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第47話 未来を知る者

 ここからセヴィオルナまでは約1日かかる。つまり、今ここにいるシロウはアスカ達がセヴィオルナを出発した時間の前後に同じくして出発しているということになる。


「一体いつここに……?」


「昨日の朝一だ。お前のことで騒いでいた後、すぐに出た」


「……とりあえず、降ろしてくれませんか?」


 何気にアスカは現在進行形でシロウに通称お姫様抱っこというのをされている。落ちてくるアスカを受け止めるにはこの持ち方が1番良いというのはわかってはいたが、いざされてみるとすごく恥ずかしい。


「おっと、悪い」


 そう言ってシロウは、雨と風を凌ぐために近くの洞窟に入ったあとにアスカを降ろす。


「……ふぅ。それで、どうしてここにいるのですか?」


「まあ、軽い気分転換ってところだ。それと……」


 アスカがシロウに質問する。シロウにはここに来る目的は誰でも偶にする気分転換だ。いや、その目的は表側の目的であって、本来の目的は違う。

 そして、その目的とは──


「シ、シロウさん……?」


「──お前を殺すためだ。白野飛鳥」


 突然シロウは何も持っていなかった手に1本の刀を出現させる。そしてその刀を抜き、剣先をアスカに向ける。


「……やっぱり、転移者だったか」


「そうだ。……いや、正確に少し違うがな」


「俺を殺すためって理由……わかりやすく説明してもらおうか」


「……そうだな。流石に説明せずして殺すのは理不尽ってもんだ」


 シロウは刀を納刀し、刀を消滅させる。

 この行動は警戒を解くためなのか、それとも油断させるためなのか。理由はわからないが、もし下手な動きをすれば間違いなく先に斬られる。

 アスカには直感だがその確信ができていた。


「まず俺が、この世界の平行世界──パラレルワールドから来たと言ったら信じるか?」


「パラレルワールド……確か、もしもの世界のこと……だったよな?」


「その認識で合っている」


「でも、何のために態々そんな所から……」


「言ったはずだ。お前を殺すためだってな」


 何故ここまでアスカを殺すことに拘るのか。それに、アスカを殺すことで一体シロウに何が得られるのだろうか。


「何故殺すのか、そんな顔をしているな」


「誰だって突然、お前を殺すなんて言われたらそう思うだろ」


「それもそうだな。簡単に言えば、お前の選択によって起こる()()()()()()()()()()を知っているからだ」


「最悪の……未来?」


 その言葉にアスカは、その最悪の未来とは何なのかという疑問を持つ。誰でもこんな話を聞けばそう思うだろう。


「この世界に存在する人間は、俺がいた世界でも存在する。少し違う形でだが。何しろ、この世界と俺の世界での分岐が、どうやら約5000年前の話らしいからな」


「5000年前!?」


「一体何故別れてしまったのかはわからない。ま、どうせ原因はこの世界の神さんだとは思うがな」


 シロウの言う神さんは、他でもなくタクトのことだ。恐らく、タクトの転移者のテレポートが時間を含め完全にランダムなのが原因だろう。

 転移者の誰かが、今から5000年前に転移して本来の歴史とは違うことをしたからシロウの世界とは少し違う世界になってしまったのだろう。

 そして、この話から推測する限り、シロウの世界は5000年前に転移者が現れなかった世界なのだろう。いや、そもそも転移者自体存在していないのかもしれない。


「それで、俺のした選択というのは……」


「……これについては覚悟して聞け」


 急にシロウの表情と話し方の雰囲気が変わる。それほどに覚悟が必要な話であると理解できる。


「まず、こちらの世界でのお前についてだ」


 シロウの世界はタクトが転移者をテレポートしなかった世界。つまり、本来ならばアスカもその世界にいるはずがない。

 しかし、シロウの世界には何故かアスカがいるらしい。その理由は、今現在の情報ではわからない。


「こっちの世界には銃はない。しかし、こっちのお前もスナイパーライフルを持っていた。つまり、この世界と同じように転移してきたか、或いは転生したかだ」


