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〜日常から吹っ飛ばされる〜 その4

なんだかんだで10日以上かけて投稿です。


書いて修正を繰り返し、間違って全部消してしまったりして大変でしたw


よろしくお願いします。

蒼二郎と西岡が死闘(?)を繰り広げていた頃。


ストーカー聖女こと、『マリアベル・C・グラスハイト 』は森の中を切り開いて作られた広場の祭壇に置かれた水晶玉を通して西野幹部交番を見ていた。


「ここが勇者様の砦ですか…。」


塀や堀はないが、白い石を高く積み上げて建てられた建物は砦のようだ。

昨日まで手紙や貢物をお送りしていたのは、仮の拠点にしていた貸し倉庫だったのだろう。

勇者様があんなに狭く貧相な所に住んでいるなんておかしいと思っていたが、まさか砦をお持ちとは驚いた。


今朝、倉庫を引き払いお贈りした聖鎧などを砦に移したという事は使命を終え、今はこちらへ来る準備をしているのだろう。


これでやっと勇者様と世界を救うことができる。

憎き亜人や魔物、そして魔王を倒し世界を救うのだ。


「アルバイン様……私の旦那様…/// やっと直にお会いできます。」


私は勇者様(西岡)に想いを馳せながら召喚儀式の準備を始める。


「魔導書は私が設置します! 貴方達は魔法陣の外側に高純度魔石を設置しなさい!」


まず、召喚の対価となる希少な高純度魔石を儀式の補佐として統一教会から連れてきた10名の魔術師に配置させる。

そして、地面に刻まれた直径30メートル程の魔法陣の中心に召喚儀式の要となる魔導書を置く。

この魔導書は勇者様にお渡しした魔導書の対を成すようにできており互いが次元を超えて繋がっている。


魔導書同士の繋がりを利用して勇者様の持つ魔導書に魔力を送り込み、転移魔法を発動させて此方の世界にお迎えするのだ。


砦の中でお待ちになっているという事は中にお付きの戦士やあの自動人形オートマターも待機しているのだろう。


「という事は……勇者様とお付きの方を砦ごとお連れするという事ですね。」


勇者様と苦楽を共にした仲間を離ればなれにしてまう事を負い目に感じていたのだが少し気が楽になる。


勇者様の砦ごと転移させる事を決め、周りで忙しく準備に動き回る魔術師達に声をかける。


「予定を変更し、勇者様を砦ごとお仲間と共に此方に来ていただきます!」


「マリアベル様! それでは予定と…」


「予備の魔石を使えば対価は問題ありません! 我々には神の御加護が付いています! 予定とは異なりますが必ずや成功する事でしょう!!」


「「「おぉぉぉー!」」」


魔術師の1人が異議を唱えましたが、神託を受けて行っている限り失敗はあり得ません。


予備として運び込んでいた高純度魔石を使えば理論上は150名の人を転移させる事ができます。

転移魔法は生物を転移させる場合には莫大な対価を必要としますが、無生物である砦の対価は高純度魔石1つで十分に足りるはずなので問題はないでしょう。


準備が終わり、魔法陣から離れた祭壇に皆が集まる。


「それでは、始めます。」


私は宝具の水晶玉に手をかざしながら、魔法陣を起動する。

魔法陣の中心に置かれた魔導書が光りながら浮かび上がり魔術師達がどよめく。


「「「おぉ……!」」」


私は勇者様に準備が整った事を伝えるため、お渡していた目印を頼りに精神体を異世界に飛ばした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

