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世界の古典・文学作品シリーズ

読まずに死ぬのは人生の損!ガルシア・マルケスの『百年の孤独』についてちょっと語らせてくれ

作者: エンゲブラ

宮崎の芋焼酎の話ではない。

1982年にノーベル文学賞を獲得したコロンビアの作家、ガブリエル・ガルシア・マルケスの代表作。全世界で5000万部以上を売り上げ、ラテン・アメリカ文学ブームの火付け役となった傑作の紹介。


「マジックリアリズム」と呼ばれる現実と空想の境界線が溶けてしまったかのような彼の描写が、後の世界文学に与えた影響は計り知れない。


―― 南米の架空の町・マコンドで繰り広げられるブエンディア一族7世代の盛衰の物語。一族の祖にして、マコンドの創成者であるホセ・アルカディオとウルスラ・イグアラン夫妻から始まる一族の百年を描く。


タイトルが『百年の孤独』というくらいだから、どんな暗い内容かと思いきや、中身は常に沸点が高く、血湧き肉躍るエピソードばかり。日常生活で、南米の人々に感情移入するような機会はなかなかにないが、この本を読んでいた当時、私の心もラテン系になっていたことを今でも記憶している。


ページをびっしりと埋め尽くす文字、文字、文字。

南米の作家あるあるだが、彼らは改行をほとんどしない。まるで原稿用紙1枚が千円くらいの価値でもあるかのように、高密度のページをこれでもかと作り出す。読書中、どの行まで読んでいたのかを見失うこともしょっちゅうだ(苦笑)。


なろう小説とは正に対極。

なろうが脳の負荷をほぼゼロにして読み流せるのに対し、こちらはゴリゴリに圧力をかけてくる。それでも読めてしまうのは、読者をラテン系にしてしまうマジックリアリズム、それによって誘引されるアドレナリンによるところだろう。


読み始めた当初「ぜったいこれ読み終わらないやつやん」というくらいページが進まない。1ページ読んでいる間に、なろうなら余裕で10ページ以上は進んでいそうな重力が働く。それでも本の中盤あたりでは「うそん、もう半分しか残ってないの?」と永遠に味わっていたいという渇望すら筆者は覚えた。


ちなみにこの作品を読んだ当時の筆者は、ほとんど小説を読まない人間であった。それから現在に至るまでも、やはり小説はほとんど読んでいない。何を読んでも途中で投げる(ガマンして最後まで読んだ村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』はオチで思わず持っていた本を壁に叩きつけたくらいだ。彼の作品は「雰囲気小説」に過ぎないと絶縁)。それもこれも「基準」がこの作品になってしまったせいである。


―― 話を物語に戻そう。


秀逸な一幕として、絶世の美女「小町娘のレメディオス」の昇天エピソードがある。このシーンで唖然とし、マルケスのマジックリアリズムの世界にどっぷりとハマってしまった読者も非常に多いことだろう。この物語を描くために、作者のマルケスは南米中を歩き回り、様々な村々の民話や伝承を蒐集(しゅうしゅう)したという。それが結実した一例とも言える場面がこれ。


最も魅力的な登場人物は、やはりメルキアデスだ。

彼はブエンディア一族ではなく、ジプシーの予言者にして錬金術師である。

年に1度、3月にマコンドに訪れ、様々なものを村へともたらす。

老人の姿だった次の瞬間、いきなり10歳以上若返った顔になって見せたりし、村人たちを大いに驚かせる。これにはちゃんとしたトリックがあったので油断して読んでいたら、物語の途中からはその存在の概念を変えていく。正に現実と幻想との境界線を溶かすような存在だ。それが今、まさに目の前で行われている現実の出来事であるかのように読者を錯覚させるマルケスの筆致もえげつない。


挿絵(By みてみん)


そういえば今、ネトフリでシーズン・ドラマ形式で『百年の孤独』が映像化され、配信されている。「読者の想像力を超える映像など存在しない」とは思いながら、予告編だけ見てみたが、(読んだのは相当前の作品なのに)断片だけで全てのシーンが克明に思い出さされた。これはかなり面白いのかもしれない。ちなみに筆者は「ネトフリ未加入」である。ああ、悩ましい。


実はネトフリでの映像化もそうだが、発表から40年以上の時を経たこの2024年に、ようやく「文庫版」の刊行が日本でも成され、静かな『百年の孤独』ブームがまた来ている。


これまで検索エンジンで『百年の孤独』と検索すると、必ずといっていいほど、芋焼酎の百年の孤独が上位検索に出てきた(「ガルシア・マルケス」だと女性向けファッションブランドが出て来たり)。邦題の無断拝借なのか、ちゃんと許可を取っているのかは知らないが、この状況の是正のためにも、もっとみんなに知られていい作品。それがガルシア・マルケスの『百年の孤独』なのである。


ちなみに筆者が読んだ『百年の孤独』は、全面改訳新装版の古本。

全面改訳版という割に、おそらくはドレッドヘアのことを「怖い髪」と翻訳しているあたりに時代を感じさせる。

語りたかった物語のエピソードは数多くあるが、これは読んだ方が絶対に良い作品なので、あえてここでは書かない。


この記事を書きながら、メルキアデスを主人公としたスピンオフ作品とか作ったら面白いかもしれないな、とふと。


架空の町、マコンドはマルケスの他作品でも登場する。

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