勤務日誌:003 〜第一村人発見〜
1週間…どころではなく、かなり開きましたね……。
仕事が忙しかったんですぅぅぅ!!
とにかく、更新です。
宜しくお願いします。
ザァァァァァー……キュッ! ガチャ!
「ふぃ〜 サッパリしたぁ。」
起きたら『夢オチでした!』とはならなかった。
仕方なくタバコを吸って現実を受け止め、3階の体練場にある風呂で朝シャワーを浴びていた。
「使い捨ての下着って初めてだが、着心地は大差ないな。」
シャワーの前に防災備品の中から持ってきた不織布で作られた使い捨てパンツを履く。
このパンツ使い捨てと書いてあるが、説明を読むと破れなければ洗って再利用できるって書いてあった。
シャツも同じ物を持ってきたけど凄いなこれは。
体練場には、道着を洗うためのタライと洗濯板もあるから服に困ることも無さそうだ。
シャワーを浴びながら手洗いした下着とタオルを干し、制服に着替えた俺は外に出る準備の為に2階の証拠品保管庫に向かう。
洗濯物を干したのはいいけど、真っ暗だから気をつけないとカビそうだな…。
ペラ、ペラ、ペラ……
保管庫についた俺は、押収品保管帳簿を捲っていた。
え? なんで証拠品保管帳簿じゃないのかって?
いや、だって証拠品って…犯罪に使われた物の事よ?
血の付いた凶器とか触りたくもないし。
それに比べて押収品って使われる前に取り上げた物が主だから未使用だし。
でもあまり使いたくはないんだよな…。
「確かこの辺に…あったあった。 えーとC-3にある07254番の箱か。」
保管帳簿から目当ての品を見つけて書いてあった番号の棚からコンテナを出す。
コンテナの中には以前、犯人の家から押収した様々なものが詰め込まれていた。
「押収品とか使いたくないけど背に腹はかえられないからな。」
西岡が持ってきたあの聖鎧とか聖剣を使おうかと考えたが、ストーカーに呪われてそうだしやめとく。
犯罪者の持ち物を使うなんて嫌だが、他に使えそうなものがないから仕方がない。
後で思いっきりファブって殺菌しよう。
コンテナからも使えそうな押収品を取り出して床に並べる。
「無難にタクティカルベストと鎖帷子にサバイバルナイフを選んだが…こんなの持ってりゃ捕まるわな。」
それらを1階に持って行き、ロッカーからも私物を持ち出し、制服から着替えたら鏡の前で自分の格好を確認する。
「………。」
俺の格好は下から、私物の黒いコンバットブーツにモスグリーンのカーゴパンツ、黒いタートルネックのシャツの上からさっきの鎖帷子と薄手のタクティカルベストを着て、上着は私物の黒い革製ライダースコート、両手には黒革の手袋。
更に腰には革帯を巻き左に警棒、右にはエアーウエイトの入ったホルスターを吊り、左に着けた官品のショルダーホルスターからはシグがガンチラしている。
そして頭には三角の獣耳。(尻尾はコートで隠れてる)
「どう見ても厨二病MAXの殺し屋だな……。」
こんな格好で街を歩いたら超特急でブタ箱行き決定だが、異世界だから関係ないか。
いや、異世界でも間違いなく浮いた存在な気がする。
そんなことを考えながら、ベストに予備マガジンとサバイバルナイフを固定し、コートのポケットには5発ごとに小分けにした38弾を入れて左手にはドンキーを持って準備完了だ。
「…………行くか。」
自分でも今の格好にドン引きだ。
タバコを吸って心を落ち着かせる。
あぁ、やはり煙草は偉大だ(以下略)
カキン……シュボッ……
くわえ煙草で紫煙を吐き出しながら(余計に厨二病が加速してる)正面入口から外に出て、まずは交番の壁沿いに周りを一周してみた。
「正面は結構広いんだな。」
交番の裏側は仕事部屋の窓から見た通り建物から5メートルくらいでドームの壁があったが、正面は小さめのグラウンドくらいの広さがあった。
裏を回っている際にドームの壁に触れてみたがヒンヤリとしていて、岩壁と思えないほど硬質な手触りだった。
試しに強めに蹴ってみたがビクともしないし、穴を掘るのは工具でもないと無理なようだ。
ガレージにスコップはあったが、工具なんかは置いていない。
いや、ツルハシはあったな…なんであるんだろう?
