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プロローグ

主人公は片耳難聴です。


一部実体験に基づきますが、物語は全てフィクションです。

 僕こと川上幸平は、生まれつき左耳だけが聞こえない。

 右耳ははっきり聞こえるし、むしろ右の聴力は平均より高いらしい。


 原因ははっきりと分からない。ただ鼓膜や内耳など機能自体に異常はなく、おそらく神経がうまく働いていないのだと、大人になってからもう一度行った病院で告げられた。


 僕の耳が聞こえないことに気付いたのは、4歳ぐらいの時。

 連れて行った地元の耳鼻科で、耳が聞こえてないと言われ、その後慌てて大きな病院で検査をしたらしい。

 その時も、耳自体に異常はなく、伝達する神経の問題ではないかと言われたようだった。


 それを聞いた母は泣いてしまったと言っていた。父は嘘だと言ったという。

 そんな両親に、見てくれたお医者さんはこう言った。

「いいかいお父さんお母さん。この子にとってはね、耳が聞こえないことは当たり前のことなんだ。この子がツラいといったのかい?そんなこと言うわけない。何もツラくなんてないだから。

 この子はね、ただ片耳が聞こえていないだけ。それを君たちが変に意識して、『ツラい障害だ』『大変なことだ』なんて思ってどうするんだい?

 一番身近な君たちがそんなことをしたら、いま、こんな健やかに育っているこの子が自分を責めてしまう。この子にとってのただの『当たり前』が、とっても『重い障害』になってしまうよ。

 君たちが望むのがこの子の健やかな成長なら、この子を普通の子と同じように、今までと同じように、傍で見守ってあげなさい」


 それを聞いて、そのままなるべく今まで通りに、自分たちがそう育てられたように、大事に見守ってくことを決めたんだと両親は言っていた。



 そのおかげか、僕はあまり自分の片耳難聴について不自由に思ったことはない。特徴の一つとして付き合いながら生きている。

 強いていえば、ステレオでサイモン&ガーファンクルが聞こえないことは残念に思ったけど、それくらい小さなことだった。



 そしてこれは、そんな僕の日常の話。



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