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短編

守護者死神 ※自動音声版

作者: oga

自動音声版、守護者は死神。

ナレーターはわたくし、自動音声が務めさせていただきます。

たまに漢字読み間違えますが、ご了承ください。





私の名前はカンナ。

職業は死神だ。

この冷たい鎌で、ターゲットの命を奪うのが、その仕事だ。


 今日も依頼が入って来た。

ターゲットの名前はウォーリーって男らしい。

死神情報局の話じゃ、この街のホテルの、207号室にいるってことだけだ。

私は、鎌を背中に携えて、ホテルの自動ドアを潜り抜けた。

そして、大股で受付に向かい、カウンターの向こうの男に声をかける。


「おっさん、よーくこの鎌を見な」。


「し、死神!?」。


 私は、鎌のえを持って、振り子のようにゆらす。

すると、受付のおっさんの首が、カクン、ともたれた。

催眠状態ってやつだ。


「207号室の鍵を渡しな」。


「……はい」。


 おっさんは大人しく、私に鍵を手渡した。







 エレベーターに乗り込み、2階のボタンを押す。

静かにエレベーターが動くと、チン、というおとがし、扉が開いた。


「どっから守護霊が攻撃をしかけてくっか、分かんねーからな」。


 私は、いつでも鎌で攻撃できるよう準備しつつ、赤いカーペットの敷かれた廊下を進む。

敵と遭遇することなく、207号室の前までやって来ると、受付でかっぱらった鍵をドアノブに差し込み、回す。

ガチャリ、とキーが回ると、扉を開けて、なかに入る。


「ウォーリーは、どこだ?」。


 辺りを見回すが、誰かが泊まっていたとは思えないような、整然としたへや。

せめて、キャリーバックくらい、あってもよさそうなもんだが。


「ん?」。


 ベッドに目をやると、白い布に包まれた、何かがある。

その中身を覗き込んで、私は眉をひそめた。


「赤ん坊じゃねーか」。


 赤ん坊は、親指をしゃぶりながら、私の方を見ている。

まさかとは思うけど……。

私は、おもむろに白い布をほどいて、紙おむつを外した。


「お前、男か。 お前が、ウォーリー? お前を殺さなきゃ、いけねーの?」。


 多分、こいつの面倒を見切れなくなった親が、ここに捨ててったんだろう。

マジかよ……。

でも、やらねーと死神の免許はく奪になっちまう。

私は、鎌を振り上げた。

しかし、その鎌を、ゆっくりとおろす。


「やっぱ、私には無理だわ……」。


 こんなガキに見つめられたら、母性本能に目覚めちまう。

降格処分は免れないだろうが、他の奴を殺しまくれば挽回できんだろ。

 ホテルにいた男の話じゃ、207号室の部屋を借りたのは、この先の街に住むケイトっていう女性だ。

その女性の住む街に向かうには、3つの街を経由しなければならない。 

最初に立ち寄るのは、ロズウェルっていう、UFOが落ちたってことで有名な街だ。

私は、移動手段を得るため、そこら辺にたむろしてるバイク野郎のところに向かった。









 連中に声をかけると、スキンヘッドの男が返事をした。


「死神がなんの用だ?」。


「バイク、貸してくんねーか」。


「生憎、貸してやれるのはねーよ。 あんたらは、街の治安維持にもひとやく買ってるし、協力してやりてー気持ちはやまやまなんだけどな」。


 私ら死神のターゲットの中には、凶悪な殺人犯とかもいる。

合法的に人をころせるのは、私ら死神だけだし、ありがたく思ってる市民もいるだろう。

だがまあ、基本的には、物騒な連中って認識だ。


「仕方ねーか。 他、当たるわ」。


「ちょっと待て、その小脇にかかえてるの、赤ん坊か?」。


「そーだけど」。


 スキンヘッドに、ウォーリーを見せる。

すると一瞬、ぐずったような顔になった。


「おっと、これ以上近づくな」。


「……あんたの子供か?」。


「いや、ホテルに捨てられてたんだよ。 こいつの母親がこのさきのまちにいて、会いに行かなきゃならねんだ」。


