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悪の組織は正義の味方 〜 それは怪人製造ガチャポンから始まった 〜  作者: Marry
プロローグ

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1/11

プロローグ ライト誕生

 ―― 魔歴1986年……【カスガ村】


「グハーッ!

 む……無念……

 我が【ジャスティス】に栄光あれーっ!」


 ドッカーンッ!


 悪の組織【ジャスティス】最後の戦闘怪人トゲトゲくんが力尽き、爆発。


 モクモクと黒煙が天まで立ち昇る。


「ああ……

 トゲトゲくーん!」


 俺は崖の上で突っ伏し絶叫した。


「お前たちの悪巧みは許さない!

 大首領よ!

 次はお前の番だ!

 首を洗って待っておけ!」


 そう言葉を残し【ヒーロー戦隊バードラー】たちは、颯爽とバイクを繰って去ってゆく。


「ああ……トゲトゲくん……

 キミまでもが……」


 俺は、バイクの背中が小さく消えて行く夕焼けの荒野を、ただ見つめることしかできなかった。


 ここは【ジャッポネ島】の【カスガ村】という【魔族】が平和に暮らしていた土地だ。


 俺の爺ちゃんがまだ小さかった頃……


 史実によると、魔歴1853年……


 突如、黒い船に乗った【人間族】がこの島にやってきた。


 奴らは有無を言わさず上陸し、自分たちの娯楽のためリゾート開発を始めた。


 おとなしい【魔族】は逆らうこともできず【ジャッポネ島】の南へ追いやられた。


 ここ数十年は【イットイ川】を境界として【人間族】の開発はなかったので、我々【魔族】は限られた土地の中で平和に暮らしていた。


 しかし、ここ数年、【人間族】は境界線を超えて、再び開発を始めたんだ。


 逆らった村は田畑や家屋を焼かれ、場合によっては皆殺しにされた……


「あいつら……

 絶対に許せない。

 何が正義のヒーローだってんだ!

 ただの侵略者じゃないかよ!」


 俺は懐に仕舞っておいた【黒卵】を取り出し、グッと両手で握り締めた。


 ―― 俺のアジトはここ【カスガ村】にある【タバス湖】の地下水脈……のさらに下にある。


 青白く輝く光苔に囲まれた地底湖の畔で俺は叫ぶ。


「開けゴマ!」


 言葉に反応し、水面がざわめき何重にも波紋が広がる。


 強い磁場が発生し、モーゼ現象が起こると、やがてそこには階段が姿を現した。


「……何度見てもすごい仕掛けだ」


 俺はゆっくりとその階段を降りる。


「ライト様!」


 俺の姿を見つけると、小さな蜂娘がこちらへ飛んで来た。


「戻ったよ、リーム」


「トゲトゲ隊長は?」


 俺は目を閉じ首を横に振った。


 全てを悟ったリームはそれ以上何も言わなかったが、その小さな瞳は今にも涙が零れ落ちそうなぐらいに潤んでいた。


「ふたりだけになっちゃったね」


 俺がそう呟くと、リームはちょこんと俺の右肩に座り首元をギュッと抱きしめてくれた。


「リーム、ありがとう……

 さあ、最後の悪あがきといこうか」


 俺は懐から【黒卵】を取り出し研究室の扉を開けた。


 ―― 【怪人製造ガチャポン】


 手前には卵をのせる金の皿があり、繋がれた管を辿るとそこにはブラックボックスだ。


 ここで怪人が生成される。


 科学者であり考古学者でもあった父から受け継いだ大切な装置だ。


 俺は虎の子の【黒卵】を金の皿にそっと置き、赤いレバーを引いた。


 ガシャン


 卵は金属の管を通ってブラックボックスへと運ばれる。


 やがて、その先にあるカプセルのガラス扉が左右に開かれた。


「とっておきの【黒卵】だ。

 どんな怪人が出てくるんだろう……

 ……あれっ?

 なんかいつもと様子が違うぞ」


 ガラス扉が開くと、バチバチと黄色い閃光が走り、黒煙が立ち込めている。


 俺の肌はその黒煙から、重厚でとてつもない力を感じ取る。


 肩に座っているリームも、俺と同じように、ある種のオーソリティや恐怖に近いものを感じているようだ。


 ―― 果たして……


「うわ〜っ!」


「きゃ〜っ!」


 黒煙は俺たちふたりをすっぽりと飲み込んだ。


「か、体が燃えるように熱い!」


「ラ、ライト様〜!

 焼けるようですわ~っ!」


 やがて俺たちは意識が朦朧とし、その場に倒れ込んだ。


 ***


 ―― 魔歴2486年……【KASUGA CITY】


 ダダダダダダダダッ!


