あくまな勇者
国に勇者が異世界からやってきた。実際は、勇者を異世界から召喚しただけど。
目的はこれから現れるかもしれない悪魔に備えるためらしい。
神様からの神託? お告げ? のようなものが僕が住んでいる国を含めた大陸中の国に同時にくだったとのこと。
結果、他の国はどうかは知らないが、僕が住んでいる国がとったのは召喚魔法を改良してよその世界から人を招くという手段にでた。
確定しているとはいいがたい状態でこの世界以外の人にゆだねていいのだろうか、呼び出された人の人生を狂わせていいのだろう、そもそも呼び出すのはいいけれど帰すことができるのだろうかと疑問に思うことはあるがきっと国のお偉いさんが何とかするだろう。
いっかいの召喚術士である僕が気にすることではない。
それよりも一番の問題はこの勇者、国が紹介したときの挨拶で、必ず魔王を倒す、と言ったことだ。
僕が住む大陸には人族以外にも獣人や魔族など多種多様な種族が住んでいて魔王とは自然災害と同義かそれ以上の被害を一体でもたらす魔物のことをさす。別に魔王を倒すことは悪いことではないが、魔王はここ100年近くは誕生していないことになっている。
冒険者や狩人の組合、召喚術士や魔法使いの組合、それと国の騎士などが協力して魔王になりそうな魔物を狩っているのと、魔王になる魔物を見逃した場合でも召喚獣として使役し召喚術士の配下においているから。
そういうことから、魔王らしい魔王はいない。
他にも魔王と言えば魔国の王や魔法使い自治領主の略称をそう呼ぶが、小さないざこざでの争いや国同士の戦争をするとこはあるものの、大昔しかも千年単位で魔物と知識あり言葉を話す魔物の区別をしない時代でならあったならともかく現在は国ごとの条約で知識あり話すことができる魔物は魔族として認められ人権が確立している。どこの国にも魔族はいて生活し人と結婚し子をなしているので魔族すべてが悪になることはない。
そもそも魔族の中にも強硬派や魔族主義派はいるが、人族や獣人族などの国にも同じような派閥はあるのでどこの国も似たり寄ったりの状況なうえに今世の魔族の王は国一つ簡単に滅ぼすことができる力を持っているらしいのに度が過ぎるほどの穏健な人なのでその力を自国の反乱の鎮圧しか使わないのはここ500年近くの統治で各国に周知されている。もし、その力が外に向いたとしても各国には魔法や魔族限定の特効武器があるうえに場合によっては存在している一柱の神が出助けしてくれるので異世界からわざわざ勇者を呼ぶ必要はない。
魔法使いの自治領主にしても基本的に魔道具や魔法薬を作ることに情熱を燃やしている人で引きこもりめったのことで人前に出てこない。魔道具や魔法薬のレシピなどは他所の国にも出していて非難されることは今のところない。
そんなことから勇者が言っている魔王とは何をさしているのかわからなかった。
国王は、勇者は慣れない環境で戸惑いがある、と説明したが今後に不安の残るお披露目会となった。
不安は確信と変わり、勇者はお供を連れて少なからずも僕の大陸では認知されていないどこにいるかもわからない魔王を倒す旅にでた。しかも、旅先で魔族多めではあるものの種族問わず喧嘩を売る。
中には不正した貴族や商人もいたらしいが圧倒的に勇者の勘違いで被害を受けた者の方が多かった。
これには国内外を問わずあきれるしかない。
損害金は国と僕と幼馴染の家が出している。一番負担が多いのは国で僕は幼馴染の家も含めて人力とお金で払っている。より魔王に近い魔物を複数使役することができた召喚術士として僕は人に知られているので割と難しく面倒な依頼をこなしている。
さて、どうして僕が二家分の損害を負担するかというと勇者が街で双子の義姉と婚約者の幼馴染を気に入り王族の末姫とともに旅に連れて行ったからだ。ちなみに、誘い文句は、勇者の俺が認めたのだから特別に間違いない、だそうだ。個人的には、なんだそれ、と思ったが彼女たちの中ではそれで充分らしい。
初めのうちは仕方がないと思うところも多かったけれど、補償の旅先で勇者とお供の女の子たちは恋人のようだとか、勇者はハーレムを作り宿で数日出てこないとか、すべてが終わったらみんなで結婚式を挙げるとかの噂を聞きそれが確証に代った時には絶望や勇者に対する復讐心を通り越してこの世の中に絶対はないとある種の悟った心境だった。より魔王に近い魔物を使役したすべての召喚術士は復讐からの武力行使をしない、もし行えば意識を失うほどの激痛を受けると神殿で誓約し、僕もその例ならって誓約を結んでいることもあり何度も意識を失った結果悟ったともいえる。
あと、どうしてかわからないが勇者のお供は旅が進むにつれて勇者のお供にふさわしい力をふるったらしい。
勇者は、魔族の統治国に戦争ともいえるほどの力で攻め込んだことだと聞いた時は、馬鹿なのかなとか、奴ら死んだなと思った。実際には、国に逃げ帰ったのだけれど、僕は勇者の後始末で魔族の統治国に入ったばかり。残念ながら敗走している姿はすれ違いも含めてみることができなかった。そして、魔族の王は噂通りの人のようで安心した。
異世界人の勇者はともかく、勇者のお供は現地人、しかもそのうちの一人は王族、なので大陸の情勢というものを知っているはずなのに勇者を止めない。そこまで愚かになったかと思うと悲しくなると同時に僕は人を見る目がないなと改めて実感してしまう。
きっと勇者は国に帰れば時期が来るまで幽閉されるとかして大人しくなるだろうと皆が思った。けれど、それは多いな間違いだった。
聞こえてくる噂話によると勇者は何かにとりつかれたように剣を振るい女性を抱くの繰り返したとかなんとか。
剣を振るっているのが罪人だけならまだましなのだが、それが次第に騎士や傭兵の類まで含まれるとい話まで聞こえてきたときは、今後国がどう責任を取るのかではなく、他の国が国に対してどう攻め勇者を殺すのかになってきていた。現に魔族の国では獣人の国と共同で軍の準備をはじめている。
そして、気づいた時には国の人口は他国への逃亡もあり半分以下に。王都に住むのは平気で人を殺し、凌辱するクズ以下しかいないとかなんとか。
竜の谷で憤怒の悪魔が出現したという神託がったのと同じころ、やっと勇者は勇者らしいことをすると思っていた人は、勇者は色欲と傲慢な悪魔となり周りにいる女性は強欲と嫉妬の悪魔になったとの神託があった。
国に対して文句を言おうにも現状悪魔の国に何を言っても無駄。憂さ晴らしをするかのように国外に出た国民を奴隷扱いし、国に戻し勇者討伐の先兵にするもありすぎる力の差でほとんどが死亡。生きていたらきっと悪魔の手先なるかもしれない。
人が悪魔に落ちるのか元から人は悪魔になる要素を過分に含んでいるのかわからないが、国は余計なことしてくれたものだ。
これから竜の谷に悪魔を退治しに行くのに面倒ごとしか目の前にない。
ほんとみんないなくなればいいのに。あぁ、すべてが面倒くさい。
大罪悪魔スキル、怠惰、が発言しました。