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第30話 女の子って難しい 後編

序盤微エロ注意です。苦手な方はご注意ください

 それから髪の洗い方やどう洗うのがいいのかを教えてもらいながらアスカは体を洗っていた。

 直接触れられて教えられたのは体を洗う時だ。自分の体を直接触れて洗ったことのないアスカは自分の勘を信じて洗っていたのだが、ソニアには様々な点でかなりダメ出しされた。

 その時にどう洗えばいいのかをアスカ自身の体を使って実演してくれた。しかし、その時のソニアの手つきがいやらしく、デリケートゾーンとまでは行かないが何度か胸を揉まれた。その度にちょいちょい反応してしまい、アスカには恥という感情が溢れていた。


「そうそう。そんな感じよ」


「……背中ってどうするんですか? いまいち届かないんですけど」


「それなら私に任せなさい。どうせならそのまま下の方も」


「そこは流石に自分で洗うので結構です!」


「そう、残念ね」


 あの手つきで下の方まで任せてしまったら健全ではなくなってしまう可能性があるので拒否する。しょぼんとした表情をしながらソニアはアスカが届かない背中を優しく洗っていく。

 しかしその手つきはただ洗うにしてはやけに回したり揉んだりしている。まるでマッサージのようだった。


「……んっ……」


「んー、中々いい反応ね。いつまで抑えられるかしら?」


「人を襲っている時に言いそうな言葉は止めてください。誤解を招きます」


「声漏れの心配はないから安心しなさい。男湯の方の声が聞こえないのが何よりの証拠でしょ?」


「そういう問題じゃ……ひゃっ!?」


 追撃と言わんばかりにまたしても小さな胸を揉まれる。

 今は女だから世間的には問題視されないが、アスカの精神は男だ。このなんとも言えない事態でもしもソニアがアスカの秘密を知ればどういう心境になるだろうか。アスカはそんなことをふとおもった。

 しかし女の肌というのはどうも敏感で、少し触られただけでも反応してしまう。その時に出る声が元男とは思えないほどに女っぽい悲鳴。その事にアスカは恥ずかしさと共に男としての精神が削られていく気がした。

 そんかことよりも、このままでは色んな意味で危ない。


「肌も子供みたいにもっちりしてて髪の質もサラサラでいい。私も昔は……」


「今でも綺麗ですよ」


 こういう場合は取り敢えず褒めとけと誰かから教わった気がする。そうすれば照れることで一瞬の隙が生まれこの少し危ない雰囲気と拘束から逃れることが出来る。


「そう、ありがとね」


「よし、今」


「でも逃げないでー」


「うわっ」


 アスカは一瞬の隙が生まれた瞬間に立ち上がってその場を離れようとするが、見事な反応速度でソニアに肩を掴まれ座らせられる。そして今更だがこの2人、同じ椅子に座っている。つまり超密着状態という事だ。

 しかし、大抵の人ならばこの方法でこの雰囲気からは抜け出せられるのだが、アスカには1つだけソニアの特徴を見逃していた。それは──


「全く……今の私を1人の女として褒めてくれるなんて……全く可愛いわね」


 ソニアは褒めると照れるがしかし、その褒めた後に照れるタイプではなく調子に乗るタイプであったという事だ。


「それに、まだ泡がついてるのにそのまま入ろうとしたの?」


「それじゃあこの手を離してください」


「触り心地いいからやーだ」


「そんな生地が良い抱き枕みたいな扱いしないでくださいよ!」


「それー!」


「ひゃん!?」


 そしてまた油断しているところにソニアの右手がアスカの胸に、左手はツーっと背中を指でなぞる。これでも一応背中を洗ってくれているらしいのだが。


「あともう少しよ。我慢して」


「そう、言われましても……」


 このままでは何かに目覚めそうな危機感を感じたアスカ。だが、先程の作戦が失敗した以上より警戒されているだろうし何より両足で腰をがっちり挟まれている。


「んっ……はっ……」


 ついつい出てしまう声を必死に抑えようと両手を口に抑える。

 そしてそのままソニアは、胸を揉んでいた右手は腹を触りながら下に向かっていき──


「はい終わり!」


「え、は、え?」


「背中、洗い終えたわよ。それとも何か期待してた?」


「い、いえ、そんなことは決してないです! てか有り得ません!」


「そこまで否定されると傷付くわね……」


 アスカの背中を洗い終えたソニアはがっちりと挟んでいたアスカを離し、椅子から立ち上がる。そして泡だらけのアスカを置いてソニアが最初に座っていた場所に戻って行く。

 アスカ自身、このままこういう展開もありかもと思い始めていた頃合だったのでいろんな意味で間一髪であった。


「それじゃあ私はまだ洗えてないところがあるから先に泡流して湯船に浸かっておいて」


「わ、わかりました」


「あ、髪くくるの忘れないでね」


「それは大丈夫です」


 ただ温泉の浴室にて人がいない、片方が無知、なおかつ女湯という条件が揃うだけでこういう展開になるのだと学んだアスカであった。

 アスカは体についていた泡を流し、浴室に入る前に貰ったゴムで簡単に髪を結びタオルを持って湯船に向かう。


「どうせなら露天風呂に浸かっていいですか?」


「別にいいわよー」


 ソニアの了承も得たところで、アスカは露天風呂に向かう。スライド式の扉を開け、露天風呂がある外に出ると真っ先に見えたのは黄昏時の空であった。


「そっか、まだ夕方だったな」


 この露天風呂は丁度夕日が見えるように作られている。大抵の人は夜に浸かりに来るためこの景色を見ることは出来ないので、少し早めにここに来たことに少し得した気分になった。


