第15話 デュアルVSリボルバー
最初に聞こえた銃声、それはレンのものではなくリーダーの男の方の銃から聞こえたものだった。射出された銃弾はレンに向かっていくが、レンは銃声が鳴ると同時近くにあったなぎ倒された木の1本の影に隠れ、銃弾が当たることはなかった。
もしもレンが先手必勝という思考をしていたのなら確実に銃弾は命中していたであろう。
「銃撃戦にて最初にする行動は身を隠す。誰がとってもおかしくない行動だ。だからそんなことするだろうとは思ってたさ」
「下手に出ればぶち抜かれる。ここは場合を見計らって──」
「チャンスが来るまで待つってか?」
「──!」
「そんなことはお見通しなんだよォ!」
リーダーの男は構えていたSAAをガンプレイをしながら言う。かなり余裕の様子だ。
「1ついいことを教えといてやるよ」
SAAをパシッと掴み、リーダーの男はそんなことを言う。果たしてそのいいことというのがレンにとって吉と出るのか凶と出るのか。
「こういうリボルバー式の銃はよォ、早撃ちってのがあるだろ? こうやって、ハンマーを倒す行為とトリガーを引く行為を交互に連続して撃っていくファニングショットっつーのがあるよなァ」
「だから、どうしたって言うんですか?」
「まだわかんないのか? つまりだな──」
その瞬間、レンが隠れていた木にSAAの銃弾がグサッとめり込む。しかも単発ではなく、アサルトライフルくらいと同じくらいの速さで連射してくる。もしかすると、レンのデュアルよりも早いかもしれない。
「な、何だこの速さは!?」
レンは木の影に屈んでいるのでリーダーの男の銃撃はまず当たらない。しかし、それは木がある時のみだ。この銃撃で木が破壊されればいくら屈んでいようと絶好の的になる。
「こいつの技量を持っている俺は反動を吸収しさえすれば達人並みのファニングショットがリロードなしでやれるんだぜェ!」
「木が壊されるのも時間の問題……何かこの状況を打破できる物は……」
何かないかと急いで右腕を横にスワイプし、今持っているものを片っ端から見ていく。今のレンが持っている物はハンドガンUSP9が二丁と光の反射でやっと見ることができるトラップワイヤー、自分の分と回収しておいたダンジョンのお宝の一部。そして食料だ。
この時点でレンには3つの選択肢が出てくる。
1つは、物に頼らず飛んでくる銃弾を避けながら攻撃して仕留める。これは運との勝負になる。1度でも銃弾に当たればアウト。安定性がまるでないので最終手段として置いておく。
2つ、トラップワイヤーを利用した攻撃を仕掛ける。何をするかは決めていないのでその何かによって成功するか成功しないかが別れてくる。中では1番有力。
3つ、お宝と食料を出して降参。これをするくらいなら自害する覚悟がレンにはある。
「トラップワイヤー……これで──」
瞬間、レンがいるすぐ隣に穴が空いた。持ち物を確認しているうちにどんどん木が破壊されたのであろう。恐らく、持って後数発というところだ。
「おお? どうやらそろそろ隠れるのも限界みたいだなァ!」
「一か八かです……!」
その場の思いつきで出した作戦を実行すべくレンは迅速に準備しはじめる。
「こっからてめーの場所は見えないが、大体はわかったぞ」
それと同時に、リーダーの男はレンが木の影のどの辺にいるのかを把握した。そして、その把握した場所は既に銃弾1発程度で穴が開くぐらいに薄くなっていた。
「これでトドメだ、くら──」
その瞬間、レンが隠れている木の方からリーダーの男の方に向かって何かが飛んできた。それを撃ち落とそうとリーダーの男が銃を向ける。
「フッ」
しかし、リーダーの男が向けた銃口は飛んで来るものから木の方に向き、撃つ。
「ぐあっ!」
