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第66話 追われる者と追う者達

朝一の更新

  ガシャガシャという金属が重なる音と共に出てきたのは全身鎧姿の騎士達であった。剣を構えていることからあちら側は戦闘態勢に入っているようだ。


「フラグメント4名の存在を確認。捕獲作戦を開始する」


 先頭に立つリーダーであろう騎士は少し籠った声でそう指示をする。そしてその指示を聞いた他の騎士達の一部が剣を振り上げてアスカ達の方へと向かって来る。


「初めての共闘だが、俺は好きにやらせてもらうぜ!」


 前に出ていたルナウェイが特に作戦もなしにロケットランチャーを構え、騎士達に向けて発射する。騎士達は飛んでくる弾を剣で弾こうとするも、弾は剣で切られた瞬間に爆発し騎士達を吹き飛ばす。どうやら、あの騎士達はロケットランチャーに対しての知識はないようだ。


「ルナウェイ、右は任せた」


「へっ、了解!」


 逃げ道をなくそうとアスカ達を囲もうとする騎士達の行動を阻止すべく、セツナとルナウェイは二手に別れて騎士達を倒して行く。

 一方イノンとアスカはここから少し離れた辺りまで移動し、アスカはほふく体勢で騎士達の視界から映らない場所からの狙撃を試みる。イノンの役割はアスカの背後などの目が行き届かない場所の警戒である。


「……別に1人でできる」


「多分あの鎧硬いだろうからさー、多分私のMP5の弾行き届かないと思うんだよねー。だから今回は私は前に出られない」


「それで見張りってわけ」


「ないよりマシでしょ?」


「さっきの指示、お前は中じゃなかった?」


「変更よ変更」


 いつもとは違う環境下での狙撃に違和感を感じずにはいられないアスカ。だが、そんなことをいちいち気にしていては狙撃どころの話ではなくなる。ここはいつもの感じを思い出してやるしかない。


「……風向き西に弱、距離およそ100メートルってところか」


 前に出ているセツナとルナウェイからアスカのいる場所までは大体100メートル。割と近いが森の中ということもあってこれだけの距離を開けていればまず騎士達の視界には入らない。それに、騎士達は兜を付けている為に元々の視界も狭い。見つかる可能性はゼロに等しいだろう。

 だからこそ落ち着いて狙える。この状況下で外すなんてことは有り得ないし許されない。


「…………」


 マガジンを取り魔力で生成した銃弾を込める。そして最大まで入れ終えると再びマガジンを取り付け、ボルトを引いた後にスコープを覗く。

 風向きや風の強さ、この距離から銃弾がどういった弾道を描くのかなどを考えながら微調整していく。ほんの数秒で微調整を終えると、スコープのど真ん中には騎士の頭が見えていた。そして……、


「……狙い撃つ!」


 引き金を引き発砲する。放たれた銃弾は騎士の兜を貫きそのまま騎士の脳に命中し騎士は力無く倒れる。


「次」


 命中したことを確認しないままボルトを引き弾を装填する。そして再び騎士の頭を狙い、引き金を引く。

 こういった本来スナイパーライフルを使う上での環境においての狙撃はかなり久しぶりではあるが、アスカの体が自然と覚えているらしい。


「ルナウェイ、状況は?」


「問題ねぇよセツナァ」


「そうか。なら、後ろの2人を連れてこの場を離脱しろ」


「りょーかって、はぁ!?」


 アスカが狙撃をしている中、前線にて騎士達と正面衝突しているセツナはルナウェイに離脱の指示をする。その指示に納得できないルナウェイは少々キレながらに反論する。


「どうしてだ、問題ねぇからこそ突破するんだろうが!」


「数が多い。恐らく奴らは俺達がここに居るということを事前に知っていた」


「事前にって、どうやって」


「お前とアスカとか言う奴の戦闘のせいだ。見ればわかる通り辺り一体が燃えている。奴らに居場所を伝えているようなものだ」


 つまり、何らかの戦闘があればすぐにこの騎士達は駆けつけることができ、独特の爆発音から騎士達が狙っている転移者であると判断することができたのだ。もしも、ただの魔法による爆発だとすればこの騎士達も来ることもなかった。

