これからもずっと一緒に
「今日は災難だったね」
「本当にね。でも、今日から紫苑と暮らせるんだからあんなことはどうでもいいよ」
僕はあの後すぐに荷物を持って紫苑の家に向かった。
荷物といっても衣服や生活必需品だけなのでキャリーケース一つくらいだ。
「まさか泥棒猫扱いされるなんて思わなかったな」
「僕もあんなに直接的に言ってくるとは思わなかったよ。不快な思いをさせてごめん」
「海星が謝ることじゃないでしょ。こんな話は置いといて晩御飯にしようよ!」
「そうだな。今日は僕と紫苑の同棲記念日だから何でも作るよ」
「じゃあ、お肉がいい!」
「おっけ。買いに行くか」
「うん!」
2人して夕飯の食材を買いに行く。
隣にいる紫苑はかなり上機嫌だ。
自然と指を絡ませて手をつなぐ。
こうして歩いているだけでも幸せなのにこれからはずっと一緒に居られると思うと幸せで仕方がない。
「海星」
「なに?」
「私今すごく幸せだよ!」
「僕もだ。あの時拾ってくれて本当にありがとう」
「こちらこそあの時拾われてくれてありがとね!」
なんだか変なことを言い合っている気もしなくもないけど本心なんだから仕方がないだろう。
◇
「ほら紫苑? そろそろ起きないと遅刻するよ?」
「え? もう朝ぁ?」
「とっくに朝だよ。朝ごはんはもうできてるから着替えてから来てね」
「わかった」
僕たちが同棲を始めてから早いものでもう一ヶ月が経過していた。
紫苑は相変わらず家事とかはできないけど最近は少し手伝ってくれるようになった。
まあ、朝も弱くていつも僕が起こしてるんだけど。
「おはよ~海星」
「おはよう紫苑。早く食べて学校行かないと遅刻しちゃうよ?」
「うん。いただきます」
「いただきます」
僕たちは朝食を食べ始める。
いつもの光景だ。
お弁当はもう作り終わっているし僕のほうの準備はもうできている。
そういえば、母さんから聞いたけど今の茜はかなりやばい状況らしい。
まあ、身の回りのことを大体僕がやっていたから当然か。
成績も昔に比べてかなり落ちたとか。
まあ、今の僕にはなんの関係もない話だけど。
「海星と同棲してもう一ヶ月。早いねぇ」
「だね。毎日紫苑と居られて僕は幸せだよ」
「私も幸せだよ! 本当にいつもありがとね!」
「こちらこそ紫苑にはいっぱいお世話になってるから」
紫苑は空になった食器を流し台に置きながらそう言ってくれる。
いつもはこのまま僕が洗うんだけど今日は時間がないから後にする。
「忘れ物とかない?」
「うん大丈夫。というか海星がいつも準備してくれてるから」
「じゃあ、行こうか」
「あ! ちょっと待って」
「忘れ物?」
「違うよ。ちょっとこっち向いて」
「こうか?」
僕が言われるままに紫苑のほうを向いたとき唇に柔らかいものが触れた。
それは紛れもなく紫苑の唇だった。
「え?」
「これからも私とずっと一緒にいてね!」
彼女は僕を見ながら満面の笑みでそういうのだった。




