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第十九話

「そう言えば、ここに来る途中でコレ預かってきたわよ」


 調子に乗ってるこの人を調教したいところだけれど、コレを渡して反応を見るのを楽しみにしていたのだから、先にこっちを堪能させて!


「ちょ……コレは……」


 私の収納空間魔法から取り出した砕けた水晶と、その備品補充申請書を見て、予想通りに、彼の額に青筋が立ったわね。


 あら、〝彼の額に青筋が立った〟を省略したら、〝彼のが立った〟となるわね。良いわね。良い感じに卑猥だわ。


「魔力測定器を使うなと、あれほど会議で共有化していたはずのなのに……あの魔法研究部の知識欲に塗れたクソ共が!」


「あら、貴方によろしくと彼らから渡されたけど……貴方、もしかして舐められてるんじゃないでしょうね?」


 本当は、懇切丁寧に謝られて〝事務局には、本当に迷惑をかけて、誠に申し訳ない!〟と言われているのと、直接ここへ謝罪に来るつもりだったみたいだけど、当然そこで私はその壊れた水晶を優しく取り上げたわけね。


 だって、怒らせた上で、彼を制圧するのが……グッとくるのだもの。


「舐められてるとか、舐められていないとかの問題ではないだろうが。これまでの記録からも、勇者として召喚された者達が常人離れしている魔力量を持っていることは、分かっていたんだぞ。無駄に最高級の魔力測定器を使う必要が、どこにあったと言うんだよ」


 単なる確認のためならば、私や彼が使用しても測定不能になる程度の測定器を使用したって良いものね。彼らもそれが分かっていたから、最初は召喚者全員をそちらで測定していたもの。


 でも、彼らの知的好奇心的には、最高級の魔力測定器を勇者達に使ってみたくてウズウズしていたのが、傍目からは丸わかりだったわ。


 だから耳元で、囁いてあげたの。


 〝次に勇者が召喚されのは、何千年後なんでしょうね?〟


 ふふふ……あひゃひゃひゃひゃ!!! 結果、最高級の水晶は砕け、この人を無駄に困らせる事ができたわ! 


 あぁ……困り、そして怒りながらも、水晶を好奇心に負け壊した連中の気持ちも分かってしまうから、私の前でしかそんな気持ちの発露ができないのでしょう? 知っているわ。知っているからこそ、そんな貴方が愛おしいのよ。


「だけれども、彼らは結果として最高級の魔力測定器を用いて勇者の魔力量が、すでに私達を超えていることを証明して見せたわ。この結果一つで、分かりやすく勇者がこの世界の希望たり得る存在だと、馬鹿な貴族達にも伝わりやすくなったんじゃないの?」


 実際は、魔力の開放訓練を始めた際には、その馬鹿げた魔力で誰であろうと、勇者の稀有さが伝わるでしょうから、実際は別にわざわざクソ高いこの水晶玉を使う必要性は、低いんだけど。


 そんな事、貴方も分かってるわよね。えぇ、知ってる。分かってる上で、私は言うのよ。


「その程度の些事で、ガタガタ言うなんて……貴方の器って、その程度?」


「そんな訳ないだろう。君が理解しているか、大袈裟に見せて確認しただけさ。何でもかんでも壊しても良いだなんて、騎士団の君は考えているかもしれないからね」


 私のことも、他の騎士同様に脳筋だと思っての発言だけれど、本当のは私は貴方が思っているほど脳筋ではないのよ。ただ、脳筋だと思っての煽りに乗ってあげることで、貴方を可愛がることができるので、そのふりをやめないだけ。


「そうよね、むしろ貴方ほどの男が、この事態になることを想定していないはずないものね」


 そんなわけない事は、貴方の瞳の揺らぎを見ればわかるわ。ほらほらほらほらぁ! 揺れ始めたわぁああ!!! かぁああわぃいぃいいいんだからぁああああ!!!


 私に、これ以上格好悪いところ見せたくないのよね!? だから、必死に歪みそうな顔を、瞳が潤むくらいに力を入れて耐えているのよね!? 


 健気だわ! かわいいわ! もっともっとイジメたいわぁあああ!!!!


「だから魔導具管理部に、この水晶を壊してしまったことを、勇者召喚の事務局長として、一応謝罪に行くのも、もちろん織り込み済みよね」


「え……? いや、それは俺じゃなくて、壊した張本人が」


「こうなる事も、計算通りだったのよね? 事務局長様?」


 貴方は、あの部署の部長が苦手なのよね。あそこの部長は、元々騎士団出身だから、力のないものを見下しがちの上に、騎士団から追い出されるくらいには、性格が悪くてねちっこいのよね。


 まぁ、これ見よがしに私が魔力を纏って殺気をこめて〝お願い〟したら、すぐにどうにかしてくれるのも、彼は知っている。


「俺が説明に行くより、君が言ったほうが、より簡単に済ます事が出来るだろう?」


「だから?」


「だから、君が言ったほうが良いよな?」


「……はぁ」


「……頼む」


 もう一声!


「……ふぅ」


「……お願いします」


 キタァああああああああああ!!!!!!! 〝頼む〟で頭下げながらの、上目遣いの〝お願いします〟!!!!!!!


 ねぇ! 知ってるのよね!? そんな顔したら、私がお願いを聞かないはずがないって、貴方知ってるのよね!?


 でなければ、そんな顔無理ぃいいいいい!!!!


 私以外にそれやったら、殺すわよぉおおおお!!!! その顔は、私だけのものなのだからぁあああああ!!!!!!!!!


「こうなることまで、ちゃんと考えておきなさいよね」


 こうなることまで計算通りなのぉおおおお!!! 私って天才ぃいいいいいい!!!!


「すまん……」


「これから騎士団の詰め所に行くところだったから、ついでに行ってあげるわよ」


「あぁ、任せたよ」


 あぁ、早く訓練場で誰かをボコらないと、身体の火照りが収まらないわ。


 ここは、本当に最高の職場ね。 


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