第11話 ダンジョンでトレジャーハント 中編
最近忙しいぞい。夏休みが普通に学校ある日より忙しいってどういうことだってばよ。
それからアスカ達はダンジョンの階段を何度か降り、かなり下の階層まで降りてきた。その過程で宝箱を何度か見つけたが半分以上がミミック、開けてもお宝という名のガラクタがほとんどであった。一応古代武器を2つ手に入れたが、どれもアスカの求めるものではなかった。
「今何階層くらいだー?」
「ざっと14ですね」
「頼ぉむ! SRの古代武器よ出てくれ!」
「願ったところで運が良くなるわけではないわよ」
「我が運命力を舐めないでください」
「急に貴方誰なの?」
休み1つない古代武器探しにそろそろアスカ達も精神的に限界が来ていた。これ以上は万が一の時に対応できないとアスカは考え、ダンジョンないで休憩を取る事にした。
「安全確認よし。ここで少し休憩しよう」
アスカ達はダンジョンの1部屋で腰を下ろす。休憩と言っても特に食事をするなんてこともしない。
「休憩って言っても何をすればいいんですかね」
「まるで有給を取った社会人みたいなしつもんだな」
「適当にしとけばいいのよ。寝るもよしだし走り回るのもよし。もし出発時に寝てたら蹴り起こすわよ?」
「ちょっと冗談はやめてくださいよ姉さ〜ん」
「だーれーが姉さんよ!」
2人が言い合っている中、アスカはスコープのレンズを拭いていた。
スコープはスナイパーライフルにおいて必要不可欠の装備品だ。その装備品の手入れを怠るといざと言う時に見えにくいなどの不良の原因になる。
「こんなもんか」
「ちょ、ちょっと落ち着いてくださいよ姉さん!」
「だから、その姉さんって言うのをやめなさいって言ってるのー!!」
レンの姉さんという呼び方がそんなにも嫌だったのか、ソニアは今だってないほどに怒っている。そして原理は不明だが、ソニアの右足に赤色のオーラが出てきている。
「一旦頭を冷やしなさい!」
ソニアはオーラを纏った右足を使い、壁を背にして逃げられなくなったレンに回し蹴りをする。しかし、その回し蹴りをレンは咄嗟にしゃがむことで回避し、そのままソニアの回し蹴りは壁にヒットした。
すると、ソニアの回し蹴りがヒットした壁が爆発した。それも、ポンとかではなくドカンだ。
「…………」
「…………」
あまりにも見た目に反した技にアスカとレンは唖然としていた。
「……チッ、避けられた」
「あっぶねぇ、死ぬかと思った……」
「命中したところで爆発の衝撃で気絶するだけだから安心しなさい」
「安心できませんよ! どこの弐の秘剣ですか! 頭冷やすどころか吹っ飛びますよ!」
「へー、魔力ってあんな使い方もできるのか……」
ソニアが放った技は足に魔力を纏わせ、ヒットと同時にその魔力が爆発の如く放出されるというものだ。
爆発事態に殺傷力はなく、意識を失わせるというというのが目的の技だ。まさに弐の秘剣もとい弐の秘脚である。
技を放ったソニアの足に関しては、魔力を外側に放出しているので足が吹っ飛ぶなんてことにはならない。吹っ飛ばない代わりに少々熱くなったり衝撃が来るなどのことが起きるが、そこまで問題ではない。
「それじゃあ改めて……」
「わかりました! わかりましたって姉さん! もう少し違う呼び方しますから!」
「……因みになんて呼ぶつもり?」
「え、えっと……ソ、ソニたんとかどうでしょうか!?」
「☆死刑☆」
「いやぁああーー!!」
そりゃそういう反応になるわな、とレンの愚かさに呆れるアスカであった。
ソニアがレンをぶちのめすために追いかけっこをしている中、アスカは先程ソニアが爆破させた壁の様子を見る。 爆破された壁は結構大きく削れており、ソニアの爆発の威力がどれだけのものなのかを実感させられる。
「ん、この壁、ほんの少しだが空洞がある……?」
