勤務日誌:001 〜犬のおまわりさん〜
11日ぶりの更新です。
もっと早く書ければいいのですがなかなか執筆って難しいですねw
よろしくお願いします。
ピッ、ピッ、ピッ、ピピピピピピピピ!
あ、なんか鳴ってるな…携帯のアラームだな…もう定時か。
「なんでうつ伏せで寝てたんだっけ? そうだ、卵買いに行かないと!」
今日は夕方5時から卵が特売なので定時で帰らないと売り切れるからアラームかけたんだった。
ヤベェ、 急がないと……って
「いやいやいや!? そんな場合じゃねぇ!」
そうだよ! さっきストーカーの変な儀式を止めるために魔導書を斬ったら爆発して光に飲まれて……。
ペタ、ペタペタ。
手足や顔を触って確認する。
ふぅ、とりあえず手足は付いてるし痛みとかないから怪我もないようだ。
「だが、何故に全裸なんだ?」
俺は今パンツすら履いていない、そう《ZENRA》なのだ。
さっきまで制服着てたのに…爆発で服だけ吹き飛ばされた?
いや、だったら怪我とか火傷していないのはおかしい。
「訳がわからん。 それにまだ夕方なのになんでこんなに暗いんだ?」
部屋は何も見えないくらい真っ暗で、明かりは机の上で鳴ってる携帯くらいだ。
とりあえず、机まで移動して携帯のアラームを止める。
携帯の画面を見ると圏外だった。
俺は懐中電灯機能を呼び出して部屋の中を照らす。
「ストーカーは……いないな。 部屋も大丈夫だし……服もあっ…………た?」
部屋中に散らばる謎のカードと真っ二つになった魔導書、デカイ鎧入り木箱に日本刀(聖剣)、を除けば、いつもの俺の仕事部屋だ。
あと、ソファーも真っ二つになってるが今は置いておく。
着ていた制服は魔導書の側にあったが様子がおかしい。
ザラザラ……
「コレは……砂か?」
俺の制服はアニメとかで人間が身体だけ砂や塩になって死んだ時の描写のように、人型に盛られた白い結晶の粉末に埋もれていた。
「コレって俺……死んだのか…? いや、でもこの身体は? 一体どうなってるんだ?」
足はあるし物も持てるから幽霊って訳ではない。
状況だけで考えると俺は砂になって死んで、でも俺は俺で…砂が俺で…俺の砂で? あぁもう訳がわからない…!!
砂の中に手を突っ込んで制服の上着を引っ張り出す。
ザラザラ……ゴソゴソ……カキン、シュボッ……すぱぁ〜
「ふぅぅぅ〜…………とりあえず服着るか。」
あぁ、タバコは偉大だ。
吸うだけで心が落ち着いて頭がスッキリする。(個人の感想です。)
今は考えても仕方ないからまず服を着ることにした。
残りの服を掘り出して砂をはたいて落とし紺色のトランクスを手に持ち履こうとする。
なんか、サイズが縮んだ気がするな……まあいっか。
ファサッ!
「……?!」
尻になんか付いてる?! なんだこれ?
パンツを履こうとしたら何かモフモフしたものが尻の少し上に付いているようだ。
手でモフモフを掴んで取ろうとした瞬間に今まで感じたことのない感覚が俺を襲った。
「あふん……///」
なんか気持ち悪い声が自分の口から出たぞ!?
大事なところを思いっきり鷲づかみにされたようなゾワッとする感覚が……しかも、このモフモフ体に引っ付いてるのか?
「…………。」
カシャ。
「おいおいおいおいおい!! 尻尾付いてるぞ!!」
携帯のカメラで自分の尻付近を自撮りしてみると、こげ茶に黒が混ざった色の尻尾がちょうど尾骶骨のあたりから生えていた。
ケツ毛は生えてたが尻尾なんかなかったぞ!
いや、待てよ? 尻尾があるって事は……。
「マジかよ……。」
部屋の角にある姿見で全身を見て愕然とした。
鏡には全裸の獣人が映っていた。
身長は180㎝くらい、細マッチョと言えるくらい引き締まった全身の筋肉、髪は暗めの茶色と黒のメッシュ入りの短髪で頭に三角の獣耳が付いている……が、顔は見慣れた自分のもの。
「ケモミミで尻尾生やした全裸男って誰得だ!!」
ファサッ! ファサッ! ピクピク!
