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50,全力合体! ……合体?


「さぁ、トビダンジョウ、今こそ俺たちの【合体奥義】を披露する時だ!!」

「合点承知でござるニン!!」


 クゼンヴォウの声に応えたトビダンジョウが、凄まじい速さで指と指を絡ませて何やら……魔力を練っておるのか?

 そう言えば、東洋のニンジャーは【印】なるものを使って術式を行使すると聞く……あれがそれか!


「俺も準備するぜ……もちろん全力でなァァァ!!」


 豪快な咆哮に合わせて、クゼンヴォウの巨体が水色に発光。次の瞬間にはキャパーナの蛇龍形態よりひと周り大きい蛇龍へと変貌!

 まぁキャパーナと同じ血族なのじゃから、同じように龍の血を引いておるのも当然か。


「全力で準備完了だァ!! やれェェェ!!」

「ござるニン!」


 合図を受けたトビダンジョウがマスクをずらし、その口を露わにする。

 特に口周りに不可思議な点は見受けられぬが……一体なにをする気じゃ?


「いざや御照覧……カトゥー流忍法【呑龍どんりゅー】!!」


 なッ……蛇龍に変貌したクゼンヴォウが――トビダンジョウの口の中に吸い込まれていく!?

 するすると麺類か何かのように、水色に輝く鱗に覆われた巨体が……驚きの声を上げる間も無く、トビダンジョウの小さな体に呑み込まれてしまった!?


「あ、アリスちゃん……今の見た!?」

「うむ……い、一体、何が起きて……」

「合体奥義と、全力で言っただろうが!!」「で、ござるニン!!」


 トビダンジョウの口から放たれたのは、呑まれて消えたはずのクゼンヴォウの声。異変はそれだけではない。トビダンジョウの髪や瞳、ぴちぴちのタイツやマフラーの色が水色に変化し、その皮膚のそこかしこに水色の鱗が! 爪や牙も龍を思わせる鋭さに変貌しておる!


「拙者の秘技【呑龍】は龍系生物を取り込み、その能力をこの身に発現するというものでござるニン」「つまり俺を取り込ませれば!! 俺の力を丸々使えるトビダンジョウが全力で完成するって訳だァァ!!」


 なるほど、美美美美美美(ヴィ・シックスメン)に名を連ねるイケメン二人分のパワーを内包したイケメンが爆誕…………ん?


「それは、合体する必要があるのか……?」


 話を聞いておる限りじゃと、別に合体したら二人分以上のパワーが溢れ出すとかではないのじゃろう?

 結局、貴様らが二人別々に戦うのとあまり変わらぬ気がするのじゃが……?


「合体は理屈じゃあねぇだろうが!!」「無粋なツッコミはやめるでござるニン!!」

「え、あ、おう……すまぬ」

「いやー……アリスちゃんは間違ってない気がするけどに?」

「ふむ……なるほど、全力で理解しましたわ!!」


 キャパーナはそう言うと何を思ったか、頭をブルルルルッと小刻みに振るった。まるで水浴び後の犬じゃな。当然、そこに乗っておったベジタロウは振り落とされてしまう。


「ござるぐぇぇッ!? い、いきなり何をするのでござるかキャパーナ殿!?」

「決まっているでしょう? わたくしたちも合体するのですわ!!」

「……おい、幼女と美女。拙者はついさっきまで意識が朦朧としていたのでよくわからぬのでござるが、何がどうしてそう言う話の流れに?」

「すまぬ。意識はハッキリしておったのじゃが、サッパリわからん」

「ボクも同じく」

「把握したでござる。奇行いつものでござるか。であればもう駄目でござるな」


 ああ、ベジタロウがすべてを悟った穏やかな顔をしておる。

 キャパーナの奇行は止めようが無いと、諦観の極致に至っておる感じじゃな。


「御兄様がわたくしを全力で倒すべく東洋の戦士と合体した!! であればわたくしもその全力に対抗し、東洋の戦士と合体するのが全力の流れ!!」


 そうじゃろうか……?

 呆れた目を向けるワシに構わず、キャパーナは鼻息荒く続ける。


「あつらえ向きに貴方は東洋のサムライかつ、あちらのニンジャーと同じく語尾にござる的なものがついている!! これは合体するしかない流れを全力で感じますわァ!!」

「もう好きにすれば良いと思うでござる」

「その意気や全力で好し!!」

「ん? でも合体ってどうするつもりでござ――」


 次の瞬間、キャパーナが大口を開けてベジタロウに突進。そしてバクリと口の中へ。


 つまり、食った。


「ベジタロウが食われた!?」

「違いますわァァ!! 合体! したのですわァ!! 全力でェ!!」

「嘘吐け! 貴様の見た目は何も変わっておらぬではないか!!」

「全力とは心でしてよ!!」

「がはははは!! さすがは俺の妹だぜェ!!」「よくわからぬでござるニンが、まぁ突っ込んでも理解できる回答は期待できないので特に言う事は無いでござるニン! それでは、いざ!!」


 クゼンヴォウ色に染まったトビダンジョウが腰を落とし、臨戦態勢を取る。

 応じて、ベジタロウを捕食したキャパーナも周囲に水の魔術と筋力を展開し始めた。


「……何か、ボクたちを置き去りにして戦い始める気マンマンだね。どうするアリスちゃん?」

「とりあえず、どちらも話を聞くタイプではないのはわかった!!」


 手荒なのは嫌じゃが、もうこやつらには止む無し。


「とにかくまずはキャパーナを止めるぞ! ベジタロウが消化される前に吐き出させる!!」

「オホホホ!! 全力の三つ巴ですわねぇ!!」

「がははは!! 全力イケメンバトルロイヤルって奴だなァァ!!」「ござるニン」

「黙れ全力兄妹!!」


 一刻も早く、ベジタロウをぺっぺさせねば……!!

☆★イケメン豆知識★☆


惡麗慈アクレイジの双龍◆

アクレイジ兄妹、ツイン・ランペイジとも。

兄はクゼンヴォウ・アクレイジ。

妹はキャパーナ・アクレイジ。


数年前のある日、イケメン統治がイケバナ全域に通達された際。

至高イケメン・マルクトハンサムによるイケメン大徴収を受け、クゼンヴォウは家名を捨てイケメンキャッスルへ。以来、全力で生き別れ状態になっていた。


基本的に互いに互いを全力でリスペクトしているため兄妹仲は良好だが、家訓的に全力を全力で重んじているので軽い兄妹喧嘩でも規模がシャレにならない。キャパーナが取っておいたキュウリの全力プリンをクゼンヴォウが勝手に全力で食べた一件を巡る全力の兄妹喧嘩では、屋敷が跡形も無く全力で吹き飛んだ。

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