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第十話

「そう言えば、勇者達の武具に使う素材だけど、全く間に合いそうにないわね」


「……は? えらく見切りが早いが、まだ勇者召喚まで半年以上あるんだぞ?」


 この間、勇者達が装備する予定の武具を造るのに必要な素材を、騎士団にも依頼していたが、ものの数日でこんな事を言われたら……言われたら? おやおやおや、まさかこれは、もしかして、おやおやおやおや?


「帝国が魔王の手に落ちたと言って過言ではない状況のせいなのか分からないけど、魔物の群が王都周辺においても確認されるようになったのよ。各地の領主達も冒険者ギルドに依頼している状況ね」


「だから軍の一般兵が扱う装備品が、ここ最近充実してきていたのか」


 この流れは、アレだな。間違いなく、二人で大物を仕留めにいく流れだよな!?


「えぇ、その代わりに古代種討伐に、騎士団の部隊を割く余裕がない状況なの」


「であれば、事務局が出張らないといけないということだな……じゃあ、行くか?」


「貴方と?」


「そうだな」


「二人で?」


「そうなるな」


「古代種討伐を?」


「二人なら、何とかなるだろ」


「……世界の為だものね。ただし、返り討ちに遭いましたでは済まされないのだから、今の貴方の腕を確認させてもらうわよ」


 キタぁああああああ!!! 確認即ち実践形式での訓練! 合法的にラフラに、しかも自然に違和感なく痛ぶって貰えるぅうう! これぞ神のお導きぃいいいい!!!!


「あくまで俺は文官なのだから、それ相応の手合わせで頼むぞ。お前に本気で来られたら、仕事に支障が出る」


 わかってるよな? 押すな押すなは、押せってことだ! 


「甘やかすつもりはないわ。下手に優しくして、本番で大怪我でもされたら、それこそ仕事どころじゃないもの」


 その通りでございますぅうううう! 本気の君を、俺は受け止めて興奮したいのだからぁあああ!!!


「それで、討伐時期はいつになりそうなんだ? それに合わせて、俺の訓練も予定に組み込むことにするから、教えてくれ」


「狙う古代種は、ガンクツタツの予定よ。だから、雪がちらつくぐらいに動きが鈍ったところであれば、二人でも狩れるでしょう」


 古代種地竜ガンクツタツは、地属性の素材が獲れる巨大な岩の様な身体を持つ竜だが、相当に鱗が硬かった筈だが……


「なるほど。俺の〝通撃(つうげき)〟で、内臓を破壊して仕留めるということか」


「えぇ、貴方のそれ(通撃)であれば、鱗も無駄に傷付けずに済むわ。冬眠前であれば、完全に岩盤と一体化していない状態は、動きも鈍いし、全力で溜めた一撃を当てられるでしょ」


 俺が唯一仕様出来る武技〝通撃〟は、魔法の才能が乏しい者でも扱える技であり、幼少の頃に師から伝授されたものだ。といえば、聞こえが良いが、村の長老が俺の様に魔法適正が低い者の護身用として、全員に教えているありふれた武技だ。


 俺の場合は、体質と意地と努力で、溜めの時間さえ取れれば、そこそこの威力を相手の硬さに関係なく内部に叩き込める。だから、動きの鈍い硬さだけが取り柄のような獲物に対してなら、ラフラの力になれるだろう。


「今回は、私が貴方の補助と護るから、貴方が矛として動いて頂戴ね。しっかり狩れれば、勇者達の武具は問題なく創ることが出来るでしょう」


「わかった。お前が、専属で補助してくれるなら、何とかなりそうだ」


 防御力を無視出来る威力貫通の武技は、非常に有能であるが、ほぼ全てのそれ系の武技は、威力が低い。そして武器に、その特性を付与することが出来ない。結果として、素手のみでしか使えない。だからこそ、あくまで〝護身用の技〟なのだ。


 しかも、俺の家系の体質が加わると、単独で戦えば間違いなく俺は死ぬだろう。必ず今回のように、俺を護る者が必要なる。そんな足手まといにしかならない男が、騎士団や軍、そして冒険者などに成れる訳がなかった。


「そうであれば、早い方が良いわね。明日にでも訓練を始めて、来週にでも狩りにいきま……」


「失礼する!」


 本当に失礼な奴は誰だ! 今、所謂あれだ! 二人っきりで逢瀬を楽しみ的なお誘いを受けている最中と言って、過言ではなかったんだぞぉおおおお!!!


「参謀官のベストラさん、扉をそんなに強く開けられては、壊れてしま……実際、壊れてますね」


「すまない! 修理費用を、参謀部まで頼む!」


 事務局室の温度が、間違いなく上がったな。熱い、と言うより暑苦しいんだよなぁ。でも、物凄く美人で、流れる金髪に紙に碧眼の瞳は、参謀部という軍の中枢にありながらも軍の広告塔として機能するだけの魅力を振りまくんだよなぁ。


「そんなことよりベストラ、軍の者が何用でしょうか?」


 おぉおぉ……氷の息吹でも吐く竜種の如き冷たい視線……本当にこの二人は、と言うよりラフラはベストラが嫌いだな、昔から。


「古代種地竜ガンクツタツを、私率いる資材調達部隊により撃破! クラウトが必要としていた勇者装備の素材を軍が確保した為、必要な分はこちらから提供しよう!」


「……え?」


 はぁああぁあああああ!? 嘘だろぉおおおおおおおお!? 二人っきりのアレコレはぁぁあああ!?



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