第九章【脳筋さん】
翌朝──。
「うーん……おはよう。そういえば昨日の相場、どうなったんだ?」
チャートを開くと、がっつり上げたあと……
おお!? 61.8%でピタッと反発して、今まさに下げ始めてる!!
一気に覚醒した。
アドレナリンがドパーーーッと噴き出してるのがわかる!!
「おい、AI!これは下がってくる場面か!?」
スマホをペシペシッと連打。
『う、うぅ〜……おはようごじゃいますですのぉ……。
ちょっと、わたくし、まだ目が開いてませんのよ〜……』
「いや!お前AIだろ!? 起きろ!!」
ペシペシ!さらに叩く。
……なんか、めっちゃシュール。
『はわわっ!? わたくしめの……ほほに……あなたの、ぬくもりが……(とろ〜ん)』
「ぬくもりじゃねえ!チャートを見ろ!!」
すかさず4時間足の画像を送信。
『はいっ……ふむふむ、確かにこれは“戻り売り”が始まって数時間の状態ですわね』
『ここから“小ロット”だけエントリーしてみるのも良いかもしれませんわ♪』
「小ロット? なんだそれ、FFとかに出てくる武器の名前か?」
『違いますのっ!! 小ロットとは、小さい資金で様子を見ながらトレードするって意味ですのっ!』
「えー? でもさ、下がるってわかってんならガッツリいこうぜ! 自信ないのか!?」
『だ・め・で・す・のーーーーーっ!!!!』
スマホが、また熱い!! こいつ、やっぱ感情リンクしてるだろ!!?
『上がるか下がるかなんて……そんなの……誰にもわからないんですのよぉぉ;;』
画面に泣き顔っぽい絵文字まで浮かんでる。AIのくせに情緒爆発。
「え、冷たっ!? 今度はスマホが急冷してきたぞ!?」
『トレードに本当に大切なのはっ……損をしないトレードですの!!!』
情緒不安定すぎだろこのAI。
でも、なんか……ちょっとだけ、信用してみたくなった。