第21話 終焉を告げる銃弾
遅れた分いつもよりも遥かに文字数が多いです。
いつもの+3分の2文字数増量してます。
レンの立てた作戦は、決して単純なものではない。
ただ剣を刺して押し込めばいいなんて聞くだけなら簡単だが、実際やって見る側になるとその考えが一気に変わる。これはすること自体は単純に見えるが、手順と手順の間が複雑なのだと。
「仕方ねぇ、やってやるさ。ああ、やってみせるさ」
「勿論、私もやりましょう。逆に断るだなんて私にはとてもできません」
「ジョルダン、お前力は強いか?」
「いえ、私はどちらかと言えば力よりも速さを重視した戦闘スタイルです」
「そうか。なら、必然的に押し込むのは俺ということになるのか」
別にこの際誰がディアボロスに剣を刺そうが問題ではないが、押し込むのは力が強いものでないと十分に押し込まれない。そして、今動けるこの4人の中で最も力が強いのは両手剣を扱うラドになるため、必然的に押し込むのはラド。力で攻めるラドの戦闘スタイルとは真逆の速さで攻めるジョルダンが剣を刺すという役割になった。
「しかし、ずっと刺しているのならば奴の黒い霧をまともに受けてしまうのでは?」
「その辺は任せてください」
「何か策でも?」
「これで腕とか足とか撃ちますよ。そしたら多少吹っ飛ぶと思います」
ここでレンはデュアルを消し、新たに違う銃を手に出現させる。その銃とは、レンが戦った襲撃者のリーダーが持っていたあのSAAであった。
これはレンが反撃されないために奪ったものなのだが、当のリーダーの男があの有様なので戦利品として貰っておくことにしたのだ。SAAもハンドガンという種類に入っているので、レンが持つスキル『反動補正』の他に『技量(HG)』も適用される。
つまり、レンはSAAを持った時から扱う術を知っていたのだ。レンが扱うには十分なくらいの代物だ。
「なるほど。……その突然武器を出現させたことについては触れないであげます」
「それはどうも」
役割が整ったということで作戦を開始する寸前、レンはジョルダンが持つ剣をチラッと見て妙な疑問が出てきた。
「……あんなちょっと背が高い人間とそう変わりない姿だって言うのに、その剣の長さで体を貫通しないのはおかしくないですか?」
「……確かに、おかしなことに刃の根元まで入れたというのにやつの体からは出ていませんでした」
「つまりです。体は小さく見えますが中身は大きいのではないでしょうか」
「どういうことですか?」
レンの言うことを簡略に言うと、ディアボロス変異種は小さな体でも中身は変異する前のディアボロスと同じくらいに広いのだ。体の中身が特別大きな空間になっているとでも思ってもらえれば多少わかりやすくなったとは思う。
そして、このディアボロス変異種を倒すには頭をぶち抜くか心臓を潰すかのどちらかだ。今回の場合、頭は狙いにくいので心臓を潰すということになっている。
「見た目は小さいけど、中身はさっきまでのディアボロスってことです」
「だからどうだってんだ? 結局押し込めば問題ないんだろ?」
「……そうですが、もしかすると──」
「だったらさっさと作戦開始だ! 行くぞジョルダン!」
「ちょっ、ラドさん! はぁ……レンさん、万が一の時は頼みます」
「……了解」
不安が残る中、討伐の成功と失敗を賭けた作戦が開始された。
ラドよりも走るのが速いジョルダンはディアボロス変異種が出す黒い霧を避けながら接近していく。そして、十分接近したところで剣を前に出し突きの構えを取る。
「本領はレイピアで出せるのが私でしてね。こういう突きというのは得意なのですよ!」
ジョルダンが突きの構えを取った途端、急に剣が空気を突き抜けるように猛スピードでディアボロス変異種の胸に向かっていき、グサッと根元まで突き刺さった。
しかし、やはりディアボロス変異種は怯みもせず至近距離にいるジョルダンを黒い霧で攻撃しようとする。
「トゥーワッフッ!!」
そこに後から追いついたラドが謎の掛け声とと共に、黒い霧を放とうとする腕に飛び蹴りをかます。すると、黒い霧を放とうとしていた腕は後ろに吹っ飛び黒い霧も消滅する。
「押し込むぜぇー!!」
「おい、嘘ですよね!?」
「しゃがめよォ!!」
腕が吹っ飛んだことで後ろに仰け反ったディアボロス変異種のがら空きになった胸に、ラドはバットのように両手剣を構え、まるでプロ野球選手がホームランを打つかのような勢いで振った。その時に丁度ラドの目の前にいたジョルダンは咄嗟にしゃがむことでラドの攻撃の巻き添えにならずに済む。