射出された銃弾は移動しようと立ち上がったレンの左足の太ももに命中し、撃たれた衝撃と痛みで倒れる。そしてリーダーの男は飛んで来たものを右に1歩動くことで避け、それを拾い上げる。
「自分の銃を投げて注意を引く、か。中々いい作戦を思いつくじゃあねえか」
「……いっ……」
「だがよォ、俺がてめーの武器を確認してなきわけねーだろ。もう一丁あることぐらい知ってたさ」
リーダーの男は拾ったUSP9を持ちながら倒れたレンの方へと歩いていく。ゆっくりと、まるで勝ちを確信したかのような表情で。
「くそっ!」
そこでもう一丁のUSP9でリーダーの方に向かって3発撃つが、その銃弾はリーダーの男にではない場所に向かって飛んで行った。そして、もう攻撃できないようにリーダーの男はレンの銃を持つ腕を踏みつけ、落ちた銃を思いっきり蹴り飛ばす。
「はっ、最後の抵抗も虚しく外したな。見ろ、掠りもしてねー」
リーダーの男は倒れたレンにレン自身の武器であるUSP9の銃口を向ける。
「俺はてめーとは違って頭の回転がいいんだよォ。これでトドメだ」
リーダーの男は構えていたUSP9の引き金を──
「何? 頭の回転がいいと? それは違いますよ」
「死ねぇえーー!」
その瞬間、ちゃんと握っていたはずのUSP9がリーダーの男の手からスルッと抜けた。そして、そのUSP9はグリップ部分が見事にリーダーの男の顎に命中し、勢いで顔を持ち上げられ尻もちをつく。
「いだっ!」
「僕も頭の回転がいいんですよ。銃も動きたくなるぐらいに」
リーダーの男の顎に命中させ転倒させたUSP9は、まるで銃自身に意思があるようにレンの手に戻ってくる。もう一丁のUSP9も同じようにもう片方の手に戻ってくる。
「一体何が……」
「それがわからない時点で貴方の負けですよ、クソ野郎さん」
「クソ野郎さんだどォ? 舐めやがって! 早撃ちならこっちの方がつえーんだよォ!」
ご自慢の早撃ちをやろうとファニングショットの構えに入った瞬間、更なる痛みがリーダーの男を襲った。
「うぉああああああー!」
ちょうど真上からかなり太い木の枝が落ちてき、リーダーの男の両足を踏み潰したのだ。枝の硬さと落下速度からして骨折していてもおかしくない。
「あの時最後の抵抗なんて言ってましたが、僕は最初からクソ野郎さんのことなんて狙ってませんよ」
「あの3発だけで、ここにある辛うじて立っている木の枝を、落としたってんのか?」
「逆にそれ以外ありますか? ま、本来は頭に当てて1発ノックアウトの予定でしたが……誤差ですね」
「クソがァ!」
リーダーの男が銃を構えるが、その前にレンがリーダーが握っている銃を撃って弾き落とす。持っていた銃が弾き飛ばされたと同時にその衝撃でリーダーの男の手が痺れる。
「それを拾った瞬間に撃ちます。大人しく捕まってください。そうすれば今の傷のままで拘束させます」
「そう大人しく捕まるわけねぇーだろがよォ!」
リーダーの男は銃を拾うのを諦め、ぎこちない動きでレンのほうに走っていく。この不規則な動きを利用して攻撃を避け、接近して拳で仕留めるという作戦だ。
「やれやれ」
しかし、その不規則な動きよりも更に不規則な連射をし、リーダーの男にその銃弾が幸運なことに脳と心臓がある部位以外に数十発命中し、リーダーの男は生きてはいるが立つことや指1本動かすことができなくなった。
「フィニッシュですよ。クソ野郎さん」
戦闘不能になり倒れる襲撃者のリーダーと、負傷により片方の膝をつきながらもこの銃撃戦に勝利したレンの姿がそこにはあった。
何故USP9が手に戻ってきたのか。勿論わかりますよね?
答え合わせは次回です。
※サブタイトルが次回とは合わないと思ったので変更しました。