「ん? なんか光ったな。」
交番の正面入口付近から広場の向こうを照らしているとキラリと何かがライトを反射して光った。
向こうの壁際になんかあるようだ。
近づいてみるとそこには……。
「うわっ! マジかよ……ナンマンダブ、ナンマンダブ。」
白骨化した死体が4体転がっていた。
反射的に手を合わせて適当な念仏を唱える。
壁際には、王冠を被って如何にも王様でしたって格好の骸骨が1体とその傍らにローブを着て杖を持った魔導士風の骸骨が1体、その2人を守るような位置に錆びてボロボロになった鎧を着た騎士風の骸骨が2体あった。
「異世界に来て、第一村人(?)が骸骨の王様とそのお供かぁ。 実は地獄でしたって事はないよな? 」
白骨死体とか警官をしてたら嫌でも慣れるが、積極的に見たいものではない。
まぁ、白骨化するほど時間が経っているお陰で臭いとかグロくも無いからそこは有難い。
そんなことを思いつつ、俺の目はじっくりと遺体を観察していた。
なんでじっくり観察するかって?
職業病みたいなものだから仕方ない。
だが、よく観察することで見えてくるものも多い、王様と魔導士の頭には朽ちた矢が刺さっているから他殺で間違いない。
しかし、騎士2人は自分で胴鎧の隙間から剣を突き刺したようだ。
「他殺と自殺が混じってる? 状況から見るとどっかに弓持ちがいるはずだが。」
4体の中には弓持ちが居ないので周りを探してみると弓持ちの骸骨は少し離れた壁際にあった。
頭蓋骨を柄の折れた槍で右眼から後頭部まで貫かれている。
そして、その横には壁と同じ石で造られた両開きの大きな扉があった。
「よっしゃ! 出口発見!」
意気揚々と近づくと扉には何かの棒で閂がしてあり、棒はどうやら弓持ちの頭に刺さってる槍の柄のようだな。
「これは……。」
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王国筆頭槍騎士 ゲイン・ボルグ
私達は逆賊の襲撃を受け、王族専用の避難場所である隠し洞窟に逃げ込んだ。
「王よ、入り口は塞いできましたのでここまでくれば安心です!」
この場所は王族と一部の臣下しか知らない秘密の洞窟だ。
念のため入り口の扉には私の槍を折って閂の代わりにしたので誰も入ってこれない。
王は柄が折れた私の槍を見て悲しそうに告げる。
「ボルグよ……世話をかけるな。 だが、儂はもう良いのだ。 せめてお前達だけでも逃げ延びるのだ。」
王はとてもお優しい方だ。
王妃様と王子を戦争で失いながらも、常に民の事を第一に考え心を砕いて国を治めた。
だが逆賊共は、そんな王を愚王と蔑みクーデターを起こした。
王は、民とは戦えぬと逆賊へ和平を持ちかけ話し合いの為に我ら4人の筆頭騎士だけを連れて王城を出たが襲撃に遭いなんとかこの洞窟にたどり着いたのだ。
私は何としても王を城まで守り抜かねばならない。
「勿体無きお言葉。ですが! 我らは王に忠誠を誓った身、何処までもお供致します。」
「「その通りだ(です)。」」
「………………。」
私の言葉に、親友の筆頭剣士クロス・カリバンと筆頭魔導士のゲイン・クリスタベル(私の妻だ)が応えるが、筆頭弓士のローヴィン・フリードは俯いたままで何も言わない。
「フリード……どうしなのだ? うっ!? な…なんら…?!」
フリードに問いかけたが呂律が回らず、更に手足が痺れて膝をついてしまった。
見ると、王とフリード以外の全員が膝をついている。
「フヒヒ……やっと効いたか。 即効性の麻痺毒だよ。 さあ糞王、宝はどこに隠した?」
フリードは下卑た笑みを浮かべながら王に問いかける。
フリードを取り押さえたいが体が痺れて動かず、声をあげることもできない。
「フリード…宝など無い。こんなことは無意味だ、即刻やめるのだ。」
「そうか……わかった。 とでも言うと思ったか?」
フリードは素早く矢を番えて放つ。
シュッ……ドスッ!
