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こうして僕は拾われた。

 関係値は時間と比例しない。

 そう気が付いたのは僕が生まれてからずっと一緒にいた幼馴染に捨てられた時だった。


「正直私、あんたのこと全く持って好きじゃなかったのよね。まあ、今までは勉強も教えてくれたし掃除とかもやってくれて都合がよかったから付き合ってあげてたけどもういいや。イケメンの先輩にも告白されたしもう別れて。あと、この事父さんと母さんには言わないでね。面倒だからさ。じゃあね~」


 一方的にそう言われたのをよく覚えている。

 というか、言われたのは数時間前なのだから忘れられるはずもない。

 生まれてから17年ずっと好きだった幼馴染に捨てられた。

 その事実が重く僕の心にのしかかってきた。

 あれから僕は家に帰っていない。

 時刻はもう0時を回っている。

 でも、家にいたら泣き出してしまいそうで親にも迷惑はかけたくない。

 それに今日は金曜日だから両親には友達の家に泊まってくると連絡をしている。

 だから適当に公園のブランコを漕いでいた。

 今まで彼女のために料理を勉強したり掃除などの家事を一生懸命練習したり、彼女に勉強を教えるために勉学にも力を入れてきた。

 でも、そのすべてが無駄だったのだ。

 人生の生きる意味を失ったような、体の半分を失ったと錯覚するほどの無力感が僕を支配していた。


 涙が流れる。

 いや、全身が濡れてる。

 どうやら雨が降っているらしい。


「こんなところで何をしているのですか? もう午前3時ですよ」


 雨の中ブランコを漕いでいると突然声をかけられた。

 警察だろうか?

 そういえば僕は今制服を着ているから補導されてしまう。


「すいません。すぐに消えます」


 いっそこのまま本当に消えてしまいたい。


「待ってください」


 立ち去ろうとしていると後ろから声をかけられた。

 一体なんだというのだ。

 今は誰とも話したくないのに。


「なんですか?」


 このまま無視もできなそうなので振り返るとそこにはとても綺麗な女の人がいた。

 でも、あれ?なんだかどこかで見たことがあるような気がする。


「あなたはまだ私の質問に答えていませんよ? 一体雨の中傘もささずにこんな時間に何をしていたのですか? しかも制服姿で」


 思い出した。

 僕の学校の生徒会長だ。

 入学式で見たっけか。


「ただ、考え事をしていただけです。深く考えていたら時間を忘れてしまって雨が降っているのにも気が付きませんでした。ご迷惑をおかけしてすいません」


「嘘ですね。ならなぜあなたは泣いているのですか?」


 どうやら泣いていたのがばれていたらしい。

 面倒なことになった。


「そこまであなたに話す必要はないと思います」


「それはそうかもしれませんね。ですが、あなた家に帰る気がないでしょう?」


「なんでそう思うんですか?」


「勘です」


 なんて鋭い勘なんだ。

 厄介極まりない。


「まあ、そうですけどそれこそあなたには関係ないですよね」


「いいえ? このままあなたを野放しにして補導でもされたら私たちの学校の名に傷がつきますから」


 それはそうなのかもしれない。

 でも、今の僕には行く当てがない。

 お金もないし。


「……」


「その様子だと行く当てがないのでしょう? とりあえず私の家に来なさい。そこで話を聞きます」


「は?」


「いいから行きますよ。あなたと一緒に補導なんて私は勘弁です」


 僕の手を引いて彼女は僕を引きずっていく。


「ちょっと!?」


「いいから黙ってきなさい」


 もう抵抗する気力もないのでそのまま引きずられていくことにした。


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