第13話 襲撃者の襲来
今回は会話が多めだと思うぞい!
ちなみに今回の文字数は3500字ちょいだぞ!
鎧の騎士との戦闘が終了し、このだだっ広い部屋の奥に進む。
「結構ギリギリだったな」
「最後のあれは初見殺しと言うやつね」
「それよりも姉さん。僕に爆発当たったこと謝ってくださいよ」
「貴方のその呼び方を根っから変えてくれればいいわよ」
「慣れちゃったんで無理です」
「ならお互いに不満ポイント1ということで済ませましょ」
「了解です」
「何ですかその変なポイントは」
部屋の奥に進むと日本の襖のように手で横にスライドさせて開ける扉があり、その扉を開けてその先に進むと3つの宝箱と青い光を放つ魔法陣があった。魔法陣に関しては、恐らくこのダンジョンの脱出用の魔法陣だろう。
「念のために確認しとくか」
ないかもしれないが、念の為にミミックであるか否かを確認する。その結果は否であった。
「ミミックではないっと。それじゃあ開けるぞ」
3つ並んでいる宝箱のうち、ソニアは左、アスカは真ん中、レンは右の宝箱をせーので開ける。
「エ〇ラのエ〇ラの──」
「何それ」
「宝箱を開ける時の定番ですよ。因みにこれを12回言ったあとに宝箱を開けて、中を取り出して上に『ごまだれ~』と言いながら掲げるんです」
「何その特殊な儀式みたいなの。てか、12回も言わないのといけないの?」
「なら、今回は簡略版で4回言うことにします。あ、勿論ソニアさんも言ってくださいね」
「やること前提なのね……」
事前の打ち合わせも済んだ3人組は宝箱開封の儀式を始める。
ガチャッ
「エ〇ラのエ〇ラのエ〇ラのエ〇ラの──」
宝箱の中身を両手で掴み、それを体を後ろに回すと同時に瞬時に右手の上に移動させて上に掲げ──
「「「ご~ま~だ~れ~!」」」
「……えっと、これでおしまい?」
「はい、そうです」
「やっぱり宝箱と言えばこれですよねアスカさん」
「逆にこれ以外あるか?」
「ないです!」
「ならばよろしい!」
「なにこのくだり」
開封の儀を終わらせたところで手に掲げたものを確認する。この開封の儀を行った時に確認できるのは大体の形と色と重さだけだ。それ以外の細かなところはこの儀が終わってから確認することになる。
「私のは……ガラクタね。ちょっと高そうな」
「俺も同じですね」
「……古代武器ですね」
「何この3分の1を外した感じ」
「感じじゃなくて今起こったことよ」
3つの宝箱から出てきたのはお宝という名のガラクタが2つと古代武器であった。しかし、レンが手に入れた古代武器は他の古代武器よりも風化しており、どんな武器種なのかを確認することはできなかった。
宝箱を開けた後にそれぞれのものを今まで回収してきたガラクタと古代武器を入れている袋に入れ、魔方陣に乗る。
「……一向に作動しないんですが」
「あれ、もしかして手動魔法陣の起動の仕方知らない?」
「手動とか起動の仕方があるなんて初耳です」
こういう魔法陣はゲームでは上に乗った瞬間に作動するものと上に乗って決定ボタンを押して作動するものがある。今回の魔法陣はその決定ボタンを押して作動するタイプのものだろう。
「このタイプの魔法陣の起動方法は魔法陣に触って魔力を送る。今からするから見てて」
そう言うとソニアは足を伝って魔力を魔法陣にほんの少しだけ送る。すると、青く光っていた魔法陣の光が強くなっていく。
「魔法陣に送る魔力はほんの少しだけいいの。魔力を送りすぎると魔法陣が暴走しちゃって変なところに飛ぶから」
「なるほど。勉強にな──」
アスカがソニアに感謝の言葉を言う途中に魔法陣が作動し、ダンジョン内からアスカ達は姿を消した。
***
ナチュランの村近くにあるダンジョンの入口。その前にフワッと魔法陣が現れそこから発する光が晴れると、そこにはアスカ、レン、ソニアの3人が立っていた。
「これがデジャブというやつか」
「アスカさん、その気持ちわかりますよ」
「何言ってるの2人共」
3人がダンジョンから村に戻ろうと歩き始める。ダンジョンの周りだと言うのに人がいないことに妙な不信感があるアスカであったが偶然だと自分を納得させた。
そして、ソニアが木と木の間に足を入れた瞬間にプチッという小さな音がする。
「──! 姉さん!」
「え?」
音がしてからレンはソニアに飛び込んで押し倒す。
「貴方、まさかそう言う気で──」
レンがアスカを押し倒してから僅か1秒後、丁度人間のお腹辺りの高さに丸太が物凄い勢いで過ぎて行った。もしもレンがソニアを押し倒していなければ、ソニアはあの丸太に吹き飛ばされ間違いなく骨折以上の怪我をしていた。
「前言撤回、ありがとう」
「どういたしましてです。それよりも──」
「どうやら、頭のいい猿共に囲まれているようだ」
そう言うと森に生えている草や木の葉っぱからガサガサという音が聞こえてくる。そこら中から音が聞こえるということは、一人ではないということだ。
まあ、アスカ達3人に1人で挑むなんで奴はよほどの自信家か人数差を知らないバカだ。
「1、2……5人か」
チラッと見える人影を数えると数は5人。場所とバランスよく包囲しているところを見るとこの行為をしている5人組は仲間であると見て間違いない。
「お前達は盗賊か冒険者のどっちだ!」
「それを言うと思ってんのかァ?」
「だろうな」
盗賊か冒険者か聞いて答えるような奴らではないとアスカも理解している。正体を明かせば本当にただのバカだからである。
しかし、盗賊ならば襲う理由はわかるが冒険者は襲う理由がイマイチわからない。こういうことをして、もしも発覚でもすれば罰があることくらい理解しているはずだ。
「……アスカさん、取り敢えずここを離れましょう。このままでは不利です」
「何か策でもあるのか?」
「近くにこの前倒したあのタイラノがめちゃくちゃにした場所があります。そこまで出れば視界の悪いこの場所よりは対処しやすいはずです」
「しかしだ。そう易々とここを離れさせてくれるとは思えない」
逃げることを想定してせずに襲ってくる程馬鹿ではない。気が抜けている時に罠を設置させ、かかりやすくしたところからこの5人組はこういうのに関しては手練だ。
「アイツらの場所はわかりませんが、罠の設置場所についてはもう既に把握しました」
「うっそだろお前」
「罠の設置はしたことありますのでどういう場所にどう仕掛けるのが効果的かということはわかります」
だがしかし、罠の場所がわかったところでそれがどうこの場所から逃げるのかに繋がる訳では無い。この情報をいかに有効に使うかによってこの現状を切り抜けられるかもしれない。それは同時に、その逆というリスクが起きるというリスクもある。
「アスカさんは人数を数えたところを見ると、奴らの居場所は大体わかってるんですよね」
「ああ、目の前にある2本の木後ろにそれぞれ2人。背後の木の後ろに1人。左右の草むらに2人だ」
「見事に囲まれてますね」
言っていることは絶望的だが、レンの表情には余裕があった。まるで、ボードゲームでもう勝利が確定した時のような表情だ。
「僕達って結構ついてますね」
「どういうことだ?」
「取り敢えず、僕の合図を出すのでそれを聞いたら鼻をつまんで走ってついて来てください」
「ソニアさん」
「聞いてるわよ。ずっと攻撃がこないか警戒する身にもなって欲しいわ」
するとレンはズボンのポケットに手を入れてま探り始めた。それを見た襲撃者達は攻撃されるのではと警戒し、さらに体を木の後ろに隠した。
「お前のような男に用はない。俺達の目的は女と宝だ。それさえ寄越せば何もしねぇーよ」
「それを聞いて、はいどうぞなんて言うと思ってるんすか?」
「言わねぇーだろうな。だからこそ力ずくで奪わせてもらうぜ!」
「やってみろ!!」
その瞬間、レンはポケット出した野球ボールくらいの大きさをした濃い紫色の玉を下に投げつけた。すると、その玉は爆発し中から大量の煙がモワッと出てくる。
「僕特製の煙玉っす。非常時のために持っててよかったです。アスカさん、姉さん、今です!」
「「了解!」」
「くそっ、何も見えねぇー! てか、何だこのゲホッゲホッ野菜の腐ったような臭いはよぉ!」
「態々腐った野菜をスムージーにして蒸発させたのをその中に混ぜたんっすよ! 僕からのサービスですよ!」
「グソが! おい、早くアイツらを追え!」
レン特製の煙玉のお陰で襲撃者の包囲網の突破に成功する。そして、レンが把握している罠を避けながら、アスカ達はタイラノが森の気をなぎ倒したことでめちゃくちゃになった場所に向かって走って行った。