 そしてこの状況を作った原因はルナウェイのロケットランチャーに装填された焼夷弾。このままルナウェイに戦闘を続行させることはつまり、エンドレスで騎士達が来るということだ。それではいくら弾が無限だとしても体の方がもたない。


「……邪魔だからとっとと失せろってか?」


「そう解釈してもらって構わない。少なくとも、お前がここで戦えば捕まる可能性が高いというだけだ」


「……ちっ、りょーかい。後ろの2人も連れてこっから離脱するよ」


「集合地点は例の場所だ。何かあれば連絡しろ」


「わーってるよ!」


 そう言ってルナウェイはロケットランチャーを消してその場を離脱する。そこを1人の騎士が狙おうとするが、セツナがその騎士の腕を鎧ごと切断する。


「相手を間違えるな!」


 そのまま剣を胸に突き刺しその騎士を殺す。

 こうして時間を稼いでいるうちに離脱したルナウェイはアスカとイノンがいる辺りにまで来ていた。


「どうしたのセツナを置いて」


「あいつが離脱しろと。テメーら2人を連れてな」


「どうして!?」


「数が多い。たった4人でここを突破なんて無理な話」


 イノンがルナウェイに反論するが、その反論に対してアスカが冷静に答える。そしてその答えを聞いたイノンは少々不満気味だが納得する。


「セツナなら1人でもきっと上手く離脱できるはず。それを信じて私達も離脱よ」


「集合地点は例の場所。奴らを完全に撒いた後にそこで落ち合うぞ」


「ほら、アスカも早く!」


 とりあえず離脱しようとイノンとルナウェイはその場を離れようとするが、スナイパーライフルの構えを解かないアスカを見て呼びかける。しかし、それでもアスカは構えを解かない。


「先行って」


「何言ってんの! セツナなら大丈夫だって!」


「私は誰の指示も受けない。従うかどうかは私が決める」


「仲間を信用できないって言うの!?」


「そのお仲間さんを置いていくなんて私にはできなくてね」


 出会って数十分で仲間と呼ぶには少々無理があるが、アスカは人を見捨てることはできない性格だ。今も昔もそれは変わらない。


「……わかった」


「おい!?」


「だけど、その性格から犠牲になるなんてのはやめて。それだけは約束してね」


「了解」


 そう言い残して2人はセツナとアスカを置いて戦線を離脱した。しかしそんなことは関係ないと言わんばかりにアスカは狙撃を再開する。


「………」


 ──カッコつけたこと言ったな、って言いたいところだが、何か目的があるのだろう?


「あいつらからする妙な違和感の正体を明かしたくてね」


 ──違和感だと?


「うん。まず、何故かセツナっていう人に切られた騎士が流血していないこと。普通にありえない事じゃない?」


 ──人間に限らず大体の生き物は切られれば流血する。確かに妙だな。


「次に、あの鎧について。どこかで見た事ない?」


 ──先程の町で見かけたな。……何が言いたいのかだいたいわかったぞ。


 町で見かけた鎧がここにいる。それはつまり、あの騎士達は先程までアスカがいた町の騎士達ということだ。それも見習いと呼ばれる騎士達の鎧である。


「そう。だからとりあえず、私はもう一度あの町へ行く必要ができたってわけ」


 ほふく状態から立ち上がりながらそう言う。そして、セツナと騎士達が戦っているところに向かって歩き始める。

 人はスナイパーがわざわざ人前に出るなんて無謀だしバカのやることだと言うだろう。だがしかし、この世界においてのアスカにとってはそれが普通なのだ。ちまちまするのがスナイパーだと人は言うが、常に例外は存在する。それがアスカだなだけだ。


「少し前までは人前に出ることすら苦手だったのに、割と慣れるものなんだね」


 ──それが成長だ。


「人に対して慣れたからには、閃光の狙撃手復活だね」


 自分で言っておいて少々恥ずかしくなるアスカ。だが、過去の発言自体1年前にはできなかった。そう考えれば自然と自信が持てる。


「さて、それじゃあやってやろうか!」


 そしてアスカはセツナのいる最前線に姿を現し、手始めに1人の騎士の頭に向けてスナイパーライフルの銃弾を撃ち込んだ。

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