を仕入れるつもりなんだろうね」


「この島には魔族が住んでいるからかな?

 取り放題だね」


「いやいや、奴隷商人もなかなか大変な仕事だぞ。

 言うことをきく奴隷ばかりじゃないしね。

 ちゃんとご飯は食べさせないと死んじゃうし、寝床も与えなくちゃいけない。

 売れ残ったら投資費用も回収できないからね」


「ああ、そうか。

 ペットなんかも、ちゃんとエサを与えなくちゃ死んじゃうもんな」


「そういうことだ」


「俺も将来、奴隷を手に入れることができたら、ちゃんとエサやりを頑張るよ。

 奴隷を買って、おやじやお袋に楽させてあげるんだ」


「ハハハ、ありがとな。

 楽しみにしてるからな」


 そう言って、おやじは俺の頭をクシャクシャと撫でてくれた。


 お袋も荷台の中から、俺たちのやり取りを、目を細めて見ていた。


 −− 俺たちが初めに向かったのはネオンシティではなく、木々を伐採している小さな森に隣接する宿営地……


 所謂、労働者のベースキャンプだ。


 宿営地から少し南に行けば、大きな川が流れている。


 イットイ川というらしい。


 魔族との一応の境界線だ。


 あの川の向こうには、もっと大きな森があるのだが、まだまだ魔族の勢力が根強く残り、危険とのことであった。


 おやじは出稼ぎに来ている作業員に、本土から引き受けた手紙や荷物を届けるため、ここに立ち寄った。


 よほど大規模な商会じゃない限り、小さな仕事でも、よろず屋的に引き受けなければ、食べていくのは厳しいのである。


 それが現実だ。


 その中にあって、郵便業というのは比較的、美味しい仕事ではあったみたいである。


 なにせ、目的地に行くついでに手紙や荷物を預かり、届けるだけなのだから……


 −− 依頼を完了したおやじは、出稼ぎ者たちの希望もあり、本土品を販売するため、この宿営地に一週間ほど滞在することにした。


 その事件は最終日の夜に起こった……


 俺たちが滞在していた宿営地に、島を降りるときに見た奴隷商人の荷馬車が立ち寄った。


 おやじ以外にも、たくさんの行商人がここに滞在していたからである。


 日用雑貨補充のため……


 あるいは……


 仕入れしたところの奴隷を少し裕福そうな行商人に売るために……


 岩場の裏手に奴隷商人の馬車は停められている。


 前に見た空の檻には、十人以上の人間が閉じ込められていた。


 ほとんどが幼い子供たちで、皆、俯き、中にはすすり泣く者もいた。


 俺はその檻をぼんやりと眺めていた。


 ツノやキバを持った子供たち……


 それ以外は俺たちと違いはなかった。


「よくこんなに集めれましたなあ」


「なあに、あいつらは単純ですからなあ。

 少し、珍しい本土のお菓子をチラつかせたら簡単に着いてきましたよ。

 ハハハハハ」


 奴隷商人は行商人と談笑している。


 そのときである。


 暗闇の中から、農作業に使う鎌を持った男たちが数名、宿営地に乗り込んできた。


 一様に頭部にはツノが見えた。


 彼らは迷わず、俺の横にある行商人の馬車を目指す。


「おっとう!」


 檻の中のひとりが立ち上がり叫んだ。


「今、助けてやるからな!」


 俺を突き飛ばすと、魔族の男は檻のカギに、手に持った鎌を何度も振り下ろした。


 カッチャンッ


 果たして……


 カギは見事に壊され次々に中から子供たちが飛び出してくる。


「させはせんぞ!」


 バーンッ!


 奴隷商人の拳銃が火を吹く。


 先頭にいた魔族の男は、眉間を弾丸で撃ち抜かれ、その場に頭から倒れ込んだ。


 俺は恐怖のあまり、腰が抜けしゃがみ込んだまま動けないでいた。


「きゃー!

 おっとう!」


 魔族の娘は気が動転し、泣き叫ぶ。


 そして、父親の手から鎌を奪い取ったかと思うと、ブンブンと振り回し奴隷商人へと向かって行こうとした。


 奴隷商人と魔族の娘との真ん中にいた俺は腰を抜かして動けない。


「危ない!」


 急いで駆け寄ったおやじは、俺を抱きかかえ、その場を離れようとしたが……


 グサリッ!


 おやじの背中に鋭い鎌が突き刺さる。


 バタンッ


「おやじ〜っ!」


 振り落とされながらも、俺は叫んた。


 俺の叫び声とともに、再び奴隷商人の銃口が火を吹いた。


 バーンッ!


 魔族の少女の胸元からは血しぶきガ飛び散った。


 やがて、騒ぎに気づいた兵士たちがライフルを手にして檻のまわりに銃口を向けた。


 やめてくれ!


 こっちにいるのは魔族だけじゃないんだぜ。


 頭を手で覆ったとき、お袋が俺を包み込み、ライフルの方に背中を向けた。


「打て〜っ!」


 指揮官の合図が飛んだ。


 ズドーンッ


 ズドーンッ


 ズドーンッ


 何発もの弾丸が魔族を撃ち抜いた。


 まだ息のあったおやじや、俺を庇うお袋も含めて。


 やがて銃声はやみ、事態は沈静化した。


 辺りは静けさを取り戻した。


 おやじとお袋の犠牲とともに……


 ***


 俺はあのとき決めたんだ。


 魔族のヤツらは絶対に許さねえ……


 ヒーロー戦隊じゃなくなったって関係ねえ。


 どんな手を使ってでも、絶対にやってやる。


「ひとり残らず抹殺してやるからなあ!」


 俺は天に向かって、もう一度大きく吠えた。

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