 すると、スキンヘッドは携帯を取って連絡を始めた。


「知り合いにサイドカーを持ってるやつがいる。 話、つけてやるよ」。


「マジかよ、助かるわ」。


 こいつ、困ってる奴はほおって置けないタチとみた。

スキンヘッドは、携帯をしまって私の方を向いた。


「1週間で50ドルだ。 それで、レンタルしてもいいってよ」。


 普通、ハーレーみたいなバイクは1日でも50ドルはかかる。

まさに友達価格だ。


「あと、おめえら。 コストコ行って、粉ミルクと紙おむつ、買って来てやれ」。


「紙おむつっすか」。


 ヤンキー座りをしていた、仲間の一人が返事をする。


「ちょ、そこまでしなくていいって」。


「この先に大型スーパーはねえ。 ここで買っといた方がいざって時、助かるぜ」。


 確かに、私にミルクは出せねーし、備えあれば憂いなしだ。

しばらくして、サイドカーにミルクと紙おむつを積んで、仲間がやって来た。


「全部で152ドルだ」。


 私は、財布から札を取り出し、渡した。


「サンキュ、釣りはいらねーよ」。








 キーを回して、エンジンをふかす。

しばらく荒野を進んで、ロズウェルで一泊すればいいだろう。

さっき、スキンヘッドに言われた通り、粉ミルクを溶かして、母乳ビンでミルクをやったから、今はすげー大人しい。


「あいつ、子育てしたことあんのかな」。


 私は、そうひとりごちて、アクセルを握った。

その時だった。

携帯に着信が入る。


「……任務のメールだ」。


 内容を確認する。

ロズウェルにある、スターバックスの入って左手のソファに座っている男をころせ、とのことだ。

理由としては、男はこの後、銃を店内で乱射する予定らしい。


「了解!」。


わたしは、そうメールで返事を送った。


サイドカーのガソリンをセルフのスタンドで補給し、走ること1時間。 

目的地のロズウェルに到着。

そこら辺に緑の色をしたエイリアンの看板やら、UFOを形作った店があり、目的地のスタバにも、壁面にロケットの模型が突き刺さっている。

 駐車場にバイクを止めると、ポケットから携帯を取り出し、オペレーターに繋いだ。


「はい、こちら死神オペレーションセンターです」。


「カンナだ。 今からメールの案件をこなすから、ターゲットの詳しい情報を教えてくれ」。


「しばらくお待ち下さい」。


 保留のメロディが流れ、しばらくして、さっきの女性オペレーターが出る。


「ターゲットの名前は、ヴァレンタイン。 年は45で、最近、この街に配属された保安官です。 動機は不明ですが、ショットガンを所持、間もなく銃を発砲します」。


 マジか!

こうしちゃいられねーと、私は鎌を担いで店に向かうべく走り出した。

その時。


「おぎゃあー、おぎゃあーっ」。


「げっ!」。


 何で急に泣き出した!?

私がサイドカーから離れたからか?

くっそ……。

一旦サイドカーに戻ってウォーリーを抱える。


「なあ、頼むから大人しくしてくれよ」。


「だあ、だあ」。


 だきかかえた瞬間、泣き止みやがった。

鎌でこいつを眠らせねーと、こっから離れられないらしい。


「ウォーリー、この鎌、よく見てろ」 。


 ゆっくり、振り子のように揺らす。

あっという間に、ウォーリーは眠りに落ちた。


「いい子だぜ」。


 すると、ガアン、という音が背後から響いた。


「やべっ!」。


「うえええーーーん」。


 ウォーリーを寝かしつけてる内に、店でドンパチ始めやがった。

しかも、銃声で目ェ覚めちまったじゃねーか!

私は、テンパって、ウォーリーを抱えたまま、店の中へと足を踏み入れた。


「ちっ…… 間に合わなかったか」。


 店の中には、倒れた店員と、ショットガンを抱えたヴァレンタインと思しき男が一人。

男は、私の横を走り抜けて行った。


「リザっ!」。


 倒れた女性の傍らには、もう1人の店員が涙目で声をかけている。

私は2人にかけよった。


「おい、しっかりしろ!」。


「どけ」。


短髪黒髪の少年。

多分、高校生くらいか?

