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ダウナー・ジャジー・シーカーズ~テンション低めの気怠げお兄さんによる飯テロ有のマイペースダンジョン配信~  作者: 北乃ゆうひ
第1部 春

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010.そのくじが貧乏かどうかは結果がでるまで分からない

ローファンタジー(連載中)の日間ランキング3位に入っていました٩( 'ω' )و

お読み頂いた皆様、ブクマや評価をしてくれた皆様、ありがとうございます!


「配信ねぇ……本気?」

「その質問にあまり意味がないコトくらい、付き合い長いお前なら分かるだろ」

「まぁな。ようは探索者資格とった時と同じ状態ってコトな」


 あの時もただ学校へ行って帰るだけという日々を無為に使うような生活になりかかっていた。

 なので、わずかに興味が湧いたダンジョン探索をするべく、ダルいダルい言いながら勉強して資格を取ったのだ。


 食指が動いたなら出来るところまでやる。

 面倒くさがりで怠惰であろうとする(セイジ)にとっては、そういうルールを設けなければ勉強や趣味などが長期的に続かない。


「ああ。このままだと完全に虚無ライフを送りかねない」


 そんなセイジの気質を知っているとはいえ――あるいは知っているからこそか――ツカサは困ったように顔を(しか)めている。


「思い立ったが吉日とはいうけど、タイミング悪すぎだろ」

「そうか?」

「そうだよ。今始めたら確実にコーンが来るぞ」

「それに関してなんだが……むしろ、来て欲しいと思ってる」

「……なんでだ?」


 ツカサが目を(すが)め、どこか不機嫌な様子で訊ねてくる。

 恐らくは、セイジが新しい世界へと踏み出そうとしているのに、コーンが邪魔だと思っているからだろう。


 こうやって気に掛けてくれるツカサに対して、自分にはもったいない友人だ――と、思いながら、セイジは首を撫でつつ答えた。


「少なくともお前のところにコーンとやらが行かなくなるだろ。これはオレの問題だ」

「そう言うと思ったが……昔からそうだったけど、お前ってダルいダルい言いながら、変なところ律儀というか真面目だよな。それで良く貧乏くじ引いてるだろ」


 そのツカサの指摘に、セイジは心当たりがないわけではない。

 だがセイジは、自分自身では言われるほど問題があるとも思っていなかった。


「確かに、貧乏くじだと思ったコトは多々ある。だけどいつだってオレは貧乏くじを引くつもりで、こういうコトはしてない」

「そうなのか?」

「引いた結果が貧乏くじだっただけだ。今の時点じゃあ、まだ中身の分からないくじだと思ってる」

「その心は?」

「配信っていうのは、その気がなくても多少の閲覧数はあった方がいいんだろう? なら荒らし目的のコーンだろうがなんだろうが、閲覧数は閲覧数だ」

「なるほどね。相変わらず……ほとんど触れたコトのない界隈であろうと、自分が関わりだした時のカンは良いな」


 セイジの中に配信をしない――という選択肢がすでに無いと理解したツカサは、小さく息を吐いて、残った皿を平らげる。


「後ろ盾の無い個人勢が、いきなり炎上スタートの可能性があるとか難易度ベリーハードだぞ――と、思わなくはないが、まぁお前だもんな」


 そしてお茶も飲み干し、グラスを割れない程度に力強くテーブルに置いた。


「分かったよ。来週の火曜日は空けておけ。

 立川(たちかわ)吉祥寺(きちじょうじ)あたりの大きめの家電量販店に、必要な機材を買いに行くぞ」

「助かる」

「あと、空いている日は適当なダンジョン探索でもして、カンを鈍らせずにしておけよ」

「ああ」


 二人とも海南鶏飯を食べ終える。

 あとは、後片付けをしながら、だらだらとダベる時間だ。


「お前って今日の夜は空いてる?」

「今はニートだからな。時間はいくらでも空いてる」

「じゃあ五時過ぎたらMUSOU(ムソウ)に飲みに行こうぜ。今の季節メニューが蕗ノ薹(フキノトウ)の天ぷららしくてさ、めっちゃ食いたい」

「蕗ノ薹か。悪くないな」


 二人は夕暮れ時まで、お喋りメインにダラダラ過ごしたあと、行きつけ店である居酒屋MUSOUへと出かけるのだった。



  ・

  ・

  ・



 そうしてセイジは、ツカサと一緒に買い物にいったり、ツカサから配信に関するレクチャーを受けたりしながら、二ヶ月ほど過ごし――



 セイジは、とあるダンジョンへとやってきていた。

 そこのエントランスで、撮影用のドローンを設定したり、探索をする準備をしている。


「……準備はこんなところか」


 それも終わって、セイジは一息ついた。


 事前に動画サイトのGreatube(グレイチューブ)と、Greatube内にあるダンジョン配信用のアカウントは作成済みだ。チャンネルも作ってある。


 ダンジョン配信は、配信者にその気がなくとも意図しないグロや裸などの十八禁指定されそうな映像が流れる可能性がある為、サイト内でもページとアカウントが別途存在しているのだ。


