第41話 胸が小さい人ならではの悩み
サブタイトルがなんというか……そのまんまな気がします。
いいのが思いつかなかったのですはい。すみません。
ギルドを出たアスカ達はもう夕方ということで夕食をとるためにそれぞれ途中で解散した。
そして、アスカとレンは別れた後に宿を探す。いつもこの2人だな、なんて思っているであろうが、この2人は元から仲間だ。別れてからも一緒に行動することに関しては何もおかしくはない。
宿を探すと言ってともお金は有り余っている。しかし、支出のバランスを崩さないために前に泊まった高級ホテルのような宿にはあえて泊まらない。そこそこ普通で高級過ぎず、これに限る。
「ここなんてどうですか? そこまで大きくないですけども小さ過ぎるとも言えません。つまり丁度いい感じというわけです」
「それじゃあその宿にしよっか。もうクタクタだから早く入って部屋取ろ!」
「は、はい」
まるで初めて宿を見た子供のようにテンションが高いアスカはにっと笑ってレンの手を掴んでそのまま宿の中へと入っていった。
宿の中は至って普通の西洋チックな内装であった。流石に噴水はないかとレンは思うが、逆に噴水がある宿の方がおかしいのだと考えなおす。
「いらっしゃいませ。何泊でしょうか?」
「んーっと……」
「あ、アスカちゃんやっほー!」
アスカが何泊するかを言おうとした瞬間、近くの椅子でくつろいでいたソニアに遭遇する。同じ宿に来てしまうだなんて、色々と運命とか縁とかを感じてしまう。
「ソニアー!」
「おぉー! ついに呼び捨てで呼んでくれた!」
「……もうわかりません。色々と」
この状況にレンは色々と情報量が多すぎて処理が間に合わず、次第にレンは考えるのをやめた。
「それで、部屋は決めたの?」
「うんん、今から決めるとこ」
「そう……なら私の部屋に来ない? フレアも別の部屋にいるから、レン君はそこで泊めてもらえば? 追加の料金は払うから」
「ならそれでいいや。レンもいいよね?」
「別に構いません」
「わかった。すみませーん──」
それからソニアとフレアがそれぞれ泊まっている部屋の人数変更を行い、ソニアがその分の追加料金を支払った。その追加料金だが、やはりあのホテルのような宿とは違い結構安かった。いや、逆に向こうが高過ぎるだけなのだ。まあ、あれだけ豪華な内装と部屋と料理を用意してくれているのだから当然といえば当然の値段だ。
「支払い完了っと」
「あの、よかったんですか?」
「いいのいいの。私だって貴方達がいない間にクエストとか行ってるんだからそれなりに持ってるわよ」
「そうですか、ありがとうございます」
ソニアが支払いを終えるとレンは頭を下げる。それに対してアスカは宿の中をあちこち歩き回っていた。こういった行動もまるで子供だ。
「へー、ここにも温泉ってあるんだー」
「あるわよ。というか、近くに温泉が湧き出てる山があるお陰でこの街にある宿の殆どに温泉はあるわよ。流石にケントロの町全部に温泉って言うのは無理があるかもしれないけどね」
「けんとろの町?」
「ここら一帯にある街を合わせてそう呼びます。因みに、話にあったリルスの街もケントロの町の1部です」
「……多分理解」
一体どこからどこまでがケントロの町に所属しているのかはわからないが、大まかな意味は理解したアスカであった。
「それじゃあ荷物置いたら入ろうかしらねー」
「賛成!」
「あら、前みたいに嫌がらないのね」
「ほら、そんなことよりも早く入ろ!」
「はいはい」
そう言ってアスカとソニアは1度部屋に戻り、アスカの荷物を置き温泉に浸かる準備をすると早速温泉に向かった。この光景を見ていたレンは本当に姉妹のように見えてしまった。
しかし、それと同時にアスカの性格の変化にやはり目を向けずにいられなかった。あれだけソニアと温泉に入るのを避けようとしていたアスカが、全く避けるような言動1つせず、逆に喜んで一緒に入っていったのだ。
あの時のユノスやツカサのように、レンもアスカに対して流石にこれは何かおかしいと思いはじめていた。
***
脱衣所に入ったアスカとソニアはさっさと服を脱いだ。ソニアは自分の裸体を見ても特に何も言わないアスカに対して、なにか少しいつもと違うと感じた。だが、たった1日一緒に温泉に浸かったことで色々と慣れたのだろうと自分を納得させる。
「洗い方とかは覚えてるわよね?」
「多分大丈夫だと思う」
「まあ、困ったら言いなさい。また教えてあげるから」
「わかった」
前のようにスタイリッシュな動きをしてタオルは取らず、普通に手渡しで渡してもらったアスカはソニアと共に浴室の中に入る。浴室の中はあの高級宿のようにバカ広いわけではなかったが、ここに泊まれる人数くらいは軽々入れるくらいの広さであった。人によってはこちらの方が好みなだと言う人もいるだろう。