筧 蒼二郎


「シェリァァァァ!!」


俺は今、後輩の西岡に聖剣で斬りかかっている。

どうしてこうなったかと言うと、西岡が抜け駆けして彼女を作り俺に隠していたからだ。

つまり、西岡が悪い。

たまたま聖剣を持っている時にイケメンリア充を見つけた場合、漢ならとりあえず斬りかかるだろう。

うん、俺は悪くない。


だが、ソファーを真っ二つにしたのはやり過ぎだったと思う。

あのソファー…座り心地が良いから気に入ってたのにな…。


とりあえず、西岡に連続して斬りかかりながら考える。

さて、どうしたものか…。


俺は怒るのが苦手なのだ。

苦手というか人並みに怒るが表情に出る前に冷める、そして怒りが表情に出ても持続しない。

結局は怒るのも、怒り続けるのも面倒くさいと思ってしまうのだ。


さっきも、怒りはしたがソファを叩き斬ったところで怒りが冷めてしまっていた。

だが、目の前のイケメンリア充にムカついてはいるので激昂しているフリして手加減しながら斬りかかっている。


西岡は俺の演技に気づく事なく必死で部屋の中を逃げ回っている。

そろそろ飽きたので勘弁してやりたいが、急に止めても不自然だしどうしようかと思っていると西岡を壁際に追い詰めた。


よし、適当に聖剣を壁にぶっ刺して抜けないフリをして終わらせるか。


「ツゥェァァァァ!!」


それっぽく叫びながら突きを放つ。

これぞ正真正銘の聖剣突き! ってアホな事考えてしまった。


「そ、蒼二さん! 後ろ!!」


お、西岡が良い感じに俺の意識を逸らそうと叫んできた。

それに乗って背後を見る。


「アァ?! はぁぁぁ!?」


なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!

あまりの驚きに突きを途中で止めてしまう。

だって、背後を見たら西岡の持ってきた魔導書的な本が薄っすら光りながら宙に浮いるんだもの。

あ、危ないから聖剣は鞘に収めとこう。


カキン……


あの魔導書を預かるのは面倒だな。

どこに置いても目立って仕方ないし、どうやって浮いてるんだ?


「…………西岡……アレは持って帰れよ?」


「…………嫌です。 あと蒼二さん、演技だっ」


「おい! ページの間からカード吐き出してるぞ!」


「うわ! じゃなくて蒼二さん!! さっきの演技だったんですね!!」


魔導書のページがパラパラと勝手にめくれ、大量のカードが間から出てくる。

落ちたカードは床に変な模様で並んでるしどうなってるんだ?

あと、西岡に演技だったのがバレたがそれどころじゃない。

預かる以前に、こんなの絶対に騒ぎになる。


「そんな事よりアレどうすんだよ! お前のストーカー半端ねぇな!」


「殺そうとしといて、そんな事ってなんですか! イベントで蒼二さんが悪ノリしたからでしょ! 全く…でもこのク◯ウカードどうしましょうか?」


ク◯ウカードだと? 確かに魔導書から大量のカードが出るとか『カードキャ◯ター さくら』みたいだが…鍵とか杖はないし……あ、剣はあるな。

俺は聖剣を真横に構えて左手を剣の腹に当てて前に突き出し、叫ぶ。


「雷◯招来!!!」


「「……………………………………。」」


シーン……

何も起こらなかった。


「……出ないか。」


何が足らなかったんだろう?

◯狼は確かこんな感じで雷をバリバリバリって出してたのに。

あ、お札が無いからか!


「『……出ないか。』じゃないですよ! そこは『レ◯ーズ!!』でしょ!」


「杖無ぇじゃん!」


西岡がボケか突っ込みかわからない事を言ってくる。

いかん、俺もコイツも現実離れした状況に混乱しているようだ……とにかく落ち着こう。

しかし、あのストーカーがマジで異世界の聖女とは思わなかった。


え? 信じるのかって?

こんなもの体験したら本物としか思えないだろ!!

アホみたいに斬れる聖剣と聖鎧に空飛ぶ本とクロ◯カードだぞ!!

ドッキリでしたwって言われた方が信じられんわ!


取り乱した、落ち着け俺……西岡も落ち着かせてどうするか考えないと。


「すぅ〜はぁ〜 西岡、とにかく落ち着こう。」


「ハハハ……落ち着いてますよ。もう『ケ◯ちゃん』とか『キュー◯エ』とか何でも来いですよ。』


「バカ野郎! お前そんなフラグ…」


ダメだ。 半笑いで変なフラグ立てやがる!