「はぁ〜」


 湯船に浸かるといい歳した女の子特有の甲高い声でおっさんのような仕草をする。

 体は女でも精神は男だ。多少仕方はないとは思うが治していかないといざ他の人がいる時に出てしまえば明らかに目立ってしまう。


「……これ、消えないのか……?」


 アスカは今朝から自分以外には見えない謎の痣がある手を上にして見る。

 一体この痣が何を意味しているのかはわからない。

 更に言えば、この痣の形が何をモチーフにしたものなのかもイマイチ分からない。


「これは……翼? いや、尻尾にも見えなくはないな……」


 辛うじて100%蛇では無いということ以外、この痣については全くわからない。あの日の夢が関係しているのであろうが、アスカはその夢についてをほとんど覚えていない。逆に夢の内容を覚えておくのには無理がある。


「アスカちゃんお待たせ〜」


「っ、は、はい」


 ソニアが突然後ろから露天風呂に入ってき、咄嗟にアスカは痣の付いている手を降ろして温泉の中に隠す。

 しかし、こうして見ても慣れている人に対してにのみだが、過呼吸を起こさなくなったところを見ると、この世界に来てからアスカは対人関係の面で成長している。


「よいしょっと」


「………」


「その手、あまり気にしない方がいいわよ。怪我なんてすぐ治るわよ」


「……そうだといいですね」


 いざ2人っきりになってみると特に話すことがない。ダンジョンについての話はレンを含めた3人で話さないといけないのでここで話す内容としては相応しくない。

 ならば世間話か。いやしかし、こんな変異種の騒ぎでの集合が明日に備えているのにこんな話をするのはおかしいだろう。それに今思えば、今日の買い物も少し気を抜き過ぎではないだろうか。

 今回は運良く来なかったが、もしもあの時にまた変異種の件で緊急クエストでも発令されてみろ。あの気の緩んだまま戦闘することになっていた。気の緩みは焦りと同じくらいに戦闘においては気を付けなければならない。もっと気を引き締めなければ──


「ちょっと悩み過ぎよアスカちゃん」


「ふぇ?」


「ずっと上向いたまま動かない。人が悩んでる時か考えている時によくする行動よ。少しは楽にしなさい」


 一体何が言いたいのだろうか。いつ緊急クエストが起きてもおかしくないという状況の中、気が抜けるのは良くない。そう考えることのら何かおかしいのだろうか。


「いい? 確かにこの状況で気を抜くのはよくないかもしれない。けど、時にはリラックスも必要よ。考え過ぎや悩み過ぎは時に自分の体を壊す原因になるわ」


「……確かに、そうですね」


 実際アスカ自身にも中学生の頃、対人関係の面で悩み過ぎて自分の言いたいことや感情を押し殺していた。そしてある日、その押し殺していたものが爆発し、数日寝込んだという経験がある。

 確かにソニアの言う通り、常に気を引き締めるよりも時には休憩を挟み、体を壊さないようにするのも大事だ。


「……ハァ……取り敢えず、これでも見て少しは気を楽にして」


「はい……って、どれですか?」


「まあ見てて」


 するとソニアは露天風呂から上がり、男湯の露天風呂との仕切りに向かう。そしてその仕切りに手を当てて、何かを呟き始めた。何やら魔法の呪文のようだが……。


「さよなランサァア!!」


「何その掛け声!?」


 その瞬間、まるでホースから水が出るような音が聞こえ、それと同時に男湯の方から2名程の悲鳴が聞こえてきた。それもアスカにとってかなーり聞き覚えのある。


「私はともかく、まだ少女のアスカちゃんを覗くのはどうかと思うけど?」


「……いいし、まだ胸小さくてもいいし。胸小さいのは元々男だったから仕方なしい……」


 ソニアの言葉に今度はソニアに聞こえない声でブツブツと拗ねはじめるアスカだが、それほどまでに胸のことを気にしているのだ。

 タクトがアスカを女にした癖に何故胸を小さくしたのか。それがタクトの好みなのかはわからないが、どうせならそこそこ大きい方が良かったと思うアスカであった。


「な、何のことですか?」


「僕達はただそこを通りかかっただけで……」


「聞こえないように喋っていたようだけど、残念ながら私には聞こえていたわよ。確か『もう少し、あと45度こっちに向けば……!』だったっけ?」


「「ギクッ」」


「……ギグッて言葉に出す人って本当にいるのか。それよりもさっきの角度計算は何?」


 アスカ自身、元男として女の裸体を見たいという気持ちはわかるが、実際に覗かれる側になると覗いていたレンとフレアに対し妙な嫌悪感が出てくる。それよりも、この宿内は魔法の仕様は禁止だったはず。


「それって魔法ですか?」


「魔法と言うより魔力の応用ね。この仕切りにある水に魔力を通して操るって原理よ。そしてさっきはそれを集中させて水のレーザーのように向こう側に撃ったの。流石に殺傷力とかはない生温い攻撃だけどね」


「ほぉ、なるほど。勉強になったぞソニア」


「貴方は少し黙ってなさい」


「残念、俺は2度同じ攻撃に当たるほど間抜けな人間ではァアー! 目が、目に水がァァアーーー!!」


「当たってるじゃないですかフレアさん!!」


「ついでにもう1発」


「ちょっ、待ってくださ……あれ、ちょっと変な音がァア目がァア! 目に光学レーザーがァア!」


「水よ」


 ソニアは覗き2人には容赦なく、謝ろうとしたレンに対しての慈悲もなかった。そしてアスカは、その光景を見て、まだそこまで気を引き締める必要も無いと感じられるようになった。

 何故ならまだこうやって笑えているのだから。

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