「転生……」


 転生とは、1度死んだ生き物が別の生き物になって生まれ変わるということだ。だとすると、シロウの世界ではアスカは1度死んだ可能性があるという事だ。

 一体シロウの世界でのアスカに何かあったのだろうか。


「そして、経緯はわからないがお前はとある邪龍を信仰している者達に人工的に器にされてしまったんだ」


「器?」


「邪龍が自身を完全に復活させるために使う体のことだ。ちなみに俺と俺の知り合い1人がその器だ」


「お前もかよ……。それで、俺がした選択っていうのは何なんだ?」


 アスカは何よりも自分がした選択についてを知りたかった。その選択によって、シロウがいた世界かまどんな世界になってしまったのかか知りたかった。

 若しかすると、この部分の話を聞いてしまうと毎日が寝られなくなるかもしれない。しかし、そんなことは問題ではない。その時に、どういう選択が正しいのかったのかを知りたい。


「その選択は……」


「………」


「いずれわかる」


「……は?」


 シロウの返答に、アスカは間抜けな声を出してしまう。

 これだけ話しを盛っておいて、それを教えないって言うのはさすがにないだろうと、アスカはシロウに対しての怒りが少し出てくる。


「選択するのはお前だ。俺ではない」


「で、でも、選択を間違えれば……」


「それはその時だ。この世界は俺の世界じゃないから、俺にとっては他人事だ」


「だったら俺を殺す理由はないだろ」


「もしも、俺の世界とこの世界の時間が同じならそうだったかもな」


 そう。シロウの世界はアスカのいる世界とは時間が違う。シロウの世界はこの世界よりも先の時間を進んでいる。


「……なんだ。じゃあ俺が死ねばお前の世界は救われるのか?」


「可能性は低いが、ないわけではない。それに、もしも俺の世界が何も変わらなかったとしても、この世界が俺の知る最悪の未来にはなることは無くなる。言っておくが、お前の中の竜は出さない方がいいぞ」


「っ……!?」


 シロウは知っていた。アスカの中にクロがいるということに。誰にも話していないことなのに。

 これはシロウがアスカについてはある程度知っているという証拠になる。そして、アスカ自身はシロウとそこまで会話をしていない。この2つの事から、シロウの言うことは冗談ではないという可能性が高いという事だ。


「さて、説明は終わった。これで理不尽とも言われまい」


「くっ……!」


 ──1度死んでまた死ぬなんて御免だ!


 アスカはシロウが再度刀を出す前にスナイパーライフルを出し、シロウに向けて構える。


「……動くな」


「撃つか?」


「動けばな」


「そうか」


 緊迫する空気。アスカはシロウに向けて銃を構え、シロウはアスカに向けて瞬時に刀を抜刀できる姿勢になる。

 一見、明らかにアスカの方が優勢に見えるが、シロウの目は諦めていない。それどころか余裕がある。


「…………」


「…………」


 辺り一帯に沈黙が生まれる。暴風雨があるが、2人には聞こえていない。そして、その沈黙を破るように外で落雷が落ちる。


 ──瞬間、シロウが抜刀しようと動く。


「言ったからな!」


 そしてそれと同時にアスカはシロウに構えていたスナイパーライフルの引き金を引き、銃弾を発射させる。

 急所は狙っていないので少しの負傷で済む。アスカにシロウを殺す気はなかった。

 銃弾が向かってくる中、シロウは抜刀を中断しなければ避ける気すらない。

 そして次の瞬間、シロウは貫通力の高いはずのスナイパーライフルの銃弾を()()()()()

 本来ならば腕を貫通し、受け流すのかと誰もが思うだろう。しかし、シロウの右腕には貫通せず火花を散らした。まるで、頑丈な鉄板で弾かれたように。


「なっ!?」


 銃弾で破けたシロウの右腕の皮膚の中を見て、アスカは驚いた。その腕は人間の腕ではなく機械の腕──所謂義手だったからだ。

 この世界において、義手というものは作れないこともないが、シロウのような精密な作りをした義手は現在の技術では作ることができない。つまり、あんな話よりも確実性があるなによりの証拠だ。


