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26,燃える(物理)法廷チェイス!!


 ヴィゾブニルの背を借り、ワシとククミスコップとクリアスは炎とウサギさんのころころウンチが散乱する一本道の廊下を駆ける。


 前方を走るアシャワシャの背を睨む。

 片手には天秤、片手には炎の大剣・レーヴァティンを担いでおきながらとんでもない速度で走っておるな……距離は付かず離れず……いや、僅かずつじゃが詰まって来ておる!

 このまま行けば時間の問題で追いつける!


 しかしここはアシャワシャが展開した領域の一部。油断は禁物じゃ。どこかに抜け道があるやも知れぬし、何ならあやつの意思で通路を変形させる機能があっても不思議ではない。

 それらを駆使される前に一刻も早く、あやつの手から天秤とレーヴァティンを奪取するぞ!


「ククミスルーズ!」

「承知!」


 ククミスコップを振りかざし、野菜を遠隔召喚!

 アシャワシャの速度を踏まえ、その遥か前方を指定して野菜類の蔦を生やしまくる。本当は植物の壁でも作れれば早いのじゃが、ククミスコップの最大射程で生やし始めてもさすがに壁が完成するまでに通過されてしまうからな。

 それに、以前ククミスルーズが言っておったように無限に召喚できる訳でもない。無闇に大量の野菜を召喚すれば、後々重要な場面で手が足りなくなる恐れもある。


 急ぐ必要があればこそ、焦るな。

 確実な勝機が見えるまでは、ちまちまとした手を打っていく!


「誠実に認めよう。有効な手だ」


 アシャワシャは反撃・防御を一切行わないと言う自らの信念故に、ククミスコップが召喚する野菜の蔦を跳躍して躱すしかない。

 ヴィゾブニルはただ真っ直ぐ走ってくれれば良い。


 障害物競争のランナーを、こちらは障害物無しで追いかける形じゃ。

 ただでさえじりじりと詰まっておった距離が更に詰まる。


 と、ここでワシの隣で動きがあった。クリアスじゃ。

 クリアスはどうやら今まで黙々と筋力・魔力を脚に集約させておったらしい。


 ワシにアイコンタクトで「お任せあれ」と伝えてきた後、ひょいっとヴィゾブニルの背から飛び降りた――瞬間、小規模な竜巻を発生させるほどのスタートダッシュで、前方へとすっ飛んでいく。


 なるほど、タックルでアシャワシャを転ばせる気か!


 普通の足の速さでは到底、神の健脚には追い付けぬ。

 じゃがヴィゾブニルがじりじりと距離を詰め、その間に膨大な筋力と魔力を集約、それを爆発させる一時的超加速であれば、その背中に食らい付く事も可能と!


「誠実に伝えよう。そろそろ仕掛けてくると読んでいた」


 ……ここがアシャワシャの領域でさえなければ、クリアスの「隠密性」と「速度」を高水準で両立した背面からのタックルを躱すなど不可能じゃったろう。

 しかし、アシャワシャはまるで背中でものを見ているかのようにひらりと躱してみせた……!


 じゃが、クリアスもただで出し抜かれたりはせぬ。

 躱された瞬間に、クリアスが身を翻す。その歯を食いしばった表情は、声を上げなくとも「まだまだァ!」と言う咆哮が聞こえてきそうじゃった。


 アシャワシャの前方へと躍り出る形になったクリアスから、光が弾ける。


「誠実に驚こう、なに……!?」


 クリアスは竜系魔人、ファナンと同じくドラゴンモードに変身できる!

 成体のドラゴンモードは基本的に大型じゃ、太い四肢と大きな翼を持った巨大ドラゴンへと変貌する。


 クリアスも例外ではない。

 弾けた光を引き裂いて、水晶体クリスタルの彫像のように全身が薄く透き通った巨大ドラゴンが顕現!

 周囲の僅かな光を取り込み、乱反射させて光量を増幅エンハンス、キラキラキラキラと瞬く美しい竜――水晶竜種クリスタルドラゴンのドラゴンモードが、前方の廊下を完全に塞いで壁となった!!


「やりおるわ! さすがじゃぞクリアス!」


 アシャワシャもこれには足を止めた――が、判断が速い! クリアスが壁になったと理解するや否や即座に急ブレーキを踏んで切り返し、身を反転させ、こちらへと真っ直ぐに突っ込んできた。有無を言わさぬ速度でヴィゾブニルの股を抜き、逆方向へと逃げるつもりか!!


「ふん! 強い鶏を侮ったのであるな!!」


 ヴィゾブニルが吠え、そして、その鶏冠とさかが輝き始める!


「アリスとフクロウは問題無い、メイド服だった女子おなごは目を瞑れ! 喰らえ――モーニングフラッシュ!!」


 ヴィゾブニルの鶏冠を起点に、前方へと向けて放たれた強烈な閃光!

 なるほど、目潰しか! 例え神と言えど、こんな強烈な目潰しを正面から浴びれば怯んで足が止ま――らないじゃと!?


 アシャワシャは一切減速する事無く、華麗なるスライディングでヴィゾブニルの股下を抜いてしまった。

 どう見ても、眼が眩んだ者の動きではなかったぞ!?


「コケェ!? ば、バカなァァァである!?」

「誠実に答えよう。当方は本来、攻撃や防御にこの天秤から溢れる炎を利用する。当然、ほむらの瞬きを間近で浴びる事になる訳だ。であれば当然――」

「ま、まさか……」


 そのまさかだ、と肯定するように、アシャワシャが眼鏡をくいっ。


「当方の眼鏡は、眼の保護を目的とした色無しサングラスだ。まぁ、さすがに今の輝きはカットできる光量の限界に近かったがな。素晴らしい技だったと誠実に賞賛する」

「おのれ! 太陽に歯向かうとはなんたる発明であるか、サングラスゥ!! 賞賛は受け取っておく! だがしかしそれはそれとして怒りのコケェェェ!!」

「……、っ! 待て、慌てるなヴィゾブニル!」

「コケ?」


 今、あやつは言ったな。先の発光はあやつのサングラスでカットできるギリギリの光量であったと。

 ならば……!


「クリアス、ククミスルーズ、ヴィゾブニル!」


 見つけたぞ、勝機!


「貴様らの力を合わせれば――アシャワシャを止められる! 力を貸してくれ!」

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