西岡を1発殴って正気に戻そうとした時、魔導書の方から声がする。


『アルバイン様! お待たせしました!』


「「ストーカーが出てきたぁぁぁぁぁ!!」」


『す……ストーカ…? 何ですか?』


木箱の側にあった金属製のカードから幽霊のように半透明なストーカー聖女が出てきた。

ストーカーは俺たちの叫びにキョトンとしてる。


「(どうすんだ! お前が変なフラグ立てるから半透明のストーカーが出てきたじゃねぇか!!)」


「(そんな! 俺のせいじゃないですよ!)」


『アルバイン様! ご指示の通り、砦ごと此方の世界へ転移させて頂きます。 魔導書に魔力が満ちるまで暫くお待ちください。』


小声で西岡と言い争っていると異世界ディメンジョンストーカーはドヤ顔でトンデモないことを言う。


「(おいぃぃ! そこのストーカー、『砦ごと』って交番ごとなんかするつもりだぞ!! なんちゅう指示してんだテメェ!!)」


「(知りません!! そんな指示してないですよ!!)」


「(あーもういいから! 適当にまだ行けないとか言って止めさせろ!)」


「(は、はいっ!)」


とにかく、儀式を止めないとヤバイと思ったので西岡にイベントの時のようにストーカーを説得させる。

ダメそうならまた先に逃げよう。


「せせせ、聖女…様!!」


『はい、なんでしょうアルバイン様♡ 。 あと、私のことはマリア♡とお呼びください。」


西岡が呼びかけるとストーカーはハートを撒き散らしながら満面の笑みで答える。

ストーカーでなければ可愛いのになぁ……ストーカーでなければな…。


「私にはまだやることがあるのです! 儀式を止めることはできないでしょうか!」


よし、よく言った!! お前なら出来ると信じていた!

流石に勇者様(西岡)の願いなら断らないだろうと思ったが……甘かった。


「そうなのですか。 しかし、申し訳ありません。 既に発動してしまった儀式を止めることはできないのです。」


「蒼二さぁぁぁぁぁん! 無理でした!!」


申し訳なさそうに異世界ディメンジョンストーカーが言い、西岡が泣きそうな顔で戻ってくる。


男が泣きついてくるな! 気色悪い!

ストーカーも『この…泥棒ネコ!』って目で俺を睨むな!


変な儀式が止められないなら、逃げるしかない!

だが、1階の交番にも何人かいるはずだからそいつ等もどうにかしないと。


パチ、パチ、パチ(逃・げ・る)


パチ、パチ (了・解)


西岡にアイコンタクトを飛ばし部屋の出口にダッシュしようとする。


『アルバイン様? どちらへ?』


「「っっ!!」」


一瞬で回り込んだだと!?

ストーカーが瞬間移動したように一瞬で俺たちとドアの間に現れる。

刺激しないように誤魔化さないと。


「いや、西…アルバイン様はトイレに…。」


『…………プイ』


西岡のかわりに俺が言い訳するが、このストーカー…俺を無視しやがった。

半透明だから触れるかは知らんがシバくぞこのアマ…。


「(西岡、トイレって言って部屋から出て下にいる奴らを外に逃がせ。 あと、終わったら火災報知器鳴らして知らせろ。)」


「(下の人達になんて言って逃すんですか! 絶対信じてくれませんよ!)」


「(証拠品保管庫のシュールストレミングが爆発したって言え!)」


シュールストレミングとは皆様ご存知のBC兵器缶詰め(関係者の方々、ごめんなさい)だ。

実際、先週に爆発寸前に膨らんだのが証拠品で運び込まれてる。


「(り、了解! 蒼二さんは?)」


「(ストーカーの足止めと見張りをする。 ベルが鳴ったら窓から飛び降りてでも逃げるから心配すんな。 早く行け。)」


気乗りはしないが、ストーカーは俺を無視してるから西岡を残すより俺が残った方がいい。

これ以上変な事されると困るからギリギリまで見張ってないと危険だし。


「わ、私はお手洗いに!」


『それは失礼しました。 どうぞ♡』


ストーカーは西岡が言うとすぐさま道を開け、潤んだ目で部屋を出て行く西岡を見ている。

地味にムカつくな…いや、我慢だ。

こんな半透明のストーカーでも一応女性だ。


『ところで、そこの貴方!』


「は、はい?」


西岡が、部屋を出て行くとストーカーが何やら怒ったように話しかけてきた。

怒りたいのはこっちなんだが……俺が何かしたか?


『その聖剣はアルバイン様にお贈りした物です。 なぜ貴方が持っているのですか!』


「え? あ〜それは失礼。 戻ってきたら返しとくよ」


とりあえず適当に言葉を返す。

もうアイツは戻ってこないがな!


