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第65話 エラディケイションオブコンフリクト

「え、えらでぃ……なに?」


「エラディケイションオブコンフリクトだ」


「だめだ、全く覚えられない」


 あまりにも組織名としては長過ぎる。元々いた日本でさえそんなにも長い名前はなかった。と思いたいところであるが、割と長い組織名も中々にあった。

 しかしアスカはそう言った名前を覚えるのは大変苦手である。そんなすぐには覚えることはできない。


「まあそんなことはどうでもいいの。とりあえず、加入してくれる?」


「ここで私が軽く加入しまーすなんて言うと思ってるの?」


「うんん、まったく」


 突然加入してくださいと言われても何もその組織についての情報がない現状で加入するわけにはいかない。もしかすると、この組織の目的が極悪非道なものかもしれない。


「組織の目的は何?」


 組織の目的について探ろうとアスカは質問する。もしも相手がアスカを加入させたいのならば、この質問にもきっちり答えてくれるはずだ。


「目的は、争いの根絶」


「……悪いけど、私はそういうのには」


「貴方が陰ながらに追ってる人の抹殺と言えば、どう?」


「……!」


 現在のアスカの目的はイノンの言う通り、セヴィオルナにて得た情報から自身を狙う何者かの始末。その目的をこの3人が知っているのは何故なのか。


「俺達もてめーと同じように異質な魔力性質をしている……って言えばいいのか?」


「事実だしね」


「どういうこと?」


「そうね、貴方が加入してくれればこの情報も共有してあげるけどー?」


「この……!」


 何がなんでも加入させたいのかそういった情報をわざと漏らしてくる。なんとも人の感情を揺さぶるのが上手な人達だ。

 しかし、現状その異質な魔力性質を持っている者を狙っている奴がいるということ以外に情報がない。今目の前にいる3人は間違いなくアスカの知らない何らかの情報を持っている。

 仲間になって情報を得るか、その情報を掴むチャンスを捨ててまで一匹狼を貫き通すか。その答えはすぐに決まった。がしかし、勿論アスカの中にはその判断に対するリスクから反対の者もいる。


 ──いいのか、かなりリスクが高いぞ。


「……今回ばっかりは仕方ないって」


 ──貴様が心配するあの2人を巻き込みたくない、そう言っていたのは貴様だ。もしもここで組織に加入し目立ってでもしまえば確実に貴様の望みとは逆の結果になるぞ。


「わかってる。だけど、ここでこのチャンスを逃したら行けない気がする」


 ──……まあ、我には関係の無いことだ。貴様の勝手にするんだな。


「ありがとう」


 ──礼を言われるほどのことはしていない。


 ツンデレ……ではなく、素直ではない邪竜は警告をした上で最終的な判断をアスカに任せる。ここ1年間で何処か性格が柔らかくなったのではないかとアスカはクスッと笑ってしまう。


「それで、アスカ・ハクノ。答えは何だ」


「……わかった。大人しくその組織に加入させて貰うよ」


「勝ちぃ!」


 そしてアスカは、おめでたくエラディケイションオブコンフリクトという組織の1人として加入した。果たして、おめでたくというのは適切なのかはわからないが。


「それじゃあ例の情報を」


「まあまあ落ち着いて。まずは自己紹介からでしょ」


 情報を第一に考えるアスカにイノンは落ち着くように言うが、その言葉になんとも不満げな表情をするアスカ。しかしよくよく考えれば、日本でも学校でも会社でも新しくできた仲間に対してはこういった自己紹介から始める。当然の行動だ。


「じゃあ私から。イノンって名前で武装はサブマシンガンMP5が2丁にハンドガン。ちなみに本名はちゃんとあるけどゲーム内の名前にしてるよ。あ、さっき貴方のコンバットナイフを撃ったのは私ね」


「ハンドガンスキルが高いようで」


「あんなのまぐれよ。元々は手を撃ち抜こうとしたんだけどね」


「え」


 もしかすると今頃はコンバットナイフを持っていた右手の穴が空いていたかもしれないという可能性にほんの少しだけ恐怖を覚えるアスカ。コンバットナイフに命中したということが逆に運が良かったと思えてしまう。


「次は俺だな。ルナウェイ、武装は4弾ロケットランチャーだ。名前なんていちいち覚えてねぇよ。俺の名前もゲームのアバターネームにしているぞ」


「ここにいる全員が転移者なんて、インフレとはこういうことを言うのね」


「なんか違う気がするんだけど」


 苦笑いをしながらアスカは呟く。

 そして、ここにいる全員が転移者ということは残ったセツナという青年もそうなのだろう。しかし、彼だけは2人とは違い銃を全く装備していない。ということは、今までにあまり出会わなかったファンタジー系のゲームのランキングトップの人なのだろう。