そいつが、弾丸で地に伏した女性店員にかけ寄る。

まぶたに手をかざすと、女性はそのまま死んだみたいに動かなくなった。


「マリア、救急車を急いでくれ。 どれくらいもつか分からない」。


「わ、分かった。 マイク、あなたは?」。


「俺はヴァレンタインを追う。 こうなった以上、この街にはいられないだろうからな。 俺も、片がついたらこの街を離れる」。


 マリア、と呼ばれたもう1人の店員は、何か言いたげな目で少年こと、マイクの顔を一瞬見やる。

しかし、すぐに視線を切ると、携帯で連絡を入れた。


「ちょ、どういうことだよ? 全然話しが見えねんだけど」。


 私が割って入ると、マイクは眉をひそめた。


「……部外者はすっこんでろ」。


「はぁ!? 私だってな、今外に出てた奴を追ってんだよ」。


「……あんた、一体なにものだ?」。


「私は死神だよ」。


 私は、背中を向けて、しょってる鎌を親指で指した。


「子連れの死神? ……だったら丁度いい。 事情を説明するから、協力しろ」。


 ここじゃマズい、と言って店の外に出ると、ジープの横までやって来た。


「中に入ってくれ」。







 ジープの中で聞いた、ヴァレンタインの正体。


「あいつわ、保安官なんかじゃない」。


 マイクは、ヴァレンタインがエイリアンをころすために政府から派遣された人間であることを突き止める。

マイクは、自宅でしょくちゅう植物を育てているだけのぜんりょうな市民で、エイリアンとは関係がない。

しかし、今日、事件は起きてしまった。

友達のリザは、マイクをかばってじゅうしょうをおった。


「ヴァレンタインの野郎わ絶対に許さない。 俺わただの植物好きで、別にエイリアンを飼育していた訳じゃない」。


「……」。


 マイクの話には嘘がある。

さっき、マイクがリザに手をかざした時、苦しんだ表情だったのが、すぐに安らいだ。

なにか、ちょうじょうな力がマイクにはそなわっている。

だが、仮にマイクがエイリアンだったとして、ひがあるのは明らかに相手だ。

私は、携帯からオペレーターにつないだ。


「ヴァレンタインのいばしょを教えてくれ」。


「この先のルート205を北上しています」。


「ルート205、だとよ」。


「オーケー」。


 マイクは、アクセルをふかした。


しばらく走り、前方にヴァレンタインのパトカーを発見。

アクセルをふかし、前に回り込むと、私はウォーリーをマイクに任せて、後ろの荷物置きスペースに移動。

ハッチをけやぶり、鎌を片手に持ってジャンプした。


「……!?」。


 パトカーのフロントガラスに飛び移ると、そのまま鎌を振り下ろした。


「くらえっ」。


 ギラついたやいばがガラスに刺さり、ヴァレンタイン目がけ一撃。

しかし、外れて背中のシートに突き刺さる。

ヴァレンタインは助手席のショットガンをつかみ、私目がけてはなつ。

ドン、という銃撃音。

フロントガラスは粉々になり、私はパトカーの屋根に逃れた。


「こんにゃろっ」。


 再度、鎌を振り下ろす。

鉄板を突きやぶり、今度は手応えありだ。

鎌を抜くと、きっさきが血でぬれている。

突然、からだが前に吹っ飛んだ。

思い切りブレーキを踏んだのか。

私は、鎌を地面に突き立て、どうにか激突を回避する。

 とおめから、肩を押さえて車から降りるヴァレンタインが見えた。

片手にはショットガンを持っているが、レバーを引かなければ使用できない。

そこにマイクが近づく。


「お前は俺の友達を傷つけた。 ただじゃ殺さない。 お前には悪夢を見せてやる」。


「……くたばれ、侵略者」。


 ヴァレンタインは、レバーをつかんだ状態で、銃を思い切り上下させた。

弾がそうてんされる。


「マイク、伏せろっ」。


 私は、叫びながら鎌を投げた。


「っ……」。


 マイクは前のめりに倒れ込み、その頭上を回転した鎌が飛ぶ。

弾がショットガンから弾け、鎌に命中すると、はじき返され床に落ちた。

すかさずマイクが鎌を拾い上げた、その時。 


「うっ……」。


 突然、私の頭の中に、映像が流れ込んできた









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