その後もストーカーは、『聖女に対して言葉遣いが…』とか『貴方のような粗暴な人間が…』とかグダグダ文句を言ってきてウザい。

人を拉致ろうとしてるストーカー聖女になぜ俺が説教されないといけないんだ…。


カキン、シュボッ…… スパァ〜〜


無視しても説教を続けるストーカーにイライラし過ぎて、つい癖でタバコに火をつけてしまった。


『ちょっと! 話を聞いているのですか!』


あーはいはい。大丈夫、聞いてないよ。

ストーカーがまたギャーギャーと五月蝿い。

しかし、室内は一応禁煙だから灰皿を置いていない。

携帯灰皿を取るために魔導書の方にあるデスクに行こうとしたらストーカーが更に騒ぎ出した。


『魔導書に近づかないで!! 貴方のような人が触れていい物ではないのですよ!』


「………あぁ? 触らねぇよ。 灰皿を取るだけだ」


触りたくもないわ!

でも過剰に反応し過ぎじゃねぇか?

そう思いつつもう一歩踏み出す。


『だから! 近づいてはなりません!!』


ちょっと近くに行こうとしただけでこの反応。

もしかしてと思って聞いてみる。


「コレってそんなに大事なのか?」


『そうです! 貴方のような人には理解できないでしょうが……ウンタラカンタラ…』


なんかこの魔導書がいかに大切か語りだしたぞ。

しかも説明長いし!

要約すると転移魔法(マジかよ!?)とやらの媒体で儀式の要らしい。

いい事を思いついた。


『…………という事です! だから近づいてはなりません!』


「よし、わかったよっと!!」


ガッ…ガキン!


一気に間合いを詰めて聖剣で魔導書に斬りかかるが周りに透明な壁みたいなのがあって弾かれた。

チッ…バリアーかっ!

それにしても西岡の奴遅いな! 早くしろよ!


『ああぁ〜っ! 貴方は何をしてるんですか!!』


「あぁ、床のカードで足が滑ってなっと!!」


ガン、ガン、ガン、ガガン!


聖剣でバリアーを何度も斬りつける。

実際、足下のカードを踏むと滑るから斬りにくい。


『止めなさい! 何をしているかわかってるのですか!!』


半透明のストーカーが俺の周りで怒鳴る。

こちらに触る事は出来ないようなので、無視して斬り続ける。


ガン! ガン! ジリリリリリリリリリリリ!


「お? いいタイミングだ!」


『今度はなんですか!!!』


部屋に火災報知器のベルが鳴り響く。

やっと西岡が1階の奴らを外に追い出したみたいだ。


カチン


俺もそろそろ逃げよう、この魔導書を斬れば儀式が止まるみたいだがバリアーあるし無理そうだ。


聖剣がもし日本刀だったら居合斬りでもするのに、と考えていると手に持った聖剣が光を放ち、真っ白な鞘の日本刀に変わった。


「うわっ! なんじゃこりゃ!?」


『破魔の千刃が主人と認めた!? 』


主人と認めた? 一体どうなってんだ? 西洋剣が日本刀に変わったぞ?

聖剣の変化に戸惑っていると、魔導書が真っ赤な光を放ち始め、それに合わせて交番が地響きを立てて小刻みに振動する。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


『魔力が満ちましたか! 転移魔法が発動します! そこから離れなさい!!』


いよいよヤバイ。 外に出る暇は無さそうだ。

覚悟を決めて日本刀になった聖剣を腰だめに構え、脚を開いて姿勢を安定させる。


「ツェィァァァァァ!!!」


裂帛の気合いと共に抜刀し、真一文字に振り抜く。

バリアーは消えていたようで、魔導書は上下に真っ二つになって床に落ちる。


『なななな!? 何て事を!!』


カチン…


「我が剣に断てぬモノ無し…。 なんつって。」


カッコつけて言ってみたが剣ではなく刀だったな。

ストーカーを無視して内心で自分に突っ込みを入れていると真っ二つになった魔導書が爆発した。


カッーーーーーーーー!


「なっ!! なんd……。」


『キャァァa……。』


ストーカーと共に光の爆発に呑まれ、俺は意識を失った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


後に、この出来事は【シュールストレミング爆発消失事件】として新聞を騒がせ、被害は西野幹部交番と現職警官1名が消失し安否不明と発表されたらしい。


【ゲ◯ター線の事故だ!】とか【エイリアンの仕業だ!】とか色々騒がれ、異世界ストーカーやクロウ◯ードが関わっているという噂もそれらにら紛れて真相は未だ不明となっている。


ーNEXTー

やっとこさ次から異世界に突入です。

さて! 蒼二郎はどうなるのか!?


次はもう少し早めに投稿できるようにしたいです。


感想、ご意見、ご指摘などいただければ幸いです。


誤字、薄っぺらい内容の中最後までお読みいただきありがとうございました。

m(_ _)m

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