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31,死にさらせ、黄金怨霊ゴルドーン!!


「お、おのれ……舐めないでいただきたいですよ、ダーゼット卿、フレア様!」


 取り繕った笑みで叫び、ゴールドさんが手を叩き鳴らす。

 黄金の輝きと共に彼の目の前に出現したのは、緑色の一升瓶。それは課金アイテム【ヤシウォッカの美酒】! 一滴でも口に含めば――否、口に限らず粘膜に浸透してしまえば! どんな上級イケメンでも即卒倒してしまう拘束アイテム!(プレイヤーにも有効)

 ちなみにかのキャパーナ・アクレイジを弱体化させる事ができる唯一の特効アイテムでもある!!


 ゴールドさんはその魔酒が詰まった瓶をグリンフィースとフレアの頭上へ放った。そして即座、懐から取り出した小型ピストルで瓶を撃ち抜く!


 見た目は一升瓶、されど中には風呂桶数十を満たせるほどの酒が入っていた!

 一滴でも粘膜に触れればアウトの酒が、雨の如く降る!!


 ――だが、どれほど凶悪な効果を持っていたとしても、所詮は水。


 フレアが頭上へ軽く放った強烈爆撃により、魔酒の雨は一瞬で蒸発。

 その成分を含んだ蒸気も爆風に巻かれて空高くに散る。


「お……ぉおおおのれぇ!!」


 ゴールドさんはやけっぱちに引き金を引く!

 だが無駄ァ! 課金アイテムのハイパー小型ピストルと言えど、グリンフィースが生み出す植物の葉は貫けない!


「ぐぬ……!」

「年貢って奴の納め時だぜ、成金妖精」

「その様子だと……お得意の課金アイテムも、イケメンカイザーのせいで制限があるみたいだね」


 そもそも、強烈な課金アイテムをすべて・無制限に使えるのであれば、プレイヤーを洗脳して手駒にしようなどとは考えまい。イケメンカイザーに運営リソースの大半を押さえられてしまったとも言っていたし、その底は浅いのだろう。


「ぐぅ……ああ、ええ、良いでしょうです……良いですとも!! こうなればお見せしましょうです……!」


 土砂崩れのような焦り顔を晒しながら、ゴールドさんは空高く舞い上がる。

 逃がすかとフレアが飛ぼうとしたその時、ゴールドさんは急停止し、勢いよく両手を広げた。


「ンおおおおお!! ゴールデン・課金合体!!」


 その言葉を合図に、壁に突き刺さっていた課金三獣士とパニプゥの体が見えない何かによって引っこ抜かれ、空中のゴールドさんの元へ!!

 五人の体が重なった時――黄金の閃光が弾ける!!


「我、黄金の支配者にして黄金に永劫の忠誠を誓う者ナリ……!!」


 顕現するは青空を覆うような黄金の巨体!!

 その巨体を滞空させるのはハエのそれによく似た無数の羽!!

 目は半開きではあるものの、牙を剥き出しにした獰猛な犬の頭!

 ヒマワリの種を器用に掴めそうな四本指の腕!

 太ましいヘビのようなセクシー尻尾!

 そして胸の中心には、不気味で巨大な紫色の眼球!


「あれは確か……無課金者だけがランダムでエンカウントしてしまうって言う、理不尽な強さを持つエネミー専用の謎キャラクター、【黄金怨霊・ゴルドーン】!!」

「はッ。怨霊の正体見たりだぜ! ゴルドーンの正体は、課金の回し者であるゴールドとその部下が無課金者に対して見せる獰猛な一面だったって事だぜ!!」

「その通り……金を払わない奴は客ではないのです!!」


 気色悪い飛翔キメラ――もといゴルドーンが吠え、腹の目玉をぎょろつかせる!

 その不気味な視線が、ばっちりとフレアとグリンフィースを捉えた!!


「術式起動――【黄金化の熱視線ゴールデンズ・メドゥーサ】!!」

「ッ……こいつは……!」


 グリンフィースが目を剥く。なんと、ゴルドーンの視線を受けた彼の指先が、ほんのちょっぴり黄金に変わってしまったのだ!


「パプププあひゃひゃ! 我が黄金化の邪眼は身体的弱体攻撃! 激情状態であろうと関係ありませんですねぇ!!」


 ゴルドーンの腹の邪眼に睨まれると、体が黄金になってしまい動けなくなる!!