俺の叫びに呼応して尻尾と獣耳が動く。
あ、コレちゃんと動くんだ……。
カキン……シュボッ……すぱぁ〜
何度も言うが、やっぱりタバコは偉大だ。(以下略)
落ち着て獣人に変わった全身を(特に獣耳と尻尾)よく観察する。
「狼男か? いや、この色に耳と尻尾の形は…狼ではなくシェパードみたいだな。」
昔、家で飼っていたシェパードの耳と尻尾はこんな感じだった気がする。
イメージする狼男のように毛深くはないし、あと試しに丸いもの見たが変身しそうな雰囲気はなかった。
犬の獣人なら嗅覚が発達したりしてそうだが、タバコ吸ってもいつも通りだし匂いに敏感ってわけでもないようだ。
ただ一つ驚いたのは、人間の耳はそのままだった事だ。
見た目では獣耳のカチューシャでも付けたような格好だがしっかり頭から生えているのだ。
音も人間の耳で聞いてるみたいだし……実は見た目だけ変わって中身はそのままなのかもしれない。
まぁ、よく分からんが今の俺はシェパードの獣人(仮)の警察官、まさに童謡にもある『犬のおまわりさん』ってことだな。
「しかし、マジで異世界に飛ばされたみたいだな……。」
今更ながら本当に異世界に飛ばされたのだと実感し、《ZENRA》で呆然とする。
「俺、帰れるのか……? そもそもこの体じゃ帰れないし……これからどうなるんだ……?」
カキン……シュボッ……すぱぁ〜…
「ふぅぅぅ……服着ないと。 コレって穴開けるしかないよな。」
やはり煙草は(以下略)
気を取り直し、微妙にサイズが小さくなったパンツとズボンには尻尾を通す為の切れ込みを入れて制服を身につける。
「よし、まず明かりだな。」
そして、デスクの引き出しから1本のマグライトを取り出す。
このマグライトは警官だった爺さんが昔使っていたのを貰い、今は改造して(電球をLEDに交換して本体を合金で補強してある)俺が使っている。
このマグライトは特注品で警棒と同じ合金製、グリップ長が約45㎝もあり、重さと頑丈さを兼ね備えた優秀な鈍器だ。
名前もそこから取り《ドンキー》と呼んでいる。
ドンキーを持って窓際へ向かう。
ガラガラ
「外は……鉄の壁……いや、岩か?」
窓から外を照らすと3メートルくらい先に壁があった。
テカテカと黒い光沢をもつ壁があり、初めは鉄のような金属かと思ったが、よく見ると細かく地層のような微妙に色の違う横縞があるので岩壁なのだろう。
「岩壁ってことは洞窟の中なのか? あ、空気の流れはあるみたいだな。」
窓から乗り出して見回すが、前後左右どこを見ても建物の向こうに同じ岩壁が見えた。
咥えていたタバコの煙が流されているし、空気の流れはあるから窒息はしないと思うが、ここから見える範囲で亀裂や穴などは見当たらない。
「人の気配も無しか。」
外も交番の中も静まり返っており、煙草の燃えるジリジリという音がやけに大きく聞こえる。
こんな状況になった原因は間違いなくストーカー聖女の儀式の所為だと思うのだが、飛ばされた先に誰もいないというのはどうなのだろうか?
意識を失って約半日も放置されているという事はストーカー聖女の意図した場所とは別の所に飛ばされたのだろうな。
「無理やり拉致ったんだからさっさと迎えくらい寄越せよな……。」
生きてこの洞窟(?)から出られるか分からず不安で、つい愚痴ってしまった。
まぁ、俺が魔導書を斬ったのが原因でこうなったのだから後悔しても仕方ないが、斬らずにそのまま飛ばされた方が良かったかもと考えてしまう。
「いや、異世界に飛ばされてストーカー聖女と世界を救うとかないわ。 綺麗でもストーカーとか生理的に無理。それに俺、一般人だし。」
そのまま飛ばされてた方が面倒だった気がする。
何よりストーカー聖女とは関わりたく無いから迎えとか来られても困るな。
過ぎたことは仕方ないと諦めてこれからのことを考える。
「とりあえず、残留者確認だな。 あとは…電気、ガス、煙草、水道、食料、ってとこか。」
飛ばされる前に西岡に他の人を逃がすように言ったし大丈夫だとは思うが確認は大事だ。
ついでに、各種ライフラインと食料を確認しよう。
「生き残ればどうにかなるか……終わったら外も見に行かないとな。」
俺は窓を閉め、ドンキーを手に、くわえ煙草のまま先ず屋上へと向かった。
ーNEXTー
誤字や拙い文章のなか、お読みいただき有難うございます。
いかがでしたでしょうか?
やっと異世界に来てこれから蒼二郎のサバイバルが始まります。
さて、犬のおまわりさんは交番でどんなサバイバルをするのか!?
あと、喫煙する描写が多々ありますがこれは喫煙を助長するものではありません。
喫煙の感想も主人公の個人的な主観です。
煙草は20歳になってから!!
次は一週間以内に更新出来れば……いいなと……。
感想、ご指摘お待ちしております。