振られた両手剣は見事にジョルダンが突き刺した片手剣の柄頭に命中し、柄頭2個分を奥へと押し込むことができた。しかし、それでもディアボロス変異種は死なないしまだ片手剣自体も押し込める。
「もういっちょー!!」
剣と剣がぶつかったことで起きた痺れがとれてから間もなく再度押し込もうと再び両手剣を構える。しかし、1度攻撃されてディアボロスも黙っているわけがない。
「ラドさん、ディアボロスが体勢を立て直しました!」
ラドが構え終えると同時に ディアボロス変異種も体勢を立て直し、再び片手剣を押し込もうとするラドを最優先で攻撃しようと黒い霧を出現させる。このままでは、どちらかが先にやられるか相打ちかのどちらかだ。
「相打ちには、持って行ってやる!」
ディアボロス変異種の攻撃と同時にラドも片手剣の柄頭に向かって両手剣を振る。しかし、ほんの誤差でディアボロスの攻撃の方が少しだけ速かった。そして、ディアボロスの攻撃が命中するまであと数ミリというところでまたもディアボロスの腕が吹き飛ばされる。しかも、今回はディアボロスの黒い血を流して。
「そのまま行ってください!」
ディアボロス腕を吹き飛ばしたのはSAAを持つレンであった。もしもUSP9で撃っていたのならば怯みもしなかったであろうが、SAAは1発1発が高威力。最初のラドの飛び蹴りをした時よりも大きく体勢を崩し、反撃と防御が共に間に合わない。
「ウォオオリャァアアー!!」
再びがら空きになったディアボロス変異種の胸にもう一度、先程よりも腰の入った振りを柄頭にぶつける。柄頭に命中すると、1度目よりも更に深くへと押し込み、同時にディアボロスの体ごとぶっ飛ばした。
「ハァ……ハァ……どうだ!!」
グッとガッツポーズをして倒れたディアボロス変異種を見下ろすラド。そして、この一撃によってディアボロスを討伐できたのかを確認しにジョルダンがディアボロス変異種に近づいて行く。
しかし、ジョルダンがディアボロス変異種近くに来ると同時にディアボロス変異種がゆっくりと立ち上がった。
「何だと!?」
「そんな……」
ディアボロス変異種は再び立ち上がり、ゆっくり着実に1番近くにいるジョルダンに近づいていく。
「やっぱりか……」
「やっぱり、とはまるでわかっていたかのような言い方ですね……」
「まさか、とは思っていた。あの剣はまだ……奴の心臓に届いていない!」
「何だと!?」
レンが考えていたまさかの事態とはまさにこのことである。剣が心臓に到達していないという事実がこの場合、どれだけの希望を削ぎ絶望へと変わるのだろうか。
「先程も言った通り、奴の体の中は広いんです。前のサイズから考えると、後少し──柄頭2個下3個分奥に押し込めば心臓に届くと思います」
「だけどよ、もう押し込めるくらいに柄に余裕が無い!」
「だったら、僕のこの──」
剣で押し込むのが困難な程に奥へと押し込まれたのならばと、レンがSAAを構えた途端にディアボロス変異種がもうやられまいと体の周りに黒い霧を発生させ刺さった剣の場所を隠した。流石にここまでやられれば死ぬとディアボロス自身が理解したのだろう。
「一か八か!」
レンは先程まで見えていた剣の場所を狙って撃つ。
しかしその銃弾は、そもそもディアボロス変異種に命中せず黒い霧に吸い込まれるように消滅する。
「な、何ィー!?」
この瞬間、はっきりとこの場にいる全員が「もう手の打ちようがない」と言う考えが出てくる。誰も自分達が勝利するイメージがどうやってもできないのだ。
それは遠くからスコープで様子を見ていたアスカも同じで、レンのSAAが効かないとなるとスナイパーライフルを撃ったところで結果は同じだろう。
「……せめて、せめて1発だけでも……!!」
ほとんど何もしていない自分が許せず、せめて最後に1発だけでも当てるとスナイパーライフルを構える。
「その目……いい目をしてるね。気に入っちゃった」
黒いドレスを着た少女がアスカを見てそう言うと、
アスカの背中に両手を置いた。
「な、邪魔するなって!」
「まあまあ落ち着いて」
「落ち着いてって、だったらその手を──!?」
「フフ……」
瞬間、アスカは自らに流れてくる異質なものの存在を感じとった。それは魔力に近かいがただの魔力とは何かが違う何かを。
「これは……」
「私の力を少し分けてあげたの。どう、嬉しい?」
「嬉しいって……お前、何者だ?」
「そんなことよりも、お仲間さんがピンチみたいだよ?」
その言葉を聞いてアスカはすぐにスナイパーライフルを構え直す。スコープを覗いた先では、あまりにも希望を削がれたことによって動けずにいたジョルダンがディアボロス変異種の黒い霧に包まれる寸前であった。
「落ち着けアスカ……そんなに焦ることない。焦りこそ最大の弱点……」
黒い霧に隠れたことによって見えなくなったディアボロス変異種の姿をスコープをサーマルスコープに切り替え、温度差で見極める。除く先で温度があるのは地面とディアボロス変異種、ジョルダンの3つだ。黒い霧は動いている。
つまり、動いていないかつ温度のないものがジョルダンとラドが押し込んだ片手剣という事だ。
「…………」
アスカがスナイパーライフルの引き金に指を置くと体から自身の魔力とは違う先程の異質なものが出てくる気がした。だが、そんなことをいちいち気にしていられない。
「……ここだ!」
丁度ディアボロス変異種が動きを止めたタイミングに刺さっている片手剣の柄頭に向かって銃弾を撃つ。
その撃たれた銃弾は、自分が見なれてきた銃弾とは違い、はっきりとわかるくらいの白と黒の光を放っていた。
そしてその銃弾は、ディアボロス変異種を守っていた黒い霧を殺菌の如く晴らし、アスカの狙った片手剣の柄頭のど真ん中に向きと傾きがベストの状態で命中し、更に奥へと押し込む。
なんとその長さは──柄頭10個分!
「……う、動きが……」
「止まった……」
押し込まれた片手剣はディアボロス変異種の心臓を貫き、ディアボロス変異種の動きを完全に止めた。その目に光は点っていない。
──絶命し、討伐に成功したのだ。
「……よ、よくやった! でかしたぞアスカ!!」
「やりましたね! アスカさん!」
そうラドとレンがアスカのいる方を向いて叫んだ瞬間、その後ろからドシンッという大きな音が聞こえた。2人はまさかと思いながら振り返る。
「……大丈夫ですよ。ディアボロスの立つ力が抜けて倒れただけです」
「お、脅かすなよ。心臓に悪いだろ」
「いやいや、それをジョルダンさんに言っても意味ないですよね」
3人がそんなやり取りをしている中、アスカは自身が仕留めたことにあまり納得がいかなかった。
──これではまるで、いいところだけを取ってしまった最低の人間ではないか、と。
「いや、お姉ちゃんは全然最低じゃない。寧ろ仲間を助けた良い人間だよ」
「……それはどうも。ところで、話を聞くってこと忘れてないよな?」
「勿論。だけど──」
「おぉーい! よくやったぞ終焉者!!」
突然聞こえたラドの声で反射的に振り返ってしまう。終焉者なんてラスボスみたいな呼ばれ方をされたのはアスカ自身、全く気に入らなかったが。
そして少女がいる方を再び見ると、そこにあの少女の姿はなかった。その代わりに1枚の紙が落ちており、何か書かれていた。
『お話は今夜2人っきりで! あんまりそこにいるお姉ちゃんの仲間に見られたくないしね!』
「………」
アスカはその紙を見て、何故レン達に見られたくないのかや話すのは2人っきりじゃなければいけないのか、などの疑問が出てくる。
「何してるんですか。早く帰りましょうよ」
「……そう、だな。うん、帰るか」
「お、素はそんな男みたいな口調なんだな!」
「わ、悪い……ですか?」
「敬語なんていらねぇーよ。俺達はもう一緒に戦った仲間じゃねぇかよ!」
「……そう言ってたら、嬉しい」
前の世界のアスカの周りには、こんな人はいなかった。全員が全員集団で行動し弱い者はいじめ、略奪をしていた人間ばかりであった。
この時初めて、アスカは人に対して『嬉しい』という感情を持つことができた。
「そんじゃ──」
すると突然、ラドが先程まで引きずってきたルイスとディアボロス変異種を担ぎ始めた。
「ルイスとディアボロス持って帰るか」
「……え?」
「ルイスさんはわかりますけども、何故ディアボロス本体まで?」
「だって、そうじゃなきゃ討伐証明できないだろ。それに、この訳のわからない変身みたいなのについても知りたいしよ」
「だからって、普通片手で担ぎますか……?」
「トレーニングの1種だ」
「バカでしょ」
「バカで結構だ! ハッハッハ!」
そして、本当にラドはそのまま村まで気絶しているルイスと絶命したディアボロス変異種を片手で担いで行った。そのことについて、村に着いた時にこの光景を見た住民と冒険者達は驚き過ぎて口が開かなかったという。
疲れた