「うぐっ……!」
ドサッ!
「ほら、糞王がさっさと言わないから1人死んだぞ?」
クリス!! クリスタベルが頭を矢で撃たれて倒れた。
今直ぐにフリードを八つ裂きにして殺したいが、睨むことしかできない。
「そんなに睨むなよボルグ。 正直に言わない糞王が悪いんだぜ? さあ、宝はどこだ?」
「だから、無いのだ! そんな物はとうの昔に売り払って戦争で傷ついた兵に与えた!」
この洞窟は王族専用の避難場所であると共に秘匿された宝物庫でもある。
だが王はここにあった財宝全てを売り払い、戦争で傷付き働けなくなった兵士に与えたのだ。
「宝が無いだと……そんなバカな……大臣の奴……騙しやがって……。」
宝が無い事を知ったフリードは呆然として何やらブツブツと呟く。
王はその隙をついて我々に解毒の治癒魔法を発動しようとする。
「アンチポイズ…ぐあっ!」
シュッ…ドスッ!
「チッ! 糞王まで殺しちまった……。」
「「フリィィィドォォォォ〜!!!」」
詠唱の途中で気が付いたフリードが矢を撃ち、頭に矢を受けた王が倒れる。
辛うじて発動した魔法により麻痺毒から解放された私とカリバンは怒りの咆哮を挙げる。
「クソっ!」
「貴様はここで殺す!!」
踵を返して扉に向かって走るフリードを二振りの剣を抜き払ったカリバンが猛然と追いかけるが、差は開くばかりだ。
私は折れた槍を渾身の力で投擲して叫ぶ。
「カリバァァァァン!!」
「おう!!!」
槍はフリードの頭を目掛けて突き進む。
だが、筆頭弓士のフリードにとって飛んでくる槍を避けるなど造作も無い。
フリードは首を傾げて紙一重で槍を避ける……つもりだった。
ギギィィン! ドシュッ!
「ガァッ……!」
槍に右眼を貫かれて、驚愕の顔を浮かべたままフリードは息絶える。
カリバンが飛んでくる槍を剣で弾いて軌道を変えたのだ。
裏切り者は始末できた、だが…。
「ボルグ…王とクリスタベルは……。」
「ダメだった…。」
カリバンが剣を収めてこちらに来る。
フリードに撃たれた王とクリスは既に息をしていなかった。
頭に矢を受けて即死だったのだろう……。
「カリバン……今から私を斬っ…。」
「わかってる。 ほらよ、コレ使え。」
私を斬ってくれと言おうとしたが、カリバンが言葉を遮り、愛剣を一振り渡してくる。
「お前は嫁さんとこに行ってやれ。 王のとこには俺が行く。」
お互いに考えている事は同じだったようだ。
「カリバン……。 いや、クリスも王と共にいるはずだ。」
「そこは嫁さんとこに行くって言っとけよ。 相変わらず頭の固いやつだな。 …………準備はいいか?」
2人揃って剣を構えて鎧の隙間から自分を刺す。
「グッ…!」
王……クリス……今そっちに行く……。
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って想像してみた。
名前? あぁ、適当に俺が作った。
だから、王様の名前とか思いつかなかったから終始【王】ってなってただろ?
「さてと、妄想はこれ位にして扉を開けるかな。」
骸骨はあとでスコップをガレージから持って来て埋葬しとこう。
簡単な土葬で申し訳ないが、転がしておくよりはよっぽどいいだろう。
カラ……
そう思いつつ俺は扉に掛かった閂に手をかけようとすると、後ろから何か音がした。
「ん? げぇっ! 」
音のした方を振り向くと、扉の横にあった弓持ちの骸骨が立ち上がっていて、カタカタと音をたてながら俺に向かって来た。
ーNEXTー
誤字や稚拙な文の中、最後までお読みいただきありがとうございます。
急に寒くなりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
私は寒さに震えながら外で仕事してます。
とりあえず、次の更新は……早くしたいなぁ。
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