天魚(てんぎょ)
深夜にふと、浮かんだ民話です
海に比べればそれほど広くはないものの、それでも充分なくらいのびのびと泳げる広さの湖ではある。
その湖を住みかにしている小さな魚は、水面に映り込む無数の星を浴びるのを毎夜楽しみにしている。
湖なのに、まるで銀河を泳いでいる感じを受け、魚は泳いでも泳ぎ足りないくらいだ。
〈冬の星空は実に幻想的……もう一度、あの日のように星空を泳ぎたい〉
魚は昔、実際に星空を泳いでいた。
と言うより、星その物だったのだ。
数百年前、流星群としてその中にある一粒の星だった。
流星群は惑星の産卵により星空に放たれ、別の惑星に産み落とされる予定だった。
新たな惑星に辿り着き、星人として暮らすべき存在。
一粒の星は流星群から軌道を外れ地球のとある湖に降り立ち、そこで羽化したというわけだ。
惑星の卵は降り立つ場所はに合う生態系を持つ為、湖に墜ちた瞬間その場所で生きられる魚として成長したのだ。
〈今はまだ魚だけど、後百年生きれば惑星として再生されるのは知っている。
だから待ち続ければ、百年後には今度は星の海を泳ぐ天魚へと生まれる事が出来る〉
百年は惑星の子にすれば短い間。
たった百年待てば、湖の魚は天魚になれる。
銀河の生態系を自由に想像しました
 




