表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/148

76,リミット666


 まさに山と言うべき巨体に、無数の紅い瞳、蠢く機械触手。


 異形――魔神イケメン・インフェルノβ。


「ウフフフ! さぁ、マルクトハンサムを見事撃破したキミたちにエクストラ・ゲームをプレゼントだぁ! 下界の皆さまより一足お先に魔神イケメン・インフェルノを体験したまえぇ! ご意見ご感想をフィードバックしておくれぇ!!」


 ナイアルラトの不愉快な嗤い声に呼応して、魔神イケメン・インフェルノβが動き出す。

 ゆったりとした動きに見えるが……遠近感の問題じゃな。あれ、実際はかなりの速度――つまりかなりの運動エネルギーを纏っておるぞ!


「まずは華麗な魔神タップ・ダンスをお披露目しようじゃあないかぁ」

「タップダンスって……あんな大きなの、しかも無数の触手足でやられたら――」


 フレアが青ざめて言い切る前に、その地獄は始まった。


 本当に、魔神イケメン・インフェルノβはただタップで軽快なリズムを刻んでおるだけ。

 じゃが、ワシらと魔神イケメン・インフェルノβの間にはネズミとゾウ以上の体格差がある。


 圧倒的運動エネルギーを含有した巨大な触手が、何本も、びたんびたんとのたうち回る!


 隕石の土砂降りとかそう言う次元の破壊規模じゃなこれ!?


 どこへ躱そうが逃れられるとも思えぬ。

 迎え撃つしかあるまい!


「グリンピース!」

『応だぜ!!』


 イケメン泥洹により強化されたワシの全筋力とグリンピースの全魔力、そしてプロメテスから受け取ったと言う全神の火。それらをすべて、ヴィジター・ファムートへと流し込む!


「フルパワー・アトラスキュウリ!!」


 翡翠の炎を纏う極太の蔦を無数に生み出し対抗する――しかし、やはり相手がデカ過ぎる!

 ワシらが注ぎ込めるだけのエネルギーを注ぎ込んで巨大化させたと言うのに、サイズ感で言えば普通に負けておる!


 幸いなのはナイアルラトの性分か、触手の動きが雑である事!

 精密な蔦捌きで絡め取って、どうにか拘束を……!


「ウフフフ! 筋肉自慢のくせに細かしい事をしてくるなぁ! ギャップ萌え狙いかなぁ、あざとい筋肉だなぁ!!」

「ぐぬぬ……!」


 あの不愉快な減らず口に「やかましい!」と一言でも言ってやりたい所じゃが……。

 蔦捌きに集中せねば一瞬で圧し負けねん!

 こちらにはプロメテスやダンダリィにマルクトハンサム……まともに回避行動を取れぬ状態の者がいるのじゃ、何としても触手どもを抑え込まねば……!


 くッ……しかしこれは……まずい、突破され――


「きなさい、勇者カリバー!」


 この白銀の煌めきは、勇者パワー!


「セバセルジュ! ちょっとそこで歯ぁ食いしばりなさい!」

「メェ。嫌な予感がいたしますが仰せのメェメェに!」


 白銀の剣を振り上げた勇者が、連れ立っておった羊っぽい執事イケメンのもこもこ頭を剣の腹で殴った!

 何故にいきなりバイオレンス!? と驚いたが、違う。勇者パワーを直接注入したのか!


 勇者パワーを大量に注ぎ込まれた羊っぽい執事イケメンのもこもこ頭は奇跡的毛根大爆発。

 ボボッボボボーボッッッボーボボッッボボボボボッ!! とあぶくが絶え間なく爆ぜるような音を立てて、とんでもない量の羊毛が辺りを埋め尽くす!


 おお、すごい……元の羊毛的防御力が高いのもあるじゃろうが、勇者パワーの奇跡を帯びている事もあって、あの獰猛な巨大触手の乱舞を防いでくれておる!


「ウフフフ! ああ、魔神のリソースに丁度良いと思って招いたけど……アジな真似をしてくれるじゃあないかぁ! ユリーシアちゃぁん!」

「そのドブみたいな声でアタシの名前を呼ぶな、この変態ゲロ神! まさかあんたが諸悪の根源だったなんて……アタシにゲームブックを渡して魔王封印を勧めたのも、このためだったって訳ね!」


 勇者がワシをゲームに封印したのも、あやつがそもそも仕組んだ事じゃったのか……!


 それはともかく、


「よくやってくれた勇者! 今の内に体勢を立て直そう!」


 まず戦えぬ者の避難、それから作戦会議じゃ!

 何の手立てもなくあんな巨大な敵と戦えぬ!


「ウフフフ! 体勢を立て直すぅ? 随分と余裕だねぇ……少し考えてみなよぉ、万が一、億が一、ここで私が倒れ、イケメン・ニルヴァーナの支配が解かれたら、進行中のイケメン・インフェルノ計画はパァァアアなんだよぉ……? だのに私が直接、こうして相手をしている……それがどういう意味かもわからないのかぁぁい? かまととなのかなぁ、可愛いなぁ!!」

「ッ……!」


 指摘されて、怖気が走る。

 まさか……!


「そうだぁ……イケメン・インフェルノ計画はもう秒読み段階なんだよぉ!!」

「ッ……!!」

「ウフフフウハハハハハハハハハ!! 良ぃぃぃ表情ぉ!! もっと良い表情をしてもらえるよう、具体的に教えてあげよぉ! 残り時間は七分六秒……つまり六分六六秒でイケメンやプレイヤーも含む結界ゲーム内に在る全オブジェクトのエネルギー変換が始まるぅ!! 変換完了はそこからそれなりに時間はかかるけどねぇ……エネルギー変換が始まってしまえば、私が倒れようとも関係無くイケバナ終了確定のおしらせだよぉぉぉ!?」


 つまり……エネルギー変換とやらが始まる前に、あやつをシバいて野望を打ち砕く必要があるのか!?

 そして、その制限時間は残り七分弱……!


 しかもあの鬱陶しい神がイケメン・インフェルノβを破壊したらおとなしくなるとも思えぬ。

 イケメン・インフェルノβを止め、その後にナイアルラトを無力化……それらをあと七分弱で完了できねば――イケバナが滅ぶ……!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