「お前と俺とでは戦闘経験に差があるという事だ」


「チッ……!」


 銃弾を見切って弾くと言う時点で戦闘経験に差がありすぎるのはアスカでもわかった。しかし、銃弾が見切られるというのならばアスカの攻撃の殆どは通用しない。

 アスカはシロウが刀を振り下ろす前に距離を取る。そして、ボルトを引いて射撃が可能な状態にする。

 今思えば、この洞窟に来たのもアスカを逃がさないための作戦だったのかもしれない。


「クロ!」


『いいの?』


「仕方ないだろ、身を守るためだ!」


 何気に先程の銃弾は、前にアリサから教えてもらったリロードによる魔力強化をした銃弾だった。それが弾かれたとなると、並大抵の銃弾では傷1つ負わすことができない。

 それに見切られるとなると、恐らく弾きに来る。だったら、弾かれないような強力な銃弾を使うしかない。


「それがお前がクロと呼ぶ竜の力か」


「一時的だが、行動不能にはなってもらう。悪く思うなよ」


 そして、アスカはまた自らの精神を削りクロの力を使い、クロの力を銃弾に流す。

 流石にこれを右腕の義手で防ぐのは無理だと考えたシロウは突然目付きが変わる。

 その瞬間、シロウが持つ刀から赤黒い稲妻が走る。それと同時に刀身の色が濃い赤紫色に染まる。


「……っ!」


 その刀に何かヤバいものを感じながら、アスカは引き金を引いた。

 これだけの至近距離だ。先程は咄嗟に防いだようにも見えた。流石にこの力を使っての射撃ならば咄嗟の判断で右腕を出しても防ぐことはできない。


「ハッ!」


 しかし、確実に命中すると思われた銃弾はシロウの刀によって両断され、一刀両断された銃弾はシロウの顔の横を通り抜けて洞窟の外に飛んで行った。

 ──有り得ない。


「半分以下の竜の力なんて所詮はこの程度だ。この刀を折りたければ力を取り戻してからやるこった」


「半分以下の力だと。どういうことだクロ?」


『…………』


「まあ、そんなことはどうでもいい」


 いつの間にか接近していたシロウはアスカの首元に剣先を突き付ける。この状態で反撃しようなどと考える奴はいない。どちらかと言えば、するのは死の覚悟だ。

 後この刀をちょいとでも押し込めば、アスカの喉に刀は突き刺さり声を奪うだろう。


「…………」


「………チッ」


 しかし、何故かシロウは刀を降ろして洞窟の出入口の方を向く。その行動に疑問を持ったアスカもシロウの後ろから洞窟の出入口を見る。


「……まーたあいつらか」


「また?」


 洞窟の外にはローブを被った集団が、この暴風雨の中をキョロキョロと何かを探すような仕草をして歩いていた。物ではなく誰を探しているような感じであった。


「あれは?」


「ゴキブリ並にしつこい追手、と言ったところだ。それよりお前、やっぱり運がいいな」


「はぁ……?」


 しかし、あれがシロウの追手だと言うのならばここから出るのは危ない。捕まれば、間違いなくよからぬ事をされるだろう。

 すると、シロウは手に持つ刀と背負っていた1本の剣を抜く。そしてその剣の中に()()()()()()()


「何だ今の……」


「少しどいてろ」


「……わかった」


 アスカがシロウから離れると、シロウは手に持った刀を融合させた剣を先程の赤黒い稲妻を纏わせ、何もないところで横に振る。剣は風を切り、それだけでどれだけの強さで振ったのかがわかる。

 すると、剣で切った場所がまるで空間が切れるようにスパッと開き、人が通れるくらいにまで広がる。


「こっちだ、来い」


 シロウは自分が開けた空間に入って行き、アスカも続いて切り開かれた空間の中に入って行った。

流石に設定持ってきすぎたかもしれませんね……

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