見た感じ、銀髪が特徴的な女性が1人だけ温泉に浸かっている人がいた。ゆっくりリラックスして浸かっているようだったので邪魔しないようにとできる限り静かにシャワーを浴び、頭と体を洗うアスカとソニア。
「先に浸かっとくね」
「そうして。もう少ししたら私も入るから」
泡を流し終えたアスカは髪をくくり、体を拭く用のタオルを持って湯船へと向かう。別にどの場所に浸かろうと誰も何も言わないが、アスカは既に浸かっていた人の邪魔はよくないと少し離れた場所で浸かる。
「……急に熱く感じないのはやっぱりあれのせいかな」
アスカは変異した刃翼竜によって気温の下げられた場所にいた。だからか、体の温度感覚が少し狂っている。恐らく、ラドやユノス達も同じようになっているだろう。
「あれ、アスカさんじゃないですか」
「ん? あ、アリサ!」
突然声がかかり、声の方を見てみるとそこにはつい先程別れたアリサがいた。そうとわかるとアスカはアリサの方に近付いて行った。
「ついさっきぶりです」
「どうしてここに?」
「それはこっちのセリフですよ。私の場合はユノス達とここに一昨日からここに泊まっていて汗を流そうと温泉に来ただけですけども」
「私も今日一泊するために来て温泉に来たら遭遇したってだけ」
「ふーん……」
お互いに聞きたいことを聞くと、アリサが突然アスカの胸を見てくる。そしてその後に自分の胸を見ながら触れ、よしっと小さくガッツポーズをする。
「どうしたの?」
「ん、別に何もないですよ」
「もしかして……胸の大きさを気にしてたりする?」
「……き、気のせいですよー。べ、別に胸なんて気にしてませんし」
「あら、結構気にしてるみたいじゃない」
そこに体と頭を洗い終えたソニアが入って来た。そして、入ってきたと同時にアリサはソニアの胸を見てムッとする。何故ならば、ソニアの胸ははっきり言ってアスカとアリサの胸の大きさを合わせても届かないほどに大きかったからだ。
だからと言って爆乳とかそういうのではなく、程よい感じの大きさで所謂美乳と呼ばれるものだった。それもアリサが嫉妬の目を向ける理由になっている。
「えっと、アリサちゃんでいいのよね?」
「……そうですけども、何ですか?」
「言っておくけど、胸なんであっても肩がこるだけよ?」
「それは巨乳がよく言う言葉ランキング第1位の言葉です。よく重いと聞きますが、それでも大きい方がちゃんとした恋愛ができるとも聞きました」
「あら、その胸の小ささも可愛さの1つなのに」
「私を好きだなんて言う人はロリコンかただの女とヤリたいと考える男だけです」
「本当にそうかしら?」
「そうですよ」
アリサとソニアが胸と恋愛について話している間、アスカは1人温泉の窓から見える夜空を見ながらリラックスして浸かっていた。
温泉に入るにはリラックスしてゆっくり浸かる。そうすれば1日の疲れがまるで氷が溶けるように取れていく。同時に睡魔も襲ってくるが、ここで寝るのは少し危ないので睡魔だけは我慢する。
「さて、私はそろそろ上がるとします。結構前からいたので」
「そう言えば、ユノス達もいるの?」
「多分隣の男湯にいると思います。まだいるかはわかりませんが」
男湯にいるのであれば、もしかするとレンが遭遇しているかしれない。この温泉は覗かれるような穴や隙間はないので覗かれる心配がないが、隣の声が聞こえないのでいるかどうかがわからない。
「それでは、宿も同じということなのでまた朝にでも会いましょう」
「お疲れ様、バイバ〜イ」
「胸を大きくしたいなら乳製品とか大豆製品、海藻類を食べるのをオススメするわ。それと、マッサージとかしてみるのもいいわね……。あ、それと」
「もういいです! わかりましたから、それ以上私に恥ずかしい思いをさせないでください!」
「そう。まあ試してみなさい」
「……少しだけですよ。どうせ失敗すると思いますが」
そう言ってアリサは湯船から上がり軽くタオルで体を拭いた後に浴室から出て行った。
「……やっぱり貧乳の子って可愛いわ」
「……ふぁ〜」
「ところでそこでリラックスしてるアスカちゃん。さっきアリサちゃんにオススメしたマッサージを受けてみたい?」
「遠慮しとく〜。ソニアの目を見ればあっち系の目的で気する気満々にしか見えないから」
「そう、残念ね。無理やり襲うのはダメだから許可を得た上で襲おうと思ったんだけどな〜」
「やっぱりそう言うのが目的じゃない」
それからしばらく2人は窓から夜空を見ながら湯船に浸かった。そして、ある程度の時間浸かるとアスカとソニアは浴室から体を軽く拭いた後に出て行った。
まさかの再びお風呂回という。




