表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/148

43,セクシーと言う概念


「ひとまずセンスのある作戦説明タイムを設けるべく――イリュージョンッ!!」


 高らかな宣言と共に、何を思ったかアダムがマントをぶわさぁ! と勢い良く翻した。

 マントがはらりとワシとフレアの頭上を過ぎ去ったと同時。


「……めけ?」


 ワシらを追って来ておったメケメケが間抜けな声を上げ、止まった。まるで標的を見失った猟犬のように辺りをキョロキョロしながら鼻をスンスン鳴らしておる。


隠遁ステルス・イリュージョン! 五感、および第六感を用いても今の私たちを補足する事は不可能!」

「おお、すごいのう!」

「さすがは怪盗だね!」


 フレアはひと安心だにゃ、と頷いて止まり、ゆっくりとワシを下ろした。


「そしていざ、センス溢れる作戦説明タイム! まず大前提の共有として――何故、彼女があのような姿になってしまったかは御存知かな?」

「あのような姿……と言う事は、元は違うのじゃな」


 確かに、キャパーナも戦闘用の蛇龍形態と令嬢形態では随分違うしな。


「ボク知ってるよ。元は可愛らしい少女だったんだけど……兵器運用される中、膨大な戦闘学習を繰り返す過程で禁断の呪術とかも学習しちゃって、肉体が異形化しちゃったんだよね?」

「センスのある完璧な解答だ!」


 よろしい! とステッキの先端で勢い良く地面を突き、アダムが続ける。


「その過程で、彼女の学習能力は歪んだ。バグを起こしたと言っても良い! 彼女の瞬間学習性は戦闘行為に特化し、逆に『戦闘行為以外の未知なる体験』は学習・適応までに著しいラグが発生――即ち大きな隙が生ずるようになったのだ!!」

「なるほど、その隙を突くのじゃな?」

「グッドセンス! 彼女が処理落ちしている間に、アリス嬢はその筋力で彼女をがっちり保定していただきたい!! 特に首回り、顔を動かせないように!! そしたら私が彼女を攻略する詰めの一手を打つ!!」

「心得た」


 もしもその一回で決められなければ、ワシの筋力を学習され二度とメケメケにはワシの筋力が通じなくなる――それはアダムも御存知じゃろう。つまり、メケメケの動きをガッチリ封じてしまえば確実な勝機があると言う事じゃろう。


「ボクはどうすれば良いの?」

「派手な爆撃で彼女の眼をひいて欲しい。彼女は基本的に触覚から学習するが――強烈な光感を覚えた場合のみ、視覚学習に切り替える習性があるのだ! 今回、彼女を処理落ちさせるために用意した『戦闘行為以外の未知なる体験』は視覚に訴えかける必要がある!! だから彼女に視覚学習機能を使わせるため、派手な閃光を起こして欲しい!!」

「派手な爆撃、ボク向きの仕事だね! おけまるちーず!」


 整理すると――まずフレアが爆撃の閃光で、メケメケが視覚学習機能を使うように誘導する。その視線の先にアダムがメケメケの脳が処理落ちしてしまうような『未知なる体験』を用意。そして隙ができたメケメケをワシが筋力で拘束し、その後はアダムがメケメケを攻略する詰めの一手を打つ……と。


「で、その重要な『未知なる体験』と、メケメケを攻略する『詰めの一手』とは?」

「彼女に初めての体験を与えるのは、こちらの男だ」


 そう言って、アダムはシルクハットを取ってくるりと返す。そして、まるで手品師がハトを出す時のように、ハットの口をトントンとステッキで叩くと――


「セクシーコールを感じて!!」


 ハットの中からにゅるりとヘビのように飛び出してきたのは、局所を鱗で隠しただけのほぼ全裸イケメン。確か、ゴールドさんの手下である課金三獣士のビギナエルじゃったか……どうやら、イケメン・スカイサンクチュアリに引き上げられる際に回収しておったようじゃ。


「やぁ、セクシーさは余り感じないがおもしろそうな幼女。再会セクシーだね」

「あ、ああ、うむ……」


 こう言うのは悪いが……初めて見た時からちょっと苦手なタイプじゃ。


「彼女は兵器として、セクシーと言う概念とは無縁の生涯を歩んできた。そこにこの男の強烈なセクシーをぶつける事で処理落ちは必至と言う寸法だ!!」


 ……それは処理落ちと言うより、ドン引きと言うのでは?


「事情はよくわからないがセクシーを求められているのならば応えよう。世界セクシー協定および全宇宙セクシー憲法にもそう定められているからね。法令順守もまたセクシー!!」


 ビギナエルが意味不明な発言と共にムキッとサイドチェスト。

 うむ、相変わらず筋肉は悪くないのじゃが……服……。


「そして、彼女を攻略する詰めの一手だが、彼女がああなったのは禁断の呪術を学習したが故。古今東西、呪いを解く術は決まっている。それは――」



   ◆



 未だに顔キョロキョロ鼻スンスンを繰り返しておるメケメケ。

 その正面にフレアとビギナエル。背後にワシ。そして頭上の木の枝の上にアダムが配置に付いた。


「――それでは、打ち合わせ通りに!」

「うむ!」

「りょ!」

「セクシー!」


 アダムがぶわさぁッ!! とマントを翻した。

 それを合図にステルス・イリュージョンとやらが解除されたのじゃろう。


 メケメケがキョロキョロをやめた!


「それじゃあ、いっく――」


 打ち合わせ通りフレアが爆撃を放とうとした、その時、


「めっけぽぉん」


 メケメケは「見っけ♪」と言わんばかり、陽気に鳴いて――その異形の両手を思い切り、振り上げた。


「「「えッ」」」


 ズッパァン!! と言う景気の良い破壊音に混じって「ナンセンスッ!!」と言う短い悲鳴が聞こえた。

 粉々になった木の枝と共に、ボロカスになった白眼アダムが落下する。


「……ちょ、アダムゥッ!?」


 一番の重要人物が、一番最初に逝ったーッ!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