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第18話 緊急クエスト発令

このサブタイトルどこか見覚えが……。

 その日、ナチュランの村はダンジョンよりも大きな事態が起きていた。それは──


「緊急クエスト……ねー」


「そうです。それもボーナスとかそういうのではなく、普通に討伐です」


「他のクエストとはどう違う?」


「さあ、僕も初めてなのでよくわかりませんが、緊急クエストには冒険者にとって得──所謂ボーナスなものと危険度が高く討伐が困難な魔獣を大勢で討伐するものの2つがあるらしいです」


 ボーナスな緊急クエストとは例えば、とても弱く、素材が高値な魔獣が大量に出てくる時期に討伐して金策をするというものがある。因みにこの緊急クエストは年に2度発令される。

 そして、現在進行形で発令されている緊急クエストは高難度の魔獣を討伐する方の緊急クエストだ。何気にこの村での発令は実に30年ぶりだという。


「そういえば、ソニアさんは?」


「えっとですね。どうも、あの5人組にセクハラをされたらしく早朝に5人組と裁判を起こしたらしいんです」


「そんなすぐに裁判なんて起こせるのか?」


「世界自体が違いますからね。きっと起こせるのでしょう」


「因みに裁判所の場所は?」


「セヴィオルナというこの世界の中心とも言える大きな街だそうです。たがらこれからこちらに向かおうとしても多分というか確実に無理ですね」


「わお」


 こんなのんびりとした会話をしているが、実際2人は結構本気で走って冒険者ギルドに向かっている。

 アスカには説明されなかったが、この冒険者ギルドには緊急クエストにおいて幾つかルールがある。その中の1つに『緊急クエスト発令時、その時に発令された街・村にいる冒険者は全員1度冒険者ギルドに集合する』というものがある。緊急クエストなんて参加自由だと思っていたアスカはその説明をレンから聞いた途端、ぶっ飛んで行き今に至るというわけだ。

 説明をしていなかった受付の人も悪いが、受付の人は()()()()()()と言っていた。細かいルールは自分で確認しろとのことだったのだろう。


「すみません、遅れました!」


 ギルドに到着してすぐに勢いよく扉を開ける。しかし、そこには昨日程の冒険者が集まってはいなかった。


「あれ?」


「これで5人……ですか。まあ、昨日にダンジョンの騒ぎがありましたしね」


 ハァっとため息をつく受付の人。しかし、何故こんなにも人が少ないのか。

 昨日はダンジョンに行こうと大勢の冒険者がこの村に集った。その数は無論、今のような片手で数えられるほどの人数ではなかった。


「これは恐らく、昨日ダンジョンへ行った冒険者のほとんどが帰ってきていないパターンですね」


「それって無事なのか?」


「無事かどうかはわかりませんが、ダンジョンにガチで潜る人達はダンジョンの中でキャンプを立てると聞きました。そこで睡眠を取って再び探索するのでしょう」


「そこの冒険者の言う通り、今回の緊急クエストは人手が本当に少ないです」


 レンの話に合わせて説明する受付の人。正直この受付の人が加わればいいのではないかと思うが、その間このギルド内がもぬけの殻になるわけだ。それはギルドとしても避けたいはずだ。


「しかし、今回の緊急クエストは高難度の魔獣。魔獣名はディアボロス。人型、討伐難易度5の魔獣です」


「いまいち強さがわからないのでわかりやすい例えをお願いできませんか?」


「討伐難易度2のウルフの攻撃力と体格が10倍以上です」


「嘘だろ」


 所々跳ねた赤髪が特徴の冒険者の質問を受付の人は冗談なしで答え、その答えを聞いた冒険者は軽く絶望している。

 1度だけアスカもそのウルフという魔獣を相手にしたことがあるが、遠くから仕留めているのでその強さはわからないが、体格が10倍以上となればその大きさは計り知れない。


「討伐しない、という選択肢は?」


 次に、この中で1番がたいがいい冒険者が質問する。


「ありません。今回ディアボロスが現れた地帯は我々がよく物資を運ぶ経路なのです。もし討伐できなければ明日からこの村の食料が制限されます」


「それはまた、どうしてそんな所に現れたんだ? この村付近はそこまで強い魔獣はいないはずだろ?」


「それが、ギルドの偵察隊からの連絡から得た情報なのですが、()()から逃げて来たようなのです」


「何かから?」


「その何かの正体も不明です。しかしこれに関してはギルドが調査しているとのことです」


 その何かとは、討伐難易度5の魔獣をも恐れる相手ということだけは、今ここにいる全ての人が理解した。

 だがしかし、今はともかくディアボロスを討伐しなければこの村の物資を運ぶ経路が一時的に封鎖され、村にくる物資の量が減ってしまう。結果、食料など様々なものに制限がかかってしまう。そうなってしまえば、今ダンジョンに行っている冒険者達からの苦情は殺到するだろう。主にギルドとその時にこの村にいた冒険者に。


「相手が強くても、そこで諦めるのは嫌だね」


「てめーみたいなお子様にそんなこと言われる筋合いはないな」


「それは酷い言い様だ。でも、僕は今いない冒険者達に苦情は言われたくないから参加するよ。食事制限なんてダイエットみたいなことはしたくないしね」


 1人の少年くらいの年齢であろう冒険者はアスカ含め全ての冒険者達に言う。


「はっ、お子様が参加するってのに大人の俺が参加しないわけないだろ」


「そうですね。そこのお2人さんも参加するつもりできたのですよね?」


 アスカとレン以外の冒険者が参加することに決めた時、その冒険者の1人がアスカとレンを見てそう言う。本来ならば「はい」と答えるはずなのだが、初対面の人から急に話しかけられたことによる緊張がアスカに出ていた。


「えっと……その……」


「なんだ? 参加しないのか?」


「あ、いえ、そういうわけでは……」


「だったらどうなんですか?」


「さ、ささんか──」


「はい、2人共参加ということでいいですよ」


 アスカが緊張のあまりガチガチになってまともな会話ができないところを見たレンが代わりに答える。これが世に言う神対応と言うやつだろう。


「そうか、なら早く来いよ。緊急クエストの移動は参加メンバーが全員集合しないと行けないからな」


「わかりました」


 がたいのいい冒険者がそう言うと少年のような冒険者と赤髪の冒険者とギルドから出て行った。


「……ありがとう」


「コミュニケーションが苦手なのは初め会った時からわかってました。今はもう会えない友達に同じような人がいたので、他人とのコミュニケーションは任せてください」


「どうしてそこまでやる? 別に放っておいてもいいだろうに……」


「貴方が僕の憧れだからです。それ以外の理由はありません」


「………」


「さて、それじゃあ僕達も行きましょう。待たせてしまっては失礼です」


「そう、だな」


 レンの言う理由に本当にそれだけなのかと疑問を抱くが、聞いたところで今優先すべきなのは緊急クエストなので答える暇もない。それに、もし仮にまだ理由があったとして、それを表に出さないところから話したくないという可能性もある。

 ここはこの疑問を解決するタイミングではないとアスカは考え、他の冒険者が向かったであろう馬車の所にレンと共に向かった。

もう一度行っておきます。精神的BLはありませんよ!

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