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第3話 目覚めたら街なんて都合のいいことはなかった

転移先が街の中じゃないのか、ですと? バッキャロー、甘ったれてんじゃないぞそこ! そんなに人生うまく行くわけないではないか!

 とある森の中。そこに1人の男が幾つもの木の実が入った籠を持って歩いていた。その男はこの深い森を迷うことなく真っ直ぐ歩いていた。

 その時、男は倒れている人間を見つけた。男にとってその人間は知り合いではなく、見たこともない服装をしていた。


「と、とにかく運ばなくては!」


 男は自慢のパワーで片手に木の実の入った籠、もう片方にその人間を担ぎ、全速力で走って行った。




***




 とある村の家にて、男が運んで来た人間──ハクノ アスカは目を覚ます。ゆっくりと体を起こし、ここがどこなのかや周りに誰がいるのかなどを部屋中を見て確認する。


「……誰も、いない?」


 念の為にコンバットナイフを持ち物から実体化させて構える。いつ、どのタイミングで誰かが奇襲を仕掛けてきてもすぐに対応できるように。


「……異常なし、でいいのか?」


「たっだいまー!!」


「っ!?」


 アスカが警戒を解いた瞬間に部屋の扉が開く。突然のことにアスカは驚き、持っていたナイフを自分が寝ていたベッドの下に落としてしまう。


「お、なんだ目が覚めていたのか」


「え、えっと……あの……その──」


 突然の人の出現、ナイフを落とす、この2つにアスカのコミュ障が加えられ、アスカは今までにない以上の緊張と混乱を起こしていた。急いでナイフを拾おうとしても緊張で手が震えてしまい上手く握れない。


「ん、なんだそのナイフ。見たことない形状だな」


「……ハァ……ハァ……」


「って、大丈夫か嬢ちゃん!? 過呼吸になってるぞ!?」


「……大、丈夫、です……」


 アスカが1度パニックを引き起こせば周りの声はほとんど聞こえない。それは転移する前の世界でも同じだった。

 アスカは昔から、人と話したり突然の出来事に苦手だ。その理由は極度の緊張によるものだ。しかし、それが無ければアスカはとてつもない集中力と冷静さを出すことができる。『ジ・エンドオブサバイバル』での狙撃スキルの高さはその集中力と冷静さがあってこそのものだ。


「落ち着いたか?」


「……はい」


「にしても、目が覚めて何よりだ。あの過呼吸は持病か何かが原因か?」


「……いえ、発作のようなものです」


「……もしかしてだが、人と話すのは苦手か?」


「苦手、ですね。どうも緊張してしまって……」


 アスカにとって、この緊張は改善すべき目標だ。焦りは戦闘時において不利になる原因だ。その焦りの上位互換である混乱はもはや不利になるどころの話ではない。混乱=負けなのだ。

 それを改善しなければ、もし自分が最強の能力を持っていたとしても雑魚同然だ。


「ここはどこですか?」


「ここか? ここは──この村はナチュランの村。そこらの街よりは遥かに小さいがこの自然に関しては絶対にどこの街や村にも負けないぞ! んで、この家が俺の家。木の実を取りに行った帰りに人が倒れてるもんで驚いたぞ」


 恐らく、転移する前にしていた『ジ・エンドオブサバイバル』の徹夜プレイのせいでなってしまった睡眠不足が原因だろう。

 まさかこんな所でツケが回ってくるとは思いもしなかったが。


「態々運んでくださり、ありがとうございます」


「礼なんていらねぇよ。それより、目覚めたのなら1度外に出ときな。ずっと寝てたんだから少しは身体を動かした方がいい」


 アスカは知らないかもしれないが、この男がアスカを見つけてから一日が経過している。リハビリがてらに動かしておかなければ、いざと言う時に満足な動きができない。


「それでは、少しだけ」


「少ししたら帰ってこいよ。嬢ちゃん飯を食ってないからな」


「ならば先にいただきます」


「すまねぇな。まだ調理過程なんだ。さっき出て行ってたのは薪の回収だ。薪がなきゃ煮込めないんでな」


 このナチュランの村はそれほど発展しているわけではない。だから、この村中に魔法を使った物──通称魔具はそれほど無い。勿論ガスとかもないのでガスコンロもない。火の起こし方は至って原始的で、焚き火をする時と同じ要領だ。


「まあ、調理完了まで時間があるからそれまでは外で体を動かしたらどうだってこった」


「わかりました。空腹で倒れそうになった場合は帰ってきます」


「そうしてくれ。ついでにこの村の道とかも覚えておくといい。そこまで広くないから覚えやすいとは思う」


「そうしておきます」


 そしてアスカはベッドの上のナイフを回収した後に男の家から外に出た。

 村の外は男が言った通りに大木や草などの自然が沢山あった。その分虫が集まりやすいのか、村の子供たちは虫あみを持って走っていた。


「……平和だな」


「そうでもないわよ」


「っ!?」


 アスカの呟きに1人の女が返答してきた。またしても突然のことに混乱仕掛けるアスカだが、冷静に考えるとただの村人が話しかけてきただけで何も焦る必要は無い。

 アスカは深く深呼吸をして、心を落ち着かせた。


「ふぅ……そうでもない、とはどういうことですか?」


「そのままの意味よ。平和にしているのは私たち冒険者。この村の周りには魔獣がうじゃうじゃいる。それを冒険者が倒してるからこそこの村は平和なのよ」


「……魔獣……ですか」


 魔物ではなく魔獣。それがこの世界の人間と敵対関係がある生き物。いや、生きる為に倒さなくてはいけない生き物、と言うべきか。


「ま、冒険者たちも魔獣を倒してその素材で武器作ったり防具作ったり色んなことをしている。売ればお金になるしね。村の平和は守られて冒険者たちもお金は稼げるし武器とかの強化もできる」


「ウィン・ウィンの関係ってやつですか」


「そ。まあその分冒険者は死と隣り合わせ。もし貴方も冒険者になるのなら死ぬ覚悟をしてからなることね」


 そう言うとその女は1つの建物に向かって歩き始めた。恐らく、あれが冒険者ギルドというものなのだろう。


「あ、あの、名前教えて下さい」


「ん、ああ、名前ね。ソニアよ。そっちは?」


「アスカです」


「アスカちゃんね。もし冒険者になったとしたらよろしくね」


「アスカ……ちゃん……ですか。ははは……」


 そして女──ソニアは冒険者ギルドの中へと入っていった。

 死と隣り合わせの冒険者。そして、アスカに限らず転移希望者が持つ能力はいずれも戦闘向け。


「……冒険者やるか」


 結局のところお金を稼ぐ方法が戦闘に関するものしかできないので冒険者にならざるを得ない、というのがアスカの結論だ。恐らく、アスカ以外の転移希望者もそう結論づけたに違いない。


「おーい、完成したぞーって思ったより近かったな」 


「すみません、少し話し込んでいました」


「どんな話かってのは飯を食いながらゆっくり話そうじゃないか」


「そうですね」


 そしてアスカと男は家に食事をするために戻った。

書きだめがなくなってきたぞ……。

書かなくては!

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