「セツナだ。武装は粒子増強ブレード2本に粒子増強ダガー2本。使用可能な魔法身体強化レベル5とアウェイク。ファンタジーゲーム出身故にこの中で唯一魔法を使える」


「と言っても、あくまでバフ系のはって話しね。銃弾とかは魔力使って余裕で作れるし。あれ、これって魔法の類なのかな」


「とにかく、現状近接戦では1番強いってことはわかった」


 剣やダガーの性能がどれほどかは不明だが、とにかく近接戦ではアスカよりも強い。というか強くなければ困る。どれくらいかと言うと、ご飯を食べる時に腕が縛りつけられた時くらいに困る。


「えー、アスカです。武装はスナイパーライフルM24とコンバットナイフ一丁。多分、3人からすれば期待外れの技量を持ってる」


「ロケランを乱射する馬鹿相手にハンドガンとナイフだけで勝てた時点で人間の域じゃないけどね」


「それ言っちゃったらこの世界にいる人達全員人間の域は超えてる」


 魔法やらを使ったり自分よりも巨大な魔獣を討伐したり、少なくともアスカの知る普通の人よりかは遥かに強い。魔法なんて使わず武器しか使わない事が一般的なアスカからすれば、普通にその常識を超えてきている。


「それで、組織っていうからにはもう少し人数がいるんだよね」


「そんなわけないじゃん。ここにいる3人、いえ、貴方含め4人で全員よ」


「……本当に言ってる?」


「こんな所で嘘なんてついても面白くないから本当のことを言ってる」


「……他2人、言ってることは本当?」


「ああ」


「事実だ」


 よくもまあ、たった3人の時点で自分たちのことを組織と呼べたものだ。3人ならば組織というかはただの集団ではないか。

 アスカは何だか色んな点から期待を裏切られたことにかなり落ち込む。なんというか、もう少し凄いものを想像していた。


「それと、貴方が欲しいって言ってた情報だけど」


「ここで嘘でしたなんて冗談はやめてよ」


「そこまで私もクズじゃないって」


「それで、その情報は何だ?」


「とても簡単。魔力性質が異質な人の共通点についてよ」


「共通点?」


「そう」


 異質な魔力性質を持つ者がアスカだけでは無いということは既に把握していたが、その者達には共通点があることは初耳であった。

 アスカはその共通点についてを少し考える。が、やはり現それといった情報を持たないアスカにはいくら考えても出てこない。大人しくイノンの話を聞く。


「異質な魔力性質を持っているのは私達や貴方だけじゃない。()()()はみんな異質な魔力性質を持っているわ」


「どういうこと?」


「さあ……。でも恐らくは、あの自称神のタクトだっけ。そいつが特殊な方法で私達をこっちに送ったのが原因だと思う。詳しくはわからないけど」


 確かに、別世界への移動というのは普通に考えれば転移先の世界が侵入を拒絶するはずなのだ。人間の体内へ異物が侵入してきた時に起こす拒絶反応のように。それを無効化して転移させるというのは普通に考えれば簡単なことではない。それこそ、神でさえ元々の姿で転移させるというのは困難なのだろう。現に転移する際にはわざわざ転移者の姿を変えている。

 きっと、姿を変える際に行った何らかの行為が影響して通常の魔力性質が異質な形へと変わってしまうのだろう。魔法に対して制限ができるのも恐らくはそれが原因。


「あれ、でもどうしてそんな共通点を知っているんだ?」


 そんな大体原因が予測ができるほどの情報を一体どこで、何をしている時に手に入れたのかがアスカは気になっていた。わからないところがあったとしても、やけに詳しすぎる。


「それについては2つ理由がある。1つが私やルナウェイ、そしてセツナがそうだったから。そしてもう1つが……」


 瞬間、自分達の周りに人の気配をわんさかと感じ取る。


「ここ最近、変わった武器や魔法を使う人達がやけに行方不明になるらしくてね。それが転移者にそういう特徴があるのではという確信が持てた」


「……なるほどね」


 戦闘態勢に入りながらイノンはアスカへ話す。

 本当に突然と現れたこの人の気配。きっと話にある転移者を誘拐か殺害かをして行方不明にしている人達のものであろう。しかし同時に、アスカは少し疑問を抱いた。


 一体どうして隠していた気配をここでさらけ出した? まるで見つけてくださいと言わんばかりに。


「敵数10。攻撃してこないことから武装は近接武器の可能性が高い」


「オッケー。セツナとルナウェイは前、私は中、アスカは後ね」


「了解」


「何となくわかった」


「いつも通りに暴れたらいいんだなァ?」


「程々にね」


 初めての共闘だが、アスカはこの状況に懐かしさを感じていた。1年前もこんな感じでみんなで協力して魔獣や盗賊を倒していた。


 そして同時に相当な迷惑も掛けていた。


「来るよ!」


「あいよォ!」


 少し奥から「突撃」という声が聞こえた瞬間、先程から感じる気配が殺気へと変わりこちらへ向かってき、その姿を現した。

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