(1)
『毎度、同じ質問で何だが……』
本当に自分で訊いているのに何だが、私は、この体の本来の持ち主である千夏に、数日前と同じ質問をせざるを得なかった。
『だから何?』
『何で、こんな格好をする必要が有る?』
『演出だよ……。それより、今回は祝詞をトチんないでね』
どうやら、今、私が部下達に着替えさせられている最中の服は「神道」とやらの「巫女」の装束らしい。
『あんなもの唱えなくても、力は発動出来る』
『だから、演出だって』
『その演出とやらが無くても、効き目に違いは無い』
『「客」は悪霊や霊力が「観える」訳じゃないから、効果が有るか「客」には判んないよ。でも、雰囲気出したら、何となく効いてるように思ってしまうもんだよ』
「姐さん。車が来ました」
『ちょっと交代してくれる?』
『わかった』
私は肉体の支配権を一時的に、本来の持ち主である千夏に渡した。
「はい、今日、あたし達と一緒に行く人」
深沢大和・笠遥の2人が手を上げる。
もう1人、一緒に行く予定の中島亮二は、今、表に居る。
「毎回言ってるけど、『お客さん』の前では……あたし……と言うかあたし達の事は、あくまで『姫巫女様』って呼ぶように。『姐さん』じゃなくてね。判った?」
「はぁ〜い」
「うぃ〜っす」
『これって、「悪の組織の首領」の仕事なのか?』
『ウチには「特異能力者」は……あんただけしか居ないでしょ。あんたは首領であると同時に稼ぎ頭なの』
本日の「仕事」は、「魔法使い」がほとんど居ない「友好組織」の幹部が何者かに「呪い」をかけられているらしいので、その調査と……可能なら解呪だ。
夜には「ライブハウス」とやらになる「組織」の本拠地の玄関の扉を開け……。
『なあ、そろそろ……』
『お金たまったらね』
そこに停車していたのは……部下の中島が運転しているレンタカーだった。