 まるでギルジア神話に登場する怪物メドゥーサ・ゴルゴーンが誇る石化の魔眼めいた視線!!


「パプひゃひゃ! まぁ、黄金化の邪眼は金持ちには効きが弱いですね。貴族階級であるダーゼット卿には指先が少し黄金になる程度、大した効果は望めませんですが、フレア様はお見受けする限り無課金貧乏人! もはや一瞥で全身黄金人形に………………アレ?」


 高笑いの最中、ゴルドーンは気付く。

 そのフレアが、眼下にいない。


強烈蹴撃ヴィーザル・ショットォ――」


 フレアの声は、ゴルドーンの頭上から降って来た!!


「なッ……上!?」


 そう、フレアは既に、爆撃に乗って飛翔!

 ゴルドーンよりも高度を取り、その無防備な背中に狙いを定めている!!


「馬鹿な! 黄金化の邪眼を発動した時、あなたは確かに視界の中にいたはず! だのにどうして、指先すら微塵も黄金化していないので――」

「――【爆降槌ミッタファンマ】!!」


 ゴルドーンの問いを完全無視!

 フレアが放ったのは、急降下と共に放つ事で重力までもを味方につける爆裂ドロップキック!!

 さながら隕石かと見紛うような爆炎の落下攻撃が、ゴルドーンの背中に直撃する!!


「げ、ぶあああッ!?」


 理不尽な強さを誇る――と言っても、ゴルドーンが戦うのは無課金者限定。つまり、その風評は装備の充実や戦闘能力向上にハンデがある無課金者からのもの。


 フレアは、グリンフィースやキャパーナなど規格外の敵との連戦を越えてきた事で既にプレイヤーレベル二〇〇〇越え……これは超上級者の領域!! 加えて装備しているイケメン・ヴァーンのランクもそこそこ高い上、その爆炎が持つ【炎】属性はゴルドーンが妖精として持つ【植物】【虫】属性に対して相性抜群!!

 しかもダメ押しのように、今は激情状態によるステータス向上まである!!


 フレアの一撃は、充分にゴルドーンへ大ダメージを与えられる!!


「落ちろォォォォォオオオ!!」


 咆哮と共に、追い打ちで追加爆撃!!

 ゴルドーンの巨体が大地に向かって急速落下する!!


 このままでは、足元にいるアリスやユシアが巻き込まれてしまうのでは!?

 心配ご無用――フレアはその辺り、きちんと信頼しているのだ。

 地上で既に攻撃の準備を完了させていた、グリンフィースを。


「よう、金の亡者――嫌がらせに、おまえが好きそうな植物で仕留めてやるんだぜ」


 グリンフィースが召喚したのは、三本の幹が三つ編み状に絡み合った巨木の槍。

 その名は【発財樹パキラ】。これを見事に育て、売った者に莫大な財をもたらすと言う言い伝えがある。花言葉は【勝利】。


「喰らえだぜ……【勝利の突槍衝撃(パキランス・バースト)】!!」


 三つ編み巨木の槍が、とてつもない速度で成長し、ゴルドーンの邪眼腹を突き上げる!!

 フレアが上から叩き落とす勢いとの相乗効果!! 更にはゴルドーンの弱点である邪眼腹へのクリーンヒット――このダメージは、超絶大!!


「ぐああああああああ……ァぎ、ああ……!? ば、馬鹿、な……この、ゴルドーン、が……まともに、戦う事もできず、に……」

「うるさいよ」

「まったくだぜ」


 至極冷酷な言葉と共に放たれる、フレアの追加爆撃+グリンフィースの追加木実砲!!


「ぎゃんッ!?」


 ゴルドーンは短い悲鳴を上げ、その巨大がすぅ……と消滅。

 ゴールドさんとパニプゥ、課金三獣士の五人に分裂し、力無く落下していく。


 完全なる戦闘不能!


「よし、スッキリした!! やったね! ナイスだったよ、グッピー!」


 ゴールドさんたちが完全に白眼を剥いて動かなくなったのを確認し、フレアはグリンフィースへハイタッチを要求。グリンフィースはやれやれと溜息を吐きつつも、それに応じた。


「ああ、おまえもな、だぜ……フレア」

「お、ついに名前呼びになったね!」

「フン。ただの気まぐれだぜ。調子に乗るなだぜ」

「ほいほい。グッピーはアリスちゃん以外には素直じゃないに~♪」


 この勝負……フレアとグリンフィース、二人コンビの圧勝である!!

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