勤務日誌:022 〜 2人の子持ち? になりました。
更新です。
よろしくお願いします。
モギュモギュモギュモギュ
「………………機嫌なおった?」
「もむ!! もごもむめもむま!! 」
「……うん、食ってる物飲み込んでから話そうか。」
「もん!!」
人型形態(?)になったフィオの機嫌を直す為に、「ザ防災食 ハイブリッド牛丼」が5個消えた。
食いすぎじゃね?
「はぁ〜美味しかったぁ! あの干し肉も美味しかったけどこれも良いわね! 紅いシャキシャキしたのは変な味だけど、甘辛いのが最高!!」
「シャキシャキ? あぁ紅ショウガな……お前さ、何個食ったんだよ。」
「へぇ、紅ショーガって言うんだ。 えーと……いち、にい……さん?」
「……………………。」
おい、目の前で明らかな嘘つくんじゃねぇよ。
まぁいい、いろいろと聞くこともある……が、その前に。
俺は【緋の鑑定眼】でフィオを視る。
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= フィオ・コルマリオ =
レベル:13《レベルアップ・可》
種族:獣人種
年齢:17
称号:[キツネモドキ][大喰らい][災禍の娘][レア物]
《対象の同意により表示解放》
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ふむ、人間は本人の同意がないとステータス視れないのか。
称号の[キツネモドキ]は俺のせいかな?
所々で気になる部分はあるが、まぁいいだろう。
「そんな遠い目で見ないでよ! 数字を数えるのがちょっと苦手なだけよ!!」
「いや、チョットじゃねぇだろ。 因みにだが、歳は?」
「歳?! え、えーっと……れ、レディーに年齢を聞かないでよ!」
「あーはいはい、わかったよ。 じゃあ親御さんは?」
年齢も数えられんのか……こりゃあだいぶ文明の発展は厳しいかな? たぶん、学校とかは貴族や商人が行くところで平民は手が届かない感じだろうな。
フィオが特殊なだけかも知れないが、コレは後で報告しとくか。
「……………………。」
「ん? あぁ、親御さんって両親のことな? まさか森の中で1人ってわけではないだろ?」
「……それくらい知ってるわよ。 ……いないの。」
あ、地雷踏んだっぽい。
フィオは目に見えて落ち込み、獣耳もペタンと萎れてしまった。
「あー……なんかスマン。 言いたくないなら無理に聞かないから1個だけ答えてくれ。」
「……え? う、うん。」
「行くとこないなら、ここに住むか?」
「………………うん。」
異世界に飛ばされて人生初の同居人(それなりに可愛いが大飯食らい)ができた。
人生って何があるかわからんね。
あ、未成年に手を出す気は無いから通報するなよ?
「ウワァァァァァァァ!!」
しんみりしてたら、奥から叫び声が聞こえた。
あぁ、もしかしてアイツが起きたかな?
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〜 ジャニス 〜
目が覚めた。 辺りを見回すが真っ暗で何も見えない。
僕は柔らかいベッド?に寝かされて、暖かな毛布に包まれているようだ。
「う……ん? ココは……?」
僕は上半身を起こし、手を付いて立ち上がろうとした。
ズル……ドサッ!
「あ……え? なんで……?」
左手を付いたはずなのに、バランスを崩して床に倒れてしまった。
頭もクラクラするし、今気がついたが痺れたように左腕の感覚が無い。
「うん? ……ひっ! ウワァァァァァァァ!!」
左腕に触れてみてわかった、肘から先が無い!!
そして、腐貝蟲に左腕を奪われ、怒りに任せて後を追ったが見失い、森の中で力尽きた事を思い出した。
「腕が……僕の腕が……あぁ、何てことだ。」
自分でも馬鹿だと思う。
家を飛び出し、冒険者になろうとして失敗し、腕を失って森の中でのたれ死ぬ。
あんな所で気を失って生きてるわけが無い。
きっとココは地獄なのだろう。
馬鹿な僕にはお似合いだ。
「……ココが地獄か。」
そう呟いた瞬間、僕の周りに光が差し、声が聞こえた。
「……地獄たぁ失礼だな。」
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〜 ソウジ 〜
助けた少年が、目を覚ましたのはいい事なんだが、第一声で「ココが地獄か」って言われて思わずツッコミを入れてしまった。
「そうよ! 折角ソウジが助けてくれたのに! 」
お、フィオがいいこと言った。
ほら、惚けている少年にもっと言ってやれ。
「ここのご飯はとぉ〜っても美味しいんだから!!」
うん、いいや。
お前が食いしん坊なのはわかった。
チョット黙れ。
「ベニショーガはそうでも無いけど! でもお肉…モゴ! ムゥー!!」
「飯の話はもういい。 話が進まんから黙っとれ。」
飯、飯とうるさいフィオの口を塞ぎ、少年に話しかけようとする。
ぐぎゅぅぅぅぅ〜
「「「……………………」」」
誰かの腹が鳴った。
フィオ……は、違うな。
さっきアレだけ食ったし、俺の視線を受けてブンブン首を振っている。
と、言うことは。
「…………僕です。」
恥ずかしそうに小さな声で少年が言う。
まぁ、傷の治癒って体力使うしな。
「……とりあえず、なんか食いながら話すか?」
「……はい、すいません。」
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ガツガツガツガツガツガツガツ!!
