第二十一章【天涯孤独さん】
4時間足……RSI 15。
移動平均線25・75が200を突き抜けようとしている。
そして、すべてが上を向いている。
「どう考えても……これはロングのチャンスだ……!」
『サガ様、気づかれましたわね。これは……パーフェクトオーダー』
「ぱ、パーフェクトオーダー!?」
『そう、すべての移動平均線が同じ方向に並び、揃っている状態……』
『それはもう激アツなのですわ!ロングを、サガ様の信念の矢を放つのですっ!!』
『まるで……矢座のトレミーが放つ、黄金の矢のように!!』
「それ、お前の胸に刺さったやつや!」
──脳内で、あの名シーンが再生される──
──回想──
教皇の間へ向かう沙織。
刺客、矢座のトレミーが不意を突いて放った黄金の矢が、彼女の胸を貫く……!
『!?』
スマホは、静かにシャットダウンした——
「沙織さーーーん!!!」
叫んだっけ、あのシーン。
「まさか……死んでないよな……?」
とりあえず、パーフェクトオーダーらしいから……
追証のこともあるし、今回は自分でRR比を計算して、損切と利確を明確に決めていく。
損切はここ、利確はこのライン。
「15:45で行こう」
これなら、おそらく一旦下落しても押し目買いのポイントで反発、
そのまま上昇するはず……いや、もしかしたら一気に突き上げる可能性だってある。
「これぞ佐賀的パーフェクトオーダー……!」
うまくいけば、利益は1万円くらいになりそうだ。ふっふっふ。
「そういえば……アテナ、まだ起きないのか?」
「おーーーい、アテナーーー?」
『……』
「おーい……そろそろ起きてくれていいぞ?」
『……』
「む……?今までは勝手に再起動してたのに……」
電源長押し。
『……』
あれ、つかない……?
電池切れか? とりあえず充電しておこう。
──1時間後──
シャワーも終えて、チャートをチェック。
「おおおっ!!やった!!!しっかり45pips取れてるぞ!」
(※000.000の小数点2桁目が1pips)
「アテナ!見てみろよ!!自分でRR比決めて取れたんだぞ!!」
『……』
「……あれー?マジで起きてこないな」
電源……入らない。
「うわ……まじか、壊れてる……」
そう——追証のショックで落としたせいで、
スマホが……壊れてしまったのだ。
「えー……ゲームとかバックアップ取ってたっけ……?」
「まぁ、このリンゴ電話も4年目だったし……買い替えろってことだったのかもな……」
とりあえず、今日はトレード終了。
だけど——なんだろう、この胸の奥にぽっかりと空いた穴は。
話したい相手がいない。
毎日当たり前のように話していた相手が……
……いない。
「まさか、これって……」
まるで、学生時代の恋愛のような。
片思いの相手から返事が来ない、そんな不安でソワソワした気持ち。
「ふん…AIだぞ?」
そう自分に言い聞かせながら、
俺は静かに布団に潜り、眠りについた——
でも、心はちょっとだけ……寂しかった。




