黒猫は横切らない
楽しんで頂ければ幸いです!
ある所にその顔が極悪過ぎて目を合わせるだけでみなが逃げ出す中学2年生に見えない少年は戦慄していた。
眼の前に居る…黒猫が…!
遠くからでも分かるつややかな黒色の猫。
“黒猫が前を横切ると不幸な事が起こる“
そんなジンクスが頭に浮かび少年は固まっていた。
はたから見れば少年が猫をにらみつけ、今にも食うんじゃないか?と勘違いする光景だが、びびっているのは少年である。
そ、それ以上進まないで〜!
拳を強く握りしめ猫を見つめる少年。
そんな少年を猫もじっと見つめる。
張り詰めた空気が5秒続いた後、先に動いたのは…黒猫だ。
あ、あっ…あ~あーあ?
言葉にならない叫びを上げる少年だったが、次に起こったことに困惑していた。
何と猫は横切って居なくなるどころか、真っ直ぐに少年の足にすり寄ってきたのだ!
目を丸くする少年。(周りから見れば、その光景を見た者は呪われる!と思うかもしれない)
そんな少年を気にせず、好意を寄せる黒猫。
やっとの思いで首をギギギと下に向け、ゆっくりと口を開ける。
「…うち来る?」
「ニャーオ」
少年の言葉に甘い声で答える黒猫。
そう、黒猫は少年に不幸でなく癒やしを与えたのだった。
後日談として…
「まさかにーやんが、猫を拾ってくるとはね〜」
少年と似ても似つかない小学校4年生の妹は、黒猫を眺めながら驚く。
「ねぇ、名前決めた〜?」
膝に黒猫を置き優しく撫でる少年は少し考えた後、
「…黒いからスミは?」
「それないわ〜」
妹にバッサリ切られ落ち込んだ。
「もっとクールないの〜」
「クール…じゃあスミ…ス…、スミスは?」
目を輝かせ妹を見つめる少年。
「…」
妹は息を一つ吐き、眉を上げる。
右手を少年に向かって突き出し…
親指を立てた。
「いいね〜」
「ニャーン」
ちなみにスミスは女の子だが、そんなのは3人に関係ない話である。
読んで頂きありがとうございました!