「…………………………食うねぇ。」
「うん、遠慮がないわね。」
「……いや、お前ほどは食ってないからな? 」
日本が生んだ和食ファーストフードの金字塔【牛丼】は、異世界人の胃袋も掴んだようだ(現在3杯目)。
おっと、少年が牛丼の虜になっているうちに鑑定眼で視とこう。
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= ジャニス・フォルグラム =
レベル:17《レベルアップ・可》
種族:人種
年齢:16
称号:[器用貧乏][農家の三男]
《対象の同意により表示解放》
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うん、なんというかフィオに比べて称号が普通だ。
器用貧乏に農家の三男って……完全なモブ体質だなこりゃ。
「……ごくん。 ご馳走様でした。」
フィオとは違って食後の挨拶もキチンとしてる。
ぱっと見だがいい子だな。
「助けて頂いて、さらにご飯までご馳走になってしまって……本当にありがとうございます!!」
ゴン!
「ったぁ!!」
うん、いい子だ間違いない。
お礼を言って下げた頭が机にぶつかるの初めて見たわ。
「……バカ?」
「失礼なこと言うな。 いい子じゃねぇか。」
フィオが頭を押さえる少年を見て、失礼なことを言うから注意する。
「……そっちの趣味?」
「…………次、変な事言ったら晩飯抜きな(ボソッ)」
「いっ?! い、いい子ね! うん!」
俺にショタコンの趣味はねぇ! ノーマルだ!
少年もなんか怯えた目になってるんじゃねぇ!
「んゔん!! さて少年、いろいろと聞きたいんだがいいかい? あ、俺は…筧……あーいや、ソウジと呼んでくれ。」
「あ、はい。 ソウジ様…ですね。 僕はジャニスって言います。」
様……様付けかぁ。
偉くもないのに様付けはなんか嫌だ。
「あ、様とか付けなくていいから呼び捨てで。」
「い、いいえ! そんな訳にはいきません!! 」
え"? 断るの?
「いや、でもさ?」
「無理です!」
いやいや、そんなこだわる?
「そこを何とか…。」
「ダメです!!」
あ、いい子だけど融通が利かないタイプだ…。
「せめて……せめてさん付けに…な?」
「……うぅ…わ、わかりました。 ソウジ…さん。」
頼み込むと、渋々ながらさん付けにしてくれた。
トントン
ん? 肩を叩かれたので振り向くと、フィオが自分を指差している。
あぁ、いらん事言ったらメシ抜きになるから迂闊に喋れないのな。
「あと、コイツはフィオ。 まぁ、居候みたいなものだ。」
「フィオさ……ん、ですね。 」
「そうだ、まぁよろしく。 さて、ジャニス。 何であんなところに倒れてたんだ?」
「はい、実は…………。」
ジャニスが森の中で倒れていた経緯を話し始めた。
要約すると、役立たずな自分が家族に負担を強いるのが嫌で冒険者になろうと家を出て、流浪の冒険者に弟子入りしたが、ヘマやって森の中に捨てられて、腐貝蟲ってモンスターの所為で片腕を失って、倒れている所を俺たちに拾われたという事らしい。
「……というわけです。」
「…ぐす……ぐじゅ……スンスン。」
カキン、シュボッ! ……すぱぁ〜
「なるほど、大変だったな。 あ、煙草いいか? まぁ、もう吸ってるけど。」
「……スンスン。」
「あ、はい。 大丈夫です。」
フィオはジャニスの話に共感したのかポロポロと泣いている。
俺は一服しながら考える。
片腕を失った16歳の少年が、1人で生きていけるのか。
間違いなく否だろう。
まず、モンスターこの世界にはモンスターがいる。
ジャニスが、無事に森を抜けて街まで辿り着くことは不可能に近い。
無事に辿り着けたとしても、日本の生活保護や就業支援のようなシステムがある……とは到底思えないので、まともな職に就けず路頭に迷うことは必至、そんな少年をこのまま放り出すのは大人として無責任だ。
「……本当にありがとうございました。 命を助けて頂いて、本当によくしてもらったのに……何もお返しできるものがなくて……すみません。」
「まぁ、気にすんな。 困った時はお互い様だ。 それに、見捨てたら寝覚めが悪いから助けただけだし、対価なんか要求しねぇから安心しろ。」
「いえ、でも……それでは……。」
俺の言葉が予想外だったのか、ジャニスは恐縮しながらオドオドと慌て始める。
「まぁ聞けって。 俺も事情があってな、こんな森の中で1人で暮らしてるんだが、色々と世情に疎くて困ってるんだ。それで相談なんだが……ここに住むか?」
「……え? いや、でも…。」
ジャニスは困惑し、視線が俺とフィオを行ったり来たりする。
「あぁ、コイツ(フィオ)も行くところがないって言うからさっき拾ったんだ。」
「拾ったって何よ!! 失礼ね!」
「怒るなって。 実際そんなもんじゃねぇか。」
フィオが怒り出し、俺と軽く口論になる。
実際、拾ったってのは合っている気がするんだが……何が不満なんだ?
「…………か?」
ギャンギャン言うフィオを宥めていると、ジャニスがポツリと呟く。
「ん? なんだ?」
「いいんですか? こんな僕を…役立たずのクセに家を飛び出して、片腕をなくした子供を引き取るなんて。」
ジャニスは、かなり卑屈になって戸惑っている。
まぁ戸惑うよな、命の恩人?とはいえ会ったたばかりの人間から一緒に住むかとか言われたら。
「俺はジャニスの話を聞く限り役立たずだとは思わないけどな。 ま、軽い気持ちで俺を助けると思って色々教えてくれよ。 片腕だからって何もできないわけではないだろ?」
「……はい。 じゃぁ、お……お世話になります!」
意を決したようにジャニスが姿勢を正して頭を下げる。
異世界に来て2人の同居人が出来た。
本当に人生って何があるか分からないな。
ーNEXTー
誤字や稚拙な文章の中最後までお読みいただきありがとうございます。
なんとか1週間以内に!間に合った!
……喜ぶ前に以降もこのペースで更新できるように頑張ります。
ご感想、ご意見、ご指摘、ご質問などなどお待ちしております!!
ありがとうございました!