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第十八話

 無理、本当にもう無理。何コレ、仰け反り見下し目線がありがた過ぎてぇえええええ!!!


「その事については、結果としては良い方に転がった訳だから、これ以上言うことはないよ」


 これ以上は、俺が保たない。いろんな意味で、これ以上は果てる!


「問題は、勇者達四人以外の処遇だろう。君らが、一発かましてくれたおかげで、混乱状態だった彼らを、一先ず強さへの恐怖により縛りつけている状態な訳だが、彼らにも進むべき未来を示さないと、余計な事を考える者が出てこないとも限らない」


 俺のように特殊な訓練を積んでいなければ、仕事と己の欲望とを並行思考しながら、平然と佇むことは難しいだろう。


「余計な事というのは、国の乱れを招くということよね。そんなこと私達騎士団、いや、私がいる限りさせないわよ。それを心配していると事は、私の力を随分と過小評価しているわね。貴方に、しっかりと再評価してもらうためにも、調……訓練を受けておうかしらね」


 今、調教って言おうとした? いやいやいや、まさかそんな事はないだろうとは思うが、もし本当に調教なんてされた日には……


「……そんな暇は、ないと言っているだろう」


 あっぶねぇえええ!!! 調教を想像しただけで、意識がとんだぁああああ!!!


「とはいえ、勇者以外の異世界人達を無碍にする訳にも行かない。彼らの持つ異世界の知識や価値観は、必ずこの国に混乱を生じさせるものに違いないからな」


「四人の勇者以外は、単なる異世界人なのであれば洗脳系か隷属契約でも施してしまえば良いじゃない。神罰が下るのは、女神の使徒である勇者に対して、無理矢理支配しようとした時だけなのでしょう?」


 くっ、無理矢理支配という言葉の時だけ、目を鋭くするなんて、俺を殺しにきてるのか? 


「歴史から判断するにはその筈なんだが、勇者以外が召喚されたことが、これまでなかった為に、今回の様な場合にどうなるかが判断出来ないんだ。聖女殿と勇者達の話から、勇者以外の者達が〝女神の慈悲〟により命を救われた者である事は間違いないだろうが……」


「たとえ一般人と同じだとしても、女神の慈悲により救われた者を、強制的に魔法で従わせて良いのかどうか、誰も判断出来ないと言うことね」


 俺としては、君に魔法で強制的に隷属させられてみたいだなんて、君に伝えられたらどんなに幸せなことなんだろう。


「こればかりは、一か八かの賭けに出るわけには行かないからな。しかし、早急かつ穏便に、その上で恨みを買うことなく勇者達以外は、どこぞへと旅立ってもらいたいものだ」


「本音は?」


「勇者以外は、さっさと野垂れ死にしてほしい」


「まぁ、そうなるわよね。だけれども、いきなり放り出すのは無理ね。きっと、勇者四人がそれを許さないわよ。直感だけれども、そんな雰囲気のある子達に見えたもの。ちょっと聖女や神官達とのやりとりを見てただけだけど、経験上間違いないでしょうね」


 俺たち以外の者がいたら、こんな内容の話はまず出来ないだろう。二人とも、この事務局室を出たら、しっかりと外行きの仮面を被っているのだから。


 俺は、さらにもう一枚仮面を被っているのだが……ハァハァハァ


「勇者以外には、ある程度の自由度のある選択肢を自ら選ばせる。冒険者もしくは職を斡旋し市民権を与えるかの二択だな。勇者以外にも、最低限のこの世界の知識、戦闘技術を施し、決して無碍に扱ったわけではなく、自分の意思でこの国を出ていくか、この国の国民となるかを選ばせることで、神罰を回避する」


 君からの罰は、俺は決して回避しないことをここに誓おう。


「勇者達が他の転移者達を扇動して、騒ぎを起こす可能性を考えてる?」


「そうならない様に、上手く彼らを管理しないとならないのだが……」


 真剣な話をしている裏で、彼女に管理されている、否、飼育されている自分を妄想してしまう俺は、我ながら業が深い人間だとは思うが、それがまた人間という生き物なのだろう。


 知らんけど。


「そう言えば、貴方はあくまで裏方として勇者達と会ったりする事はしないつもり?」


「特に会わなければならない事案が発生すれば別だが、基本的に事務方としては、勇者達と仕事をするより、関係部署とのやり取りがほとんどなのは、これからも変わらんだろうな。何か、思うことでもあったのか?」


 だって、勇者達と直接仕事し始めたら、この部屋にラフラといる時間が間違いなく減る!


 これは、経験上間違いない。現場に俺みたいのが出張ると、なんやかんやと仕事を振られることになるからな。事務方の仕事は、当日までが主だったことなのだから、勇者が召喚されてしまえば、現場は担当部署が主となって動くべきだ。


 俺は、この部屋で何としてでも、ラフラにもう一度惚れ直してもらうべく、関係を修復しないといけないのだからぁあああ!!!


「いえ、それなら良いのよ。現場に事務方が出しゃばってくるほど、イラつくことはないから」


 ご馳走様ですぅううう!!! もし現場に来ようものなら〝分からせる〟と言わんばかりの鋭い視線に、俺の心が歓喜で震えているよぉおお!!!


 だがしかしだ、ここで満足していては勿体無い。


「まぁ、現場で対応出来ないような事があれば、事務方が出ていって何とかしてやるから、心配しなくても大丈夫だぞ」


「あぁ?」


 はい! おかわりありがとうございますぅううう!!! その重低音の凄みが、腹に響いて堪らんのですぅううう!!! ひやぁっほぉおおおお!!! 


 これでまた明日からも、俺は頑張れる!!!


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