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双子の星は王を想う〜1〜

 朝日が照らすその部屋は、世界から切り離されたような異様な空間が広がっている。


天井につくような大きなテディベア。


床を埋め尽くす多種多様なぬいぐるみは、一ミリたりとも床を見せようとしない。


壁はサーカスのような派手なストライプ。


壁にも道化師の首や棺桶など、部類は違えど、不気味でユニークな壁飾りが所狭しと掛けられていた。


上にも横にも下にも物で埋まっている部屋は嫌に狭く見えてしまうが、実際は物凄く広く、それこそ下手なコンサートホール程はあるだろう。


定時になると、巨大なシャンデリア風のオルゴールメリーが、見た目とは裏腹に優しく、しかしどこかミステリアスな調べを奏で、部屋を光の粉で散りばめ始めた。


「うーん…」

「んんん…」


部屋の中央、天蓋付きのベッドから、二人の幼い双子はのそのそと起き上がった。


✽✽✽


 今から百二十年程前。


この頃、大地にはまだアナスタチアの他にも幾つかまだ国があり、各地で争いが起きている、正に戦乱の世だった。


この時からアナスタチアの勢力は群を抜いていて、自ら配下に回る国も少なくなかった。


 ある時、新しく配下として加わった国の視察に、国王が自ら赴いた。


その国は、能力研究の最先端を行く国で、そのための施設も多数存在した。


その国のある研究施設を覗いたとき、国王はある子供に目を留めた。


一つの檻の中にいる男女の白髪と黒髪の幼い双子と見られる子供は、まさしく『人形』だった。


顔は白玉のように透き通り、世にも珍しい――女は赤と黄、男は青と黄の――オッドアイを持っている。


その瞳に光は無く、表情は皆無。

足を投げ出して、魂が抜けたように床に座っているその姿は、異様な雰囲気が漂っていた。


何のためか、他の被験者とは違い、この二人だけは壁の端と端に鎖で繋がれていた。


「あの二人は?」


国王の問に、案内係の者はすぐに身を縮めながら震える声で答えた。


「あの二人は『禁忌の子』として恐れられている双子のルイとレイでございます」


――禁忌…こんな幼子が…か…


気付いた時には、国王は完全にこの不思議な双子の虜になっていた。


「何故あの二人だけ、鎖に繋がれているのだ。まだあんなにも幼いではないか」


きっと十になるかならないかと言った程だろう。


国王には、余りにも憐れに見えて仕方がなかった。


「あれは、ここの施設にいる皆のためです。あの双子に、例え檻の中だけでも自由を与えれば、この施設は破滅してしまいます」


「破滅だと?そんな馬鹿な話があるか!」


一体何がどうなれば、そのような話になるのだろうか。


声を上げた国王に、一際恐怖の色を顕にしながら、案内係は続けた。


「あの二人の能力(ちから)は『未知』そのものです。実際に見るのが一番ですが、余りにもそれは危険なのです」


更に重ねられた説明によると、双子は手を繋いで願い事をすると、それを自在に叶えてしまうのだとか。


所謂(いわゆる)『魔法』と呼ばれるものということだが、叶えられる願いとそうでない願いがあるらしく、それは未だに解明できていないらしい。


「一度この双子は、その力で街一つを焼きました。また別の時は、一つの街を一瞬で氷河の世界に変えましました。捕獲しようとすれば空気に溶け、私たちの手を散々に焼かせていたのです」


「なるほど。二人が離されているのは、手を繋がさないためか」


「はい。一度は別の檻に置いたのですが、途端に衰弱しまして……」


ある種の依存関係に近いのかもしれない。


もしくはそこまでいかなくても、底知れぬほど仲が良いのだろうか。


「…少し、話をしたい。檻の中に入れさせてくれないか」


「?!!…か、畏まりました」


即座に拒否しようとした案内係は、しかし、王の放つ威圧感に渋々頷くしかなかった。


✽✽✽


国王は檻の中に入ると、ルイとレイの間にしゃがみこんで、二人に微笑みを投げかけた。


「ルイと…レイと言ったかな?」


「…………」

「…………」


「私はラーエルテ・S・グレイシフルだ」


「………」

「………」


国王の声掛けに反応しない双子に痺れを切らしたのは国王本人ではなく、案内係の者の方だった。


「おい!!国王陛下に話しかけて頂いているというのに返事をしないとは、お前たち何様だ!!!」


国王はそれをつるぎのように鋭い双眸で睨みつけた


しかし双子は意外にも、その怒鳴り声に反応した。


「国王…」


「陛下…」


交互にそう口にするなり、双子の瞳に鋭い光が宿り、獣如く国王に飛びかかった。


――否、飛びかかろうとした。


しかし二人の両手足に咬ませられた枷は、それを見事に封じ込めていた。


「うぅぅ………!!!」

「ぅぅううう…!!!」


もはや野獣と化した双子を前にしても、国王は穏やかな態度を崩さなかった。


「…何か、無礼なことをしてしまったかな?」


「お父さんを!」


「お母さんを!」


「「返せ!!!」」


余りに予想外な二つの叫びに、国王は目を丸くした。


案内係に視線を投げると、案内係はすぐにその意味を理解した。


「この双子の父親と母親は、この二人がここに入る前に、別の施設に収監されたんです。まさか子供まで力が強いとは思わなかったので、双子は孤児院に入れられました」


更に説明を聞くと、どうやらその孤児院でこの双子は孤立してしまったらしい。


オッドアイやら、ずっと手を繋いでいる二人を馬鹿にする輩が、子供のみならず、大人にも存在したそうだ。


「それである日、双子の怒りが頂点に達したんだとか。それからは先ほど説明したものと被ります。その孤児院を、町ごと全焼させたのです」


国王は一瞬、言葉を失った。


「………なんとも凄まじいが…しかし、それとこの国の()国王と、何の関係があるというのだ?」


敢えて国王が元を強調したことに案内係は一瞬顔を顰めかけたが、それはなんとか抑えつけた。


「国民の収容は、国王陛下のお許しがなければできないのです。逆に、陛下のご命令なら、どのような人間でも収容される義務があります」


「なるほど、そういうことか」


国王は声に出して納得を示すと、その間もずっと唸り続けていた双子に再び視線を戻した。


「残念だが…私は君たちが求めている国王ではない。無駄な罪をこれ以上重ねるのは自分にとって良くないぞ?ん?」


国王の言葉に双子は押し黙ったが、逆に睨んでいた瞳を一層鋭くさせた。


「…人の憎悪というのは恐ろしい」


国王はそう言うと、双子の頭に手を置いた。


そして国王が目を瞑ると同時に双子は急に脱力し、意識を手放した。


「な、何をなされ――」


「この子たちを引き取りたい。良いか?」


唐突な国王の申し出に、案内係の男は目を丸くするばかりだった。

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