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悪の組織は正義の味方 〜 それは怪人製造ガチャポンから始まった 〜  作者: Marry
新生ジャスティス

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第11話 前を向け

「で……

 ライト……

 これからどうすんの?」


 珍しくシュークが心配そうに尋ねてきた。


「そうだね……

 父さんたちの葬儀も終わったことだし、いつまでものんびりしている場合じゃないよね」


 そう……


 俺が逃げ帰った次の日……


 犠牲となった仲間たちの亡骸を連れ帰るため、みんなで人間族との境界線であるイットイ川を越えたんだ。


 ***


「父さん!

 モモちゃん!」


 軽トラを真横につけた俺は、すぐさま飛び降りると、重なり合いながら倒れているふたりに抱きついた。


「ごめんよ……

 ごめんよ……

 俺が軽率な行動をとったばかりに……」


 何度も、何度も謝った。


 ふたりは何もしゃべらない。


 それはわかっていた。


 でも、謝ることしかできなかったんだ。


「ねえ、ライト!

 謝れば済むって問題じゃないのよ!

 厳しいこと言うけど、あんたは一生、この十字架を背負って生きなさい!

 心配しなくてもいいわ。

 私たちも一緒に背負ってあげる。

 だから、今は前を向きなさい!」


 シュークは涙を堪えながら叫ぶ。


「ライト様……

 お姉ちゃんの言う通りですわ。

 悲しい事実は変えられません。

 昨日約束したじゃないですか。

 お父上の跡を継ぎ、前に進むと」


「ごめん。

 わかってはいるんだ。

 でも……

 でも……」


 俺はその場にひざまづき、両手を大地につけた。


「お辛い気持ちは理解いたします。

 それは我々も同じなのですから。

 涙を流していいとも思います。

 でも……

 後悔の懺悔はもうおしまいにしましょう。

 命を懸けた者たちは、そんなことを望んではおりますまい。

 シュークとリームの言う通り今は前を向き歩みましょう。

 あなたはひとりじゃないのですよ!」


 俺はひとりじゃない。


 その言葉にハッとする。


 そう……


 その言葉は二つの意味を持つ。


 ひとつ目は、ひとりぼっちじゃないということだ。


「思いやり、笑顔を向け、支えてくれる仲間が俺にはいる!」


 そして……


 もうひとつ……


 自分だけでなく、他者の運命を、今まで以上に左右する立場にあるという自覚。


 俺の判断ひとつで、また、今回のような悲劇が起こるかもしれない。


 そんな未来は作ってはいけないんだ。


「そうだね。

 俺はひとりじゃないんだね。

 みんなのリーダーなんだよね!」


 俺は立ち上がり、涙を拭った。


「ようやく理解したようね。

 あなたは大首領なんでしょ!

 ドシッと構えてなさい!」


「ありがとう、シューク。

 みんなもありがとう」


 その場にいた全員が、ウンウンと頷いてくれた。


「そうと決まれば、さあ……

 大首領様。

 早く先代様とモモちゃんを村へ連れて帰る準備をしませんと」


 トゲトゲくんは戦闘員たちと一緒に、ふたりを抱きかかえると、そっと棺に納めてくれた。


「ほんとなら、ネオンシティのハムっちもカスガ村へ連れ帰ってあげたいんだけれど、それは無理な話だよな……」


 俺はネオンシティがある方角の空を見上げた。


 沈黙の中、最初に声をあげたのはサスケだった。


「今の我々には難しいでしょうな……」


 トゲトゲくんやモグモグくんたちも、寂しそうに空を見上げる。


「大首領様……

 ガッスンを探しましょう!

 トンネルまで爆発音は聞こえてきましたが、死んだとは限りません!

 ヤツが簡単に死んでしまうとは、私には考えられません」


「そうだね。

 サスケの言う通りだ。

 スナイパーがいた、あの岩場に行ってみよう」


 俺たちは棺を荷台に乗せると、すぐに軽トラに乗り込み岩場へ移動した。


「この辺のはずだよな」


 軽トラを降り、俺が周辺をキョロキョロと見回していると、少し離れた所からトゲトゲくんの大きな声が聞こえてきた。


「大首領様!

 こちらにたくさんの人が倒れております!」


 俺たちはトゲトゲくんのいる場所に急いで集まった。


「うわぁ……」


 それは、あまりにも見るに堪えない惨状であった。


 控えめに見ても、そこで大きな爆発があったのだろうと、容易に想像できる。


 クレーターのように地面はえぐれ、その周りには、黒焦げた人間族の亡骸が、円形に倒れていたのだ。


「ガッスンはどこにいるんだろう?」


 俺たちは手分けして、辺りを必死に探した。


 しかし、ガッスンの姿はどこにもなかった。


「大首領様、もし、あのときの爆発がガッスンのおならによるものならば……

 その中心にいたであろうガッスンが無事であるとは……」


 誰もがあえて、触れなかった推測をモグモグくんは、爆心地であろう場所を見つめながら呟いた。


 みんなの気持ちが、深く沈み込んだそのとき……


「大首領様!

 見つけました!

 木の枝に!」


 十数メートル離れた、針葉樹の枝の上に立ち、何かを見つけ叫ぶサスケ。


 ジャンプ一番、枝から一回転し華麗に着地すると、すぐさまこちらに駆けて来る。


 クルリンパ……シュタッ


 タッタッタッタッ


 サスケが咥えているのはなんだ?


 俺は手渡された布切れを見て呆然とする。


「こ、これはガッスンの!?」


 サスケが持ってきたものに俺たちは見覚えがあった。


 黒い背中に白いライン……


「ガッスンの背中の毛皮!」


 俺は目を見開いた。


「みんな!

 あの木の周りを探すんだ!」


 一斉に全員が木の周りを探索し始める。


 数時間は探しただろうか……


 あと二つ、血痕が付着した小さな白黒の毛皮を見つけたものの、ガッスンの亡骸を探し出すことはできなかった。


 ガッスンは木っ端微塵に吹き飛んでしまったのだろうか……


「これ以上は危険だ。

 みんな、帰ろう」


「でも、ライト様!

 もう少……」


「だめだ、リーム!」


 俺はリームの言葉を途中で遮った。


「もうすぐ日も暮れる。

 これ以上長居はできない。

 人間族がここにやって来るとも限らないからね」


「でもっ!」


「ダメだ!

 これはお願いじゃない。

 命令だ!

 みんな、軽トラに乗り込め。

 村へ戻ろう!」


 俺の指示に全員が従い、急いで村へ帰ることになったが、リームだけは名残惜しそうに爆心地をグルグルと飛び回っていた。


「あんた!

 いい加減にしなさい!

 少しはライトの気持ちも考えなさい!

 一番この場に残りたかったのはアイツに決まってるでしょう!」


 珍しくシュークとリームの立場が逆転している。


 俺はリームと目が合った。


 俺の瞳からも堪えていたものが溢れ出した。


 リームは俯き、シュークに連れられ、俺とは違う軽トラに乗り込んだ。


 カスガ村へ戻る途中、誰も口を開く者はなかった。


 その日の晩、犠牲となった者たちの葬儀が静かに執り行われた。


 みんなのすすり泣く声がアジトいっぱいに広がり、悲しみだけが空間を支配していた。


 今日だけは泣こう。


 泣いてもいいんだ。


 ただ……


 明日からはちゃんと前を向いて歩こう。


 俺は胸の中で呟いた。


 ―― 葬儀が終わり、ひとり犠牲となった者たちの写真を眺めていると、リームが下を向いたままこちらへ飛んできた。


 そのままリームはちょこんと、定位置である俺の右肩に腰を下ろした。


「ごめんなさい」


 いつものリームの口調ならば、『もうしわけありませんでした』なのだが……


 こちらが、素のリームなのだろう。


 シュークがあんなだから、いつもは気を張っているんだろうな。


「いや、むしろ感謝してるよ」


「えっ?」


 リームは一瞬、目を丸くした。


「シュークが言ってたように、本当はもっとあの場にいたかったんだよ。

 でも、リーダーとしては撤退という選択をしなければならなかった。

 リームがああ言ってくれたから……

 俺の内面を代弁してくれたからこそ、迷うことなく撤退することができたんだ。

 ありがとうリーム」


「ライト様……」


 俺の首元に抱きついたまま、それ以上リームは何も言わなかった。


 ほんのひととき、静かな時間が流れる。


 スヤスヤ……スヤスヤ


「フッ……

 寝ちゃったか……

 ねえ、シューク……

 そこにいるんだろ?」


「なんだ、あんた気づいてたの?」


 ブイーン


 柱の影からシュークがゆっくり飛んできた。


 俺はリームを手のひらに乗せて自室に向かう。


 部屋の隅にはドールハウスが二つ。


 そのうちの一つを開けて、ベッドにリームを寝かせると、シュークはそっと妹に毛布を掛けた。


「フフフ」


「な、なによ」


「いや……

 妹には甘いなあと思ってさ」


「な、なによ!

 変なこと言ってると、前頭葉に毒針ブッ刺すわよ!

 早く寝なさい!」


 シュークは照れながら、自分のドールハウスに入っていった。


「ふたりともお休み」


 俺は部屋の明かりを落とし眠りに就いた。


 ***


「葬儀からかれこれ10日よ」


「わかってはいるんだけど……

 少し体調が……」


「体調って、どういうことよ」


 シュークが眉を寄せる。


「昨日、トゲトゲくんのビックリ合体ショーを見せられたところだし、まだ胃のあたりからムカムカして、逆流してきそうなんだよなあ」


「まあ、それについては私も同意見だけれども、そろそろ何か手を考えないと、敵もいつまた襲ってくるかわかんないわよ」

 

「う〜ん。

 だよね」


 俺とシュークが腕組みしながら唸っていると、横にいたトゲトゲくんがサッと手を上げた。


「あのう……」


「どうしたんだい?

 何か良い考えでも?」


「はい。

 この大陸には我々の他にも村があるのですよね?

 我々にできることなど、たかがしれていると思います。

 まずは各村の結束を固め、魔族全体で人間族に対抗する手段を話し合ってみてはどうでしょう」


「うん。

 そうだね。

 キミの意見はもっともだ。

 これは俺たちだけの問題じゃないものね」


「トゲトゲ、あんたなかなかいいこと言うじゃない。

 私直属の親衛隊にしてあげようか?」


「い、いや……

 シュークさん……

 それは遠慮しておきます……

 ハ……ハハハ……」


 トゲトゲくんは引きずった笑いをしながらハンカチで汗を拭っている。


「もう、シューク、わけのわかんないことばっかり言ってないで!

 そうと決まれば早速、カインド村長に相談してみよう!」


 俺はトゲトゲくん、シューク、リームを連れて村長宅へ向かうことにした。

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