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第4話 冒険者ギルド

 それから昼食を食べ、アスカは冒険者ギルドに向かった。冒険者ギルドの扉を開けるとそこには大勢……ではなくそこまで人はいなかった。

 それも仕方が無い。この村は街よりも人口が少ない。いるとしたら、どこかの街から来た冒険者だ。


「えっと、登録するところがあるはずだよな」


 人は少ないだけでいないという事ではない。聞けばすぐに済む話なのだが、コミュ障のアスカにそんなことができるわけない。簡単なことだろと言うが、アスカにとって人と話すことは一般人で言う問題児が超高難易度の学校の入試に合格するくらいのレベルだ。


「……なるほど、クエストは紙を剥がして受け付けに持っていくと」


 ギルド内にいる冒険者の行動を観察し、どこが冒険者登録をする場所なのかをハッキリさせる。幸いこの村の冒険者ギルドはそこまで大きくない。受け付けカウンターも3つしかない。ハッキリさせるのはそう時間はかからないだろう。


「……2人の冒険者があの受け付けカウンターでクエストを受けている……。ってことは、残りのあのカウンターが冒険者登録するところでいいのかな?」


 アスカが冒険者登録のカウンターは右から1番目だとわかった瞬間に行動を開始する。こういうことは早く済ました方が楽だというアスカの考えがそう行動させたのである。


「す、すみません」


「はい、こんにちは。見たところ冒険者ギルドは初めてですよね?」


「は、はい。でも、どうしてわかったんですか?」


「見たことなかったですし、やけにこちらを見てキョロキョロしていたからですね」


 ──なるほど理解。


 初めて見た顔ならば他の冒険者か登録希望者のどちらかに絞られる。そして、この受け付けの人はアスカの登録のために登録専用のカウンターを探しているのを見てそう考えたのだ。


「1つ言っておきますけども、このギルドを含め、全世界のギルドに登録専用のカウンターなんてありません。登録は通常のカウンターから行ってください」


「……じゃあ、俺が探したのって」


「はい、無駄な時間というものです」


 その事実を聞いた瞬間にアスカは片手を頭に当てて「あうち」と一言。それを見てクスッと笑うカウンターの受け付けの女性。


「して、冒険者登録ですね?」


「あ、はい。お願いします」


「では、この冒険者カードをお受け取りください」


 受け付けの女性はカウンターのすぐ下から1枚のカードをアスカに手渡す。カードには名前、ランク、討伐数の3つと大きな空欄が1つあるだけだった。


「この場でそのカードに名前を記入していただくと登録完了です。なお、カードを紛失しますと全ての記録がリセットされますのでご注意を」


「このランクは何ですか?」


「それは冒険者ランクです。モンスターの討伐数や討伐困難レベルのモンスターなどを倒すことで上がっていきます。貴方様は今回登録したばかりなのでEですね。最高ランクは『英雄』です」


「最後だけアルファベットじゃないんですね……」


「ギルドマスターが決めたことなので」


 アスカは冒険者カードに名前を書き込む。ここで何故異世界語の意味を理解でき、書けるのか疑問を抱くアスカだったが、異世界転移とはこうものなのだろうと1人で納得する。 

 そして、異世界といえば苗字と名前の順番を逆にして書くというのが普通と聞いたことがあったアスカは苗字である『ハクノ』と名前の『アスカ』を逆にして『アスカ・ハクノ』と記入する。


「はい、アスカ様ですね。なんともその容姿に似合った素敵な名前です」


「あ、そうですか」


「それにしても、『ハクノ』なんて珍しい苗字をお持ちですね。最近そういう変わった苗字を持つ方が多いんですよ」


 恐らくというか間違いなく、それはアスカと同様に転移してきた者だろう。そして、それは同時に転移者のほとんどが冒険者になっているということでもある。

 同じ転移者として考えることは同じなのだろう。


「はい。それでは登録完了です。それでは冒険者のルールについて説明します。まず、大きくわけてルールは3つ。1つ──冒険者同士の喧嘩は街の外ですること。死傷者が出るなどの周りの方々に迷惑な行為をした場合はそれ相応の罰があります。2つ──略奪はダメです。発覚次第罰があります。3つ──皆仲良くしましょうね、です。それ以外は基本的自由です」


 3つのルールとは普通に過ごしていれば何も違反しないくらいに低レベルのものだ。しかし、こういうルールがあるということはその低レベルのことをする輩がいるということだ。

 アスカにとっては対人関係は無理よりの無理なので向こうからなにかしてこない限りは何も問題が起きることは無いだろう。


「以上で説明は終わりです。クエストはそこの張り紙を剥がしてこちらに持って来てくだされば受注致します」


「わかりました。それじゃあ早速探してきます」


「おすすめは採取か軽い魔獣の討伐ですね。まずは慣れる方がいいですよ」


 早速掲示板に貼ってあるクエスト用紙を確認する。

 あるのは薬草採取や難易度1のゴブリン10匹の討伐などなどそこまで難しいクエストはなかった。恐らく大きな街などには高難度クエストはいくらでもあるのだろうが、こんな小さな村にはそういう脅威といえるモンスターが出現しないため、こういった現象が起きているのかもしれない。


「とりあえずは簡単な討伐クエストだな。受け付けの人の言う通り、戦闘経験はしておいた方がいい」


 アスカはそう言っているが、アスカの基本攻撃は狙撃。遠距離型だから接近をしないため大体のモンスターには『攻撃を受けている』以外の認識ができない。

 それにタクトが言っていたことが正しければスナイパーライフルを扱う技量もそれなりにあるという事だ。

 つまり、最初からそれなりに強いモンスターと戦っても問題なく戦えるという事だ。これはアスカに限ったことではない。転移者全員がそうなのだ。

 だからといって慢心するのは馬鹿だ。1度も戦闘なんて経験したことのない者が軽い気持ちで強敵と戦闘なんてできるわけない。いくら強くても心が未熟ならばその強さも宝の持ち腐れというやつだ。


「すみません、これお願いします」


「ゴブリン10匹の討伐ですね。受注致しました」


 クエストを受注すると、受け付けの女性は映画のチケットくらいの大きさの紙を2枚手渡してきた。


「これを村の外にいる馬車の運転手さんに渡してください。近くまで送ってくれます」


「2枚あるのは?」


「往復用です。本来ならば料金を取るところですが、冒険者のクエスト達成のための移動が有料なのはおかしい、というギルドマスターの判断によりこういう制度になりました」


「ありがたいです」


 アスカは2枚の紙を受け取るとギルドの外に向かって歩きはじめる。


「あ、そう言えば、もしも帰りに馬車が見当たらなかったらどうすればいいんですか?」


「徒歩です」


「あ、はい」


「それでは、いってらっしゃいませ!」


 受け付けの女性の言葉を背後に、アスカはギルドを出た。そして、言われた通りに馬車の運転手に2枚のうち1枚の紙を渡し、馬車に乗って村を出た。

この世界にも一応アルファベットは存在しているのだ。(名前だけで実際の文字は全く別)

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