第9話 継承
ライトがカスガ村に戻ったのは、夜もすっかり更けた頃だった。
アジトに戻ると一斉に待機していた怪人たちが寄ってくる。
真っ先に口を開いたのはシュークだった。
「あんたいったい、どんだけ私を待たせたと思ってるのよ!」
いつもの調子でシュークが絡んでくる。
「ああ、ごめん……」
覇気のない表情で返事をする俺にシュークが戸惑いながら尋ねてきた。
「ソルと他の怪人はどこなのよ……」
俺は黙ったまま唇を噛みしめ俯いた。
「……ハムっちは私たちを逃がすため……
大首領様とモモちゃん、ガッスンは敵の銃弾に撃たれ……
うっ……うぅ……」
そこまで報告したモグモグはその場に力なくしゃがみ込み、あとは言葉にならなかった。
「ウーヒョーヒョーイ……ウーヒョーヒョーイ……!」
戦闘員たちの泣き声がアジトに響き渡る。
「俺のせいなんだ。
俺が油断したから……
すぐに撤退しなきゃいけない状況で、銃弾に倒れた父さんから離れないで、我儘を押し通したばかりに……」
泣いちゃいけない。
泣いちゃいけない……
「あんたバカァ?」
シュークが腕組みしながら空中で仁王立ちしている。
「お姉ちゃん!
傷心のライト様になんて暴言吐くのよ!」
思わずリームがシュークを止めに入る。
他の怪人は、その様子を黙って見守っている。
「黙ってなさい!
だいたいあんたはライトに無条件で優し過ぎるのよ!
言うべきときはちゃんと言葉で伝えることも優しさよ!」
その一言でリームは口を噤んだ。
「いつでも作戦が上手くいくわけないでしょう!
それにあんたはどれだけ偉いっての?
まだまだ大人になりきれてないガキでしょうが!
なんでもかんでも自分のせいにするんじゃないわよ!
あんたは一人で生きてんの?
私たちをバカにするんじゃないわよ!」
シュークの瞳からは涙が溢れていた。
それは周りにいる怪人や戦闘員も同じだった。
トゲトゲくんが俺の横に来る。
「ライト様……
シュークの言う通りですぞ。
一人で抱え込む必要はございません。
それに……」
トゲトゲくんは、ひと呼吸置く。
「泣きたいときは泣いて良いのですよ……」
最後の一言でもう限界だった……
「うわ〜んっ!
父さ〜んっ!
ハムっち!
モモちゃん!
ガッスン!
うわ〜んっ!」
俺の涙腺は崩壊し、とどまることを知らなかった。
ひとしきり泣きじゃくったあと、俺はすくっと立ち上がる。
「これからどうしよう……」
ボソッと言葉が出た。
「あんたねえっ!
ほんと、前頭葉に毒針をぶっ刺さないとわからないみたいねえ!」
「まあ、まあ、お姉ちゃん。
そんな物騒なことばかり言わないの」
「リーム……
あんたは、まだ、そんな甘っちょろいことを!」
ふたりが、また、喧嘩を始める。
「ライト様……
我がジャスティスはまだ終わってませんぞ」
トゲトゲくんが俺に優しい視線を向けるが、俺は首を傾げた。
「ほんとにこいつはっ!」
怒ったシュークが俺の周りをブンブンと飛び回る。
「我々にはまだあなたがいるではないですか!
大幹部ライト様!
否……
新たなる大首領、ライト様!」
トゲトゲくんの言葉でその場にいた怪人と戦闘員が一斉にひざまづき、俺に最敬礼した。
あのシュークでさえも……
俺は皆に向き直る。
「こんな俺でも着いてきてくれるかい?」
「もちろん!」
「ウヒョヒョイ!」
シューク以外の全員が頷く。
「あんた、まだ、そんなヘタレなセリフ吐いてんの?
覚悟を決めたんなら、俺に着いてこいぐらいの気概をみせなさいよね!」
俺はシュークの言葉に頷いた。
「みんな、俺に着いてきてくれ!
俺と一緒に突き進もう!」
「御意」
「ウッヒョ」
そこには、かけがえのない仲間の笑顔があった。
これは終わりじゃない。
始まりなんだ。
俺は今、新たなる決意を胸に、目を閉じた。
ここからが俺たちの本当の戦いなんだ。
第一章 完
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