アスカが爆破された壁の瓦礫をどかしているとほんの少しだが隙間を見つけた。見たところ、そこまで奥行はないがピンポン玉1つくらいの大きさはある。
「あの、ソニアさん!」
「んー、何かしら?」
「もう一度だけでいいのでこの壁を爆発させてくれませんか? やってくだされば出来る限り一つだけ言うこと聞きます」
「まっかせなさい!」
アスカは一応保険をかけた『なんでもする』を条件に出すと、ソニアは幼い子供がクリスマスプレゼントを貰った時のように喜び、頼みを了承した。そして、ソニアは先程の回し蹴りをもう一度し、先程よりも壁が破壊さた。
「それじゃあ、私はあの人でなしをぶちのめしてくるから」
「了解です」
「そこは助けてくださいよ!」
レンのヘルプ要請を無視し、より破壊された壁を調べる。例の小さな空洞には何故か1箇所だけズレた石壁がある以外に何も無かった。
「この石……こうやって動かせるな」
ズレていた石壁を元の位置であろう場所までスライドする。この行動に何の意味があるのかはわからないが、アスカには何かがあるという謎解きゲームから得た経験による確信があった。
そして、スライドしてから間もなくそれは起きた。
「……何だこの音?」
近くからゴゴゴゴゴといかにも仕掛けが作動したかのような音がなる。その音にレンとソニアも気づいたようで名前の呼び方から始まった争いを一時休戦する。
そして音がなり止んだ時、アスカが石壁をスライドした小さな空洞がある壁の横の壁が下に沈んで行き、隠し通路が現れた。
「隠し通路……」
「ダンジョンですから、1つや2つあるかとは思っていましたが……まさかこのタイミングで発見するとは」
隠し通路の先にはいつも通りに下層へと続く階段があった。しかし、今までの階段にはなかった松明が左右の壁に付いていた。
──この先には何かがある。
ここにいる3人が同じことを考えるくらい、その階段は異様であった。
階段を降りると、出た先はまるで闘技場のような広さと高さがある部屋に出る。そして、まるで天窓があるかのような明るさがその部屋にはあった。
「……あれ、完全に近づいたら動き出すタイプの敵だよな」
「しかもそういうのは大体中ボスかダンジョンボスか、ですよね」
「そうなると、恐らくスピリット系の魔獣ね。でも、鎧と剣を操る魔獣は見たことないわね。図鑑にも載ってなかったし」
「それなら、ギルド未発見の魔獣ってことですよね」
「そうなるわね」
ソニアの発言を聞いてアスカはニヤッと笑う。
それと、アスカ達が言う『あれ』というのは、部屋のど真ん中に大きな両手剣を地面に突き刺して立っている鎧の騎士のことだ。その鎧の騎士はパッと見西洋の城内で見る飾りの鎧の騎士と同じが、だからと言ってここにいる鎧の騎士がその飾りの鎧と同じわけがない。
「……引き返しますか?」
「ここで1つ朗報よ」
「何ですか?」
「私達が階段を降り始めた瞬間に隠し通路の出入口が閉じたわ」
「……閉じ込められたってわけですか」
隠し通路を見つけ、入ってある程度進んだところで扉が閉じて戻れなくなる。そしてその先にはボスがいる。まるでアスカ達の世界にあったゲームのようだ。
そして、そういう部屋から脱出するには──
「アイツを倒すしかないってことだな」
アスカがスナイパーライフルを手に持ち大きく足を出す。すると、真ん中にいた鎧の騎士の目がロボットが起動した時のように赤く光る。そして、突き刺していた両手剣を引き抜き、アスカ達に向けて構える。
「さってと、ダンジョンのボス戦の開幕だ!」
アスカがそう言ったと同時に、真ん中にいた鎧の騎士がガシャンガシャンと音を立てながらアスカ達に向かって歩き始めた。
エ〇ラのゴマだれ♪というのはあえて言いません。というか、こういう系の仕掛けって一体どういう仕組みなんでしょうね。
※鎧騎士を鎧の騎士に変更しました。