 俺の胸元を複数の銃弾が貫いた。


 銃殺刑……


 それは、あまりにも突然のできごとだった。


 いや、俺にとって突然だっただけで、奴隷である俺たちにとっては日常茶飯事である。


 街の中で【魔族】にからかい半分で娘が因縁をつけられた。


 この街では珍しくもない光景だ。


「申し訳ありません……許してください」


 許しを請うため土下座したとき【魔族】の右足に触れてしまった。


「いって〜」


 その【魔族】は大げさに転倒。


 気がつけば俺は手錠を嵌められ拘束されていた。


 この世界では【魔族】は【人間族】に対して特権を持つ。


 ささいな理由で【魔族】が【人間族】を殺しても罪にはならない。


 生かすも殺すも彼らの気分次第なのである。


 この世界にある全ての大陸は【魔族】が支配している。


 【ジャッポネ島】にある、ここ【KASUGA CITY】も例外ではなかった。


 数百年前までは【人間族】がこの世界を支配していた。


 当時の【魔族】はおとなしく、【人間族】に逆らう者などほとんどいなかったという。


 それをいいことに【人間族】は【魔族】を好き放題に扱った。


 そう……


 いま【魔族】が俺たち【人間族】にしているように。


 数百年前のある日、突如として【魔王】がこの世界に降臨した。


 【魔王】は好き放題する【人間族】を許さなかった。


 立場は一瞬で逆転したのだ。


 【人間族】は土地を奪われ、虐殺された。


 いや……


 正確には奪い返されただけである。


 散々虐げた相手に仇を討たれたのだ。


 つまり【人間族】にとっては自業自得。


 ……だが、俺は思う。


 あの時代に俺がいたわけでも、悪事を働いたわけでもない。


 なのに、どうして数百年後に生まれた俺たちがこんな酷い目に遭わねばならないのか。


 俺は【魔族】よりもご先祖たちを恨むよ。


 銃弾で撃ち抜かれたあとで、何を言っても仕方がないけどさ。


 ……まあ、あの状況で娘だけでも助けられたんだから良しとするしかないか。


 悲しいけど、コレ、現実なのよね……


 そう思いながら俺は静かに目を閉じた。


 ―― 深い穴に落ちていくような感覚。


 やがて意識が消えていく……


 段々と段々と……?


 意識が……


 あれ?


 逆に意識がハッキリしてきたんだけれども?


 でも体の感覚はない。


 しかし……


 確かに俺は存在している。


 ここは……どこだ?


 ここは白でも黒でもない……色のない空間……


 少し俺が混乱していると、どこかしら女性の優しくもあり、悲しくもある声が聞こえてきた。


「また、こうなってしまったのですね」


 その刹那……


 ドッゴーンッ!


 雷が落ちたような衝撃が俺の精神に走った。


 ***


 ―― 魔歴1972年……【カスガ村】


「さあ、目覚めなさい。

 そしてもう一度、自らの手で運命を切り開くのです。

 今度こそ正しい結末に辿り着きなさい」


 狭い空間を抜け出た俺は大きく息を吸い込んだ。


「オギャーオギャー」


 目を開けてもはっきりと景色が見えない。


 ここはいったい……


 しかし、心地よい揺れと温かい手の感触……


 その中で、優しい声が聞こえてくる。


「ねえ【ソル】。

 この子には真っ直ぐに正しく生きてほしいわ。

 【ライト(正しい)】という名前はどうかしら?」


「良い名前だね【ルナ】。

 さあ【ライト】、キミはこれから己の信じた道をしっかりと生きていくんだよ。

 パパとママの愛情をしっかりと受け取ってくれよな」


 【ライト】?


 俺の名……か?


 ***


 ―― 魔歴1985年……【カスガ村】


 【魔族】の子としてこの世界に転生し、十数年、俺は父と母の愛に包まれながらすくすくと元気一杯に育った。


 やがて、成長とともに前世の記憶は薄れ、今はすっかりとその記憶はない。


 この世界には【魔族】と【人間族】がいるのだが、容姿や能力に大した違いはない。


 違いといえば【魔族】にはツノやキバが生えているぐらいだ。


 最近、俺たち【魔族】の平和を乱す不穏な動きが【人間族】にあるらしい。


 【イットイ川】を越えて【魔族】の村々を襲撃しているという噂を耳にするんだ。


 その無法者たちの名は【ヒーロー戦隊バードラー】。


 なんでも、バイクに跨った【人間族】の英雄らしい。


 どこが英雄なんだか……


 こっちからしたら単なる無法者でしかない。


 ―― 俺が14歳の誕生日を迎えた日……


 その悲惨な出来事が、この【カスガ村】を襲う。


 ついに奴らがこの村にもやって来てしまったんだ。

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