表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/148

49,その兄妹は全力である。


 気絶したリン・シェンヴの傷を癒した後、筋力で強化した蔦で縛り上げて木に吊るす。

 クンフゥは強力じゃが、こやつ自身の筋力は普通に強い程度。きっちり手足を縛ってしまえばこれで充分拘束できるじゃろう。


「強敵だったけど何とか勝てたね、アリスちゃん」

「うむ。フレアもよくやってくれた。ありがとう」


 筋力ですっかり完治した右手を挙げて、フレアが差し出した手にタッチで応える。


「さて……ひとまずじゃが、こやつが来た方向に真っ直ぐ進んでみようか」

「うん、そうだね。ボクもそれが良いと思う」


 リン・シェンヴはイケメン・キャッスルから来たと言っておった。

 ダンダリィの発言などと照らし合わせて、イケメンカイザーもおそらくそこにおる。


 この世界におけるワシの目的を達成する鍵を握る存在が、そう遠くない場所に。


 グリンピースたちとの合流を優先したい所ではあるが――あてが無いからのう。

 じゃが、グリンピースほど聡い男ならばワシがイケメンカイザーの元を目指すと読んで、イケメンキャッスルを目指してくれる事も期待できる。


 要するに、今はひたすら進むが吉!

 フレアも賛同しておくれておるしな!


「行くぞ、フレア!」

「えいえいおーしゃん!!」

「ちょォォォっと待ちなァァ!!」

「ぬ!?」


 ワシらの意気込みに水を差すように、空から荒々しいイケボが!

 真上から――まずい、何かが敵意を向けて降ってくる!


「緊急回避!」

「助かる!」


 フレアがワシを小脇に抱えて横へ飛んでくれた。

 直後さっきまでワシらがいた地点に、獰猛な塊が落下! 衝撃波と共に大量の土煙を巻き上げる。


「がははははは、避けられたァ!! まぁそらそうだァ!! 全力で叫んだのは失敗だったなァおォォォい!! ミスったミスったァァ!! がはははははははははははははは!!」


 豪快な笑い声の衝撃だけで、舞い上がっていた土煙が吹き飛ぶ。

 そこに立っておったのは笑い声の印象通り、大柄なイケメン。ごりごりに筋肉質じゃな。悪くない。

 鋭い犬歯を剥き出しにして笑うワイルド系の筋肉。袖が破れた水色のジャケットもそれらしい。水色の髪はオールバックヘアにまとめてあるが、勢い任せにセットしたらしく四方八方に毛が跳ねておる。


「ようようよォォォう!! 俺が誰か気になるだろうから全力で教えたらァ!!」

「うむ、頼む」

「全力承知ィ!! 俺はァ美美美美美美(ヴィ・シックスメン)が第二席ィ!! クゼンヴォウだァァ!!」


 木々がざわめき、木の葉が舞い散るほど覇気に満ちた自己紹介……美美美美美美(ヴィ・シックスメン)、やはり強者ぞろいか!!


「がはははは!! 俺がここに現れた理由はわかるよな!? なァァ勝負しようぜ勝負!! 全力勝負、つまりイケメンバトルだ!! 俺がテメェらを全力でブン殴りに行くから!! テメェらは全力でブン殴り返して来い!! それがイケメンバトルだァァァァ!!」

「元気じゃな……ん? この感じ、どこかで……」


 水色で、全力全力と騒がしい……あ、やっぱやめよう。思い出さない方が良い気がし――


「オォォオオオッホッホッホッホッホッホホホホホホホ!!!!!!」


 ……ウワサをせずとも影、か。

 水色の光線――否、光線と見紛うほどのスピードで、水色の蛇龍がクゼンヴォウとやらに突っ込んだ。

 この光景もデジャヴじゃな。


「うぉおおおおおおおおおお!?!?!?!?!?」


 水色の蛇龍――キャパーナ・アクレイジのドラゴン形態による突進を受けて、クゼンヴォウとやらが遥か遠くへと吹っ飛ばされてしまった。ああ、イケメンって遠くまで吹っ飛ぶと星になるんじゃな。


「オホホホホ!! 呼ばれた気がしたので颯爽と復活してきましたわァ!!」


 呼んでない。


「キャパーナ殿……お願いでござるからもう少し令嬢らしい落ち着きを……」


 キャパーナの頭の鱗にしがみついておるベジタロウはまたしてもグロッキー。

 ……貴様はもうキャパーナに乗るのやめた方が良いのでは?


「がはははははは!! どこの全力かと思えば、全力で生き別れた妹じゃあねぇかァァァァ!!」


 ぬおッ、耳が痛いほどの大声と共にクゼンヴォウがまた降って来た。復帰が速いな。

 そしてそうか。薄らと何らかの繋がりは察しておったが、血縁か貴様ら。


「誰かと思えば御兄様!! ゴキゲン麗しゅう!! お互い全力に陰りは無さそうですわねぇぇぇぇ!!」

「がはははは!! そっちこそ良い全力してんじゃあねぇか!! 相変わらず鱗がキレッキレ、自慢の妹だぜぇ!!」


 正直うっさいのう、この兄妹。


「さぁぁぁて、兄より優れた妹ォ! ここで再会できたからには全力の感動――つまり互いに全力をぶつけ合うしかないって事だよなァァ!! 遂に兄の偉大さを教える時が来たんだよなァおォォい!!」


 その猛りに呼応してクゼンヴォウの筋圧が増す。

 ただでさえ大きな体が、筋肉膨張で更にひと回り巨大化しおった……!

 森がざわめくほどの筋圧……やはり兄妹、あの妹からして兄も手練れか!


「オホホホ! イケメンカイザーにどれほど強化してもらったか存じ上げませんが――良いでしょう、全力で受けて立ちますわァ!!」

「カイザーから受けた強化だけじゃあねぇ!! 俺はベスト全力パートナーを見つけたんだァァ!!」

「それはなんと――全力ですわね!!」

「つぅ訳で全力で紹介するぜェェ!!」


 クゼンヴォウが全力で指を鳴らす。すると先ほどあやつの声で辺りに散乱した木の葉が逆巻く風に煽られ舞い上がった。明らかに自然の風ではない、何者かの術!


 やがて木の葉の群れは小規模な竜巻となり、勢いよく飛散。その跡地には、和装……にデザインが似ておるがぴちぴちタイツのような赤装束に、長いマフラーを巻いた小柄細身のイケメンが現れた。和装タイツのタートルネックと一体化したマスクで鼻先まで覆っておるのが珍奇じゃな。


「ふっふっふ、呼ばれて参上――拙者、美美美美美美(ヴィ・シックスメン)において第四の席次を与えられし乱破らっぱ者、トビダンジョウでござるニン!!」

「らっぱ……?」

「あ、西の方々には【ニンジャー】と言った方が伝わるでござるニン?」


 ニンジャー……確か東洋諸島連合国における諜報や暗殺をこなす者たちの総称じゃったか。

 とりあえず語尾が正気とは思えぬ系のイケメンじゃな。


「御兄様の同僚……徒党を組む事を覚えた、と言う事で?」

「そんなぬるい話じゃあないぞ妹ォ!! 見せてやるぞ……俺たちの全力、【合体奥義】をなァァ!!」

「合体奥義……じゃと!?」


 美美美美美美(ヴィ・シックスメン)、あのリン・シェンヴと同格の二人が組んで放つ奥義……一体、どんな全力が……!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