 これはGreatubeのみならず、ダンジョン配信OKの配信サイトの多くが採用しているシステムらしい。


 サイトの話はさておき。


 セイジが作ったチャンネル名は『ワ○ルドのダウナー・ジャジー・クッキング』。

 配信用の芸名(ハンドル)も、チャンネル名も、全部ツカサが考えてくれたものである。


 ちなみに読み方はワルドだ。○は発音しないらしい。


 そして、ハンドルネームの由来は、ツカサによるセイジ評からきているらしい。

 独特の『世界(ワールド)』を持っていながら、それでいて何でも出来る『ワイルドカード』のような器用さを持つ。そのことから、二文字目を空白の○にしたとかなんとか。


 ついでに、ツカサの強いすすめで、面倒ながらもWarbler(ワーブラー)のアカウントも作った。


 140文字程度の短文を投稿できるSNSだ。

 小鳥たちがピーチクパーチクと自由にwarble(さえずる)空間という意味で、この名前を付けられたんだそうである。


 一応、アカウント作成と同時に『なんとなく配信とかしてみたくなったので、ついでにこちらのアカウントも作りました。よろしく』とさえず(ワブ)った。


 そして、Greatubeのチャンネルページのリンクまで張ったのだ。セイジとしては面倒くさがりの自分ながらがんばったと自画自賛する。


 それを見たツカサが何とも言えない顔でこちらを見てきたのはなんだったのだろうか。


 ちなみに、初めて投稿(ワブ)するなり、どこから聞きつけてきたのか速攻で「死ね」とか「失せろ」というリプライがいくつか飛んできたのには驚いた。

 セイジがアカウントを作るのを待ち構えていたのだとしたら、相当暇な連中なのではないだろうか?


 そもそも、セイジとも『節制』ともダウナーニキとも名乗っていない。

 新しい名前である『ワ○ルド』というアカウント名なのに、攻撃されたというのも不思議な話だ。


 新しい配信者をとりあえず罵倒するタイプのアカウントだったのだろうか。

 なんにしろ行動に移せるほどの強い興味を抱いているのは羨ましいが、その情熱の使い方は間違っている気がする。


 さておき、セイジもセイジで驚いただけで、粛々と誹謗中傷という名目で通報とブロックをしたが。

 なお、その直後にブロックする前にその誹謗(ひぼう)さえずり(ワーブル)画面写真(スクリーンショット)を撮っておけと、ツカサにアドバイスされた。


 もしかしたら今後に発生するかもしれない厄介事解決の武器になる場合がある――とのことなので、今後はちゃんと撮ろうと考えている。


「配信用の枠は準備できている。warbleの予約投稿(ワブ)も問題ない」


 一つ一つ確認していく。


「ツカサから教えてもらった、今日の配信する上で必要なコトも、頭に入っている」


 情熱と呼ぶような熱はない。性に合うことかも分からない。

 そもそも、面倒かどうかでいえば、配信もその準備も、ひたすらに面倒だとも思う。


 けれど、やるからには必要なことをちゃんとやる。

 自分が興味を持って始めたことだ。面倒くさくてもしっかりやる。

 その上で、配信をしていく上でどこまでやるか――というマイルールとして、期限を設ける。


 一年。

 とりあえず、一年間はツカサと相談しながら続けていこうと考えている。

 収益化については考えない。自分のスタイルだと収益化申請が通るほどまで人を増やせるか分からないからだ。だからこそ、まずは一年間続けることを目標とする。


 資金的なところは、配信中ないし配信外の探索で得た素材の売却などを視野にいれておけばいいだろう。探索者協会に行けば採取や討伐の依頼もある。多少の赤字はそれで軽減できるはずだ。


 ダルいが、食費等を節制に努めれば一年くらいは問題なく生活もできるだろう。


「さて、そろそろ時間か――」


 配信用カメラを搭載したドローンを飛ばす。

 事前にプログラムした動きをベースに、ターゲットを追尾するタイプのダンジョン配信用ドローンだ。


 飛んだり跳ねたりという激しいアクションをしすぎないなら、これで充分らしい。


 またドローンの頭頂部にホログラフモニタの投影機能がついている。そこにブラウザや配信操作などの画面を表示できて、コメント確認などできる機能もついているからと、ツカサにオススメされた。


 ホロウィンドウなどと称される画面表示機能。

 今はそこに、待機画面が表示されていた。


 待機画面といっても大したものではない。

 簡素なデザインのチャンネルタイトルと、準備中少々お待ちくださいというメッセージが表示されているだけだ。


 配信開始まであと一分。


 緊張をしていないと言えば嘘になる。

 テレビ出演の経験はあれど、それは自分が主役ではなかったし、ネタを披露するのも出演者や店長であって自分ではなかった。


 だが今回は自分が主役だし、ネタを披露するのも自分だ。

 高校時代に、学園祭でライブをやらされた時を思い出す。


 やりたくもないのにバンドを組まされ、ボーカルをやらされ、全校生徒――どころか、学園祭に遊びにきたお客さんたちの前で出し物として披露させられた。


(……いや、学園祭(アレ)と比べたらマシなダルさでは……?)


 そう思ったら気が楽になってきた。

 そして、そんなことを考えているうちに、時間がくる。


(いざ――)


 さぁ